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気ままに生活してるシニアの残日録

映画「ノートルダム 炎の大聖堂」を観る

2023年04月19日 | 映画

映画「ノートルダム炎の大聖堂」(2021、仏・伊、監督ジャン=ジャック・アノー)をテラスモール松戸のUnited Cinemaで観た。シニア料金1,200円。監督のアノーは「セブンイヤーズ・イン・チベット」などを手がけた79才のベテランだ。

この映画は、2019年4月15日に火災があったノートルダム大聖堂の消火活動に従事した消防隊を中心にみたドキュメンタリーのような映画だ。

出演はサミュエ・ラバルト/ジャン=ポール・ボーデス/ミカエル・チリ二アン

当時この大聖堂は屋根の修繕をしていた、足場が組まれ、多くの資材が運び込まれ、工事が行われていた。観光客が入る聖堂は閉鎖されておらずミサが行われていた。いろんな国から観光客がツアーガイドの案内で見学している姿が描かれる。夕方6時半くらい、工事は終わり、作業員がもう帰ったとき、工事現場の屋根裏から火が上がる、警備室の警報が鳴るが誤作動だ、とされる、そのうちどんどん火が回り煙が外からもわかるくらいになり消防署に一般人から通報が入る、そして火の手が勢いを増し大変なことに、消防隊が現場に行こうとするが夕方の渋滞に阻まれなかなか進めない。そんな状況での消火活動を描く。

観て感じたところを記してみよう

  • 工事現場で禁煙となっているのに守られていない、やはり基本がおろそかになると怖い結果になる
  • 放水用の水道管がいたるところで漏水して水圧が上がらない、日頃のメンテナンスがいかに大事かわかる
  • アラームがなっても以前誤作動があると、またか、というバイアスがかかる、怖いものだ
  • 塔の最上階に行くのに300段の螺旋階段があり、それ自体消火活動に大変な負担、しかも途中にドアがあり鍵がかかっている、これが消化の妨げになる、こういう点も怖い
  • 火の手が広がると温度が上がりアルミでできたものが溶け出して流水のように流れ、地上にこぼれる、本当に怖い
  • この映像は一体どうやって撮影したのだろう、映画の公式サイトの説明などによれば実物大の大規模なセットを作って炎上させながらIMAXカメラで撮影したとなっている。
  • 消防隊を含めて犠牲者ゼロというのはすごい、また、文化財のほとんどが運び出されたというのもすごい、日本で同じようなケースが起こったら人命最優先で、文化財も運び出してくれ、という教会の要望は聞き入れられるだろうか
  • 火災の前、大聖堂の内部の観光客のツアーの模様を描いているが、いろんな国の観光客が描かれる、最後の方でやっと日本人と日本語ガイドが出てくるとほっとした、アジアでこのような場合に出るのは中国だけになる日も近いか

消火活動に関連した消防士のドラマがあるわけではなく、淡々と消火活動が描かれている。しかし、それがかえって迫力を増している。火災の原因を追求することではなく、どのように大聖堂が救出されたことを見せるのだ、と公式サイトには書いてある。観ている途中から血圧が上がって後頭部が痛くなった。心臓が弱い人はみない方が良いだろう。

ところで、ノートルダム大聖堂は何年か前に行ったことがある。その時の写真を一つ

火事は怖い、基本をおろそかにしない、それを改めて認識したが、観る人にそう思わせれば、この映画は成功だろう。


劇団温泉ドラゴン公演「悼、灯、斉藤(とう、とう、さいとう)」を観る

2023年04月19日 | 演劇

テレビの劇団温泉ドラゴン公演「悼、灯、斉藤(とう、とう、さいとう)」を録画して観た。2023年2月の東京芸術劇場シアターイーストでの公演。

【作】原田ゆう(温泉ドラゴン、45)
【演出】シライケイタ(温泉ドラゴン、48)

番組の説明では、劇団ドラゴンは2010年結成、現在5人のメンバーで活動している、原田ゆうは2016年から温泉ドラゴンに加入、2022年には文学座から依頼を受け文学座の分裂騒動を描いた戯曲「文、分、異聞」を書く、今回の作品は彼の母が2020年に突然亡くなり葬儀に追われながらも俯瞰的にその状況を見ているところがあり、その時に起きた出来事とか感じたことなどが作品になると思って脚本を書いたと述べている。

演出のシライケイタは演出家、劇作家、俳優としていろんな団体の演出を手がけてきた実績がある、2022年だけでも演出家として劇団民藝「ルナサに踊る」、青年劇場「殺意」を手がけ、劇作家として劇団青年座「ある王妃の死」、結城座「変身」のために脚本を書いた。


【出演】
阪本篤(温泉ドラゴン、三男和睦なごむ)
筑波竜一(温泉ドラゴン、長男倫夫みちお)
いわいのふ健(温泉ドラゴン、次男周二)
大森博史(父親吾郎)、大西多摩恵(母親佳子)、林田麻里(泰菜)、宮下今日子(奈美恵)、枝元萌(小田切萌)、東谷英人、山﨑将平、遊佐明史

物語は、2020年6月、母の急死で5年ぶりに実家に集結した斉藤家3兄第。喧嘩をしたりいがみ合いながらも諸々の手続きを進めていく中で互いの思いを知り、絆を紡ぎなおしていく姿を描くもの。

長男は料理店を始めたが失敗し6ヶ月前から仕事をしていない、妻の働きで生計を立てる、次男は安サラリーマンで妻はダンサーだがコロナで収入が激減、三男は独身で売れない映画ライターで金がない。父親は年金生活、母親は年金をもらっているが介護施設で働いている。そんな中で、深夜勤務をしていた母が勤務中に倒れてなくなってしまう。

親兄弟それぞれいろんな問題点を抱えているが当面必要な葬儀代、お墓代などの工面をどうするかで悩む、母が生命保険に入っていた筈だた保険証が出てこないなど混乱する。そんな状況で母が生前、父とどんな会話をしていたのかと言う場面がフラッシュバックするように再現される。この場面転換、時間の逆戻りの演出がうまかった。一瞬、舞台が暗くなり、その間に場面転換がなされるのはうまい仕掛けだと思った。演出家の工夫であろう。この場面転換が何回もあったが違和感を覚えなかった。

劇では両親、兄弟のそれぞれの抱えている問題をじっくりと語らせて物語が進行していく、段々とその状況が観客の理解するところとなる。そして最後の方になると子供思いの母の秘密が明らかにされていき、兄弟を感動させ、観客も感動する。親兄弟お互いにそれぞれの置かれている状況や今までの人生の経過を知り理解を深めていく。なかなかうまい脚本だと思った。

出演者の中では大森博史(父親吾郎役)が良い味を出していたように思う。渋い演技が目立った。