孤独をマスターすることの意義

感情は、人生の様々な局面を左右する
無視できない重要な要素の一つです。

けれども私たちの多くは、
そのことにあまり注意を払っておらず、
無意識に飲み込まれ、左右されています。

何か重大な選択をするときに、
様々なデータや論拠となる情報を集めて
論理的に判断を下したと思ったとしても、

実は最もベースのところで
恐れや不安、何かしらの欲が情報収集の
プロセスや、情報の採用、不採用の判断などに
拭い難く影響を及ぼしています。

そう大きな判断でなかったとしても、
日常のちょっとしたことに
自分でも気づかない内に
引きずられていることは、
結構あるでしょう。

そういう微妙な影響に意識的に気づいて
うまく処理したり、逆に利用すれば、
もっと望む方向にアクセルをふかす
というように使うこともできます。

現代社会では、感情よりも
論理思考の方を上に見るような価値観が
まだまだ結構あるようですが、

感情の処理が苦手な人が
頭で論理を使って無理やり感情を
処理しようとしていたり、
マインドに逃げているだけのことも
多いような気がします。

生々しい感情をダイレクトに生きることの方が
実はずっとエネルギー的には
高度な処理を必要としていると
私は思うのですが、

たとえば、多くの人が絶対に避けたいと
思うような絶望や悲しみ、孤独などに
触れずにマインドレベルであれこれ
こねくり回して遠巻きにしているような
ポジションでいる人もいます。

それらを正面から深く感じて生きることは、
とてもダイナミックなエネルギーの動きが
私たちの心身に起こってくるのですが、

それがとても辛くて苦しかったりするので、
私たちの多くは抑圧したり
切り捨てたりして持て余すのです。

けれど、
それらを恐れることなく引き受け、
生きることが出来る人は、
そのダイナミックなエネルギーを
マスターした達人だと言えないでしょうか。

決して、感情を生きることは、
理論武装でそれを避ける生き方よりも
下だとは言えないと思います。

それどころか、感情をマスターすることは、
健全な人生を生きる上で、必須の要素
だとすら思います。

たとえば、多くの人は、
孤独を恐れるあまり、決して望まぬ関係性に
自分自身を差し出してしまったり、
誰かをコントロールしたり、束縛しようと
したりします。

孤独に陥るよりは、
暴力を振るわれても、
尊厳を踏みにじられ、良いように搾取されても
一人にならずにいられるのなら、
それを選んでしまうこともあります。

傍から見れば、どう考えても
そこに居るべきではないことは明らかなのに、
それでも、あの恐ろしい孤独の痛みよりは
マシだと、抜けられなかったりするんですね。

けれども、自分自身の中の孤独を
自分で統合できなければ、
一人になっても、誰といても、
やっぱり孤独はついて回り、
あなたの心を凍らせ続けるのです。

本当に人と良い関係を作りたければ、
バートナーシップであろうと
友人、親子、職場の人間関係であろうと、
自分の中の孤独への恐れをきちんと
統合しておかなければなりません。

一人であっても、一人でなくても
ちゃんと自分自身でいられるような、
基礎的な自身を支える力が育っていることは
人間としてとても大切なことだと思います。

孤独を統合できていれば、
それは人生の障害にはなりえません。

孤独を友として、
一人、自身の人生に深く向き合い、
人生の根っこを深くすることもできるし、

孤独でいる人にそっと寄り添い、
適切にサポートしたり見守ったり
することもできます。

孤独に振り回されて、
我を見失うこともなくなるのです。

そうなれば、
相手がいかなる選択をしようとも、
それを自分が望むようにさせようという
コントロールを必要としなくなるので、

相手を束縛することもなく、
ただ自分は結果を引き受けて在るのみで
自分も相手も自由で居られます。

変に絡み合わず、パワーゲームも
しなくなるんですね。

こうして、互いの意志を尊重できる
自立した関係性が成立します。

絡み合う執着や依存の感覚を
愛だと錯覚している人も多いですが、
それは愛ではありません。

いかに相手に自分の不足感を
埋めさせるかという利己的なニーズ
に基づくパワーゲームですね。

人は孤独でいるとき、
掛け値なしの等身大の自分自身を
否応なく感じます。

何の鎧も下駄も履いていない
その自分で世界と対峙したときに、
自分を越えたものが自分の中に
流れ込んでくるのを感じるでしょう。

孤独に酔うのでも執着するのでもなく、
ただ素直に、謙虚に己に向き合うとき、
孤独は神聖なフィールドへの
通過点であり、門になるでしょう。

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