私のつれづれ草子

書き手はいささかネガティブです。
夢や希望、癒し、活力を求められる方の深入りはお薦めしません。

SICKO シッコ

2009-06-07 | 2見る・読む・聴く
二年前「シッコ観に行きませんか?」と若い女の子に誘われて引いた記憶がある。
「シッコ」はダイレクトに日本語の排尿であって、表題のその響きがどうしても許せなかったから。

マイケル・ムーア氏の、現代アメリカ医療の惨状を描いたドキュメンタリーだと知ってはいたが…。

辞書で引いても出てこない“SICKO”は、スラングで狂人・変人の意味だという。

「狂気の沙汰も金次第」とでもいった副題をつけてくれればよかったのに…。

二年前の作品であるが、ここまでアメリカの医療がズタズタになっているとは知らなかった。
国民皆保険の日本で、必要ないと言われながらもう20年以上外資系保険会社の医療保険料を払い続けているが、無駄だったかもしれない。
だって、困った人の助けに…精神ではなく、あくまでお金集めの手段のようだから。

経済危機ののち、現在はもっと悲惨な状況になっているだろうが、民間保険会社の制御を解いて国民皆保険の提案がなされた際、「困った時の助け合い精神」を→「社会主義的企み」につなげてしまったところが、何とも短絡的で救いがたく、哀しかった。

戦いに負けた我が国に、民主主義という本来勝ち取られるべき社会システムを持ち込んでくれたアメリカさんが…太っ腹で気のいい人たちの集まりだったはずのアメリカさんが、拝金主義でがんじがらめになっていて、金のない病人は病院からタクシーで運び出し、スラムの福祉施設の前に放り出すなんてことをしばしばやらかしているなんて…。
(そういえば、日本でも去年、病院か老人施設の職員が、公園に御老人を捨てて行ったというニュースを1~2度聞いたような気がする。)

確かにアメリカ人の平均寿命は先進国中で恐ろしく低い。

かかりつけのDr.が、以前「その内、平均的な国民は検査などは受けられないくらい医療単価が上がってくるよ」とおっしゃっていたのは、我が国が少しずつアメリカ的医療制度にシフトして行っていることを捉えてらしたのだなと思う。

そう、国民皆保険と言ったって既に日本の医療財政はひっ迫、医療費の自己負担比率は上昇、医療費点数は削減の一途。
少しずつアメリカに近づいて行っているもの。

民主主義を勝ち取った国民主体のフランスやイギリスといった資本主義国では、国民皆保険が維持され、手厚い医療が安定的に提供されているというのに…。

カナダの良識ある人々は、高額の医療保険に入らずして隣国のアメリカには足を踏み入れないという。

日本人はおとなしく、忘れっぽく、穏やか過ぎる。
良心的な神風が、いつも吹いてくれるとは限らない。

非常にアメリカ的なマイケル・ムーアという人の、屈折した愛国心を感じながら、「貧すれば鈍する」罠にこれ以上アメリカさんがはまり込まないように、より良いチェンジを祈るのであった。
コメント
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