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「アンドレア・シェニエ」ウィーン国立歌劇場ストリーミングで鑑賞する

2025年01月31日 | オペラ・バレエ

ウィーン国立歌劇場が先日亡くなった演出家オットー・シェンクを追悼して彼の7作品を無料で配信していたので、その中から「アンドレア・シェニエ」を選んで鑑賞してみた、日本語字幕付きが有難い、収録日は April, 29, 2018

作曲:ウンベルト・ジョルダーノ(Umberto Giordano、1867年-1948年)
指揮者: マルコ・アルミリアート(Marco Armiliato)
演出: Otto Schenk

出演:

マッダレーナ・ディ・コワニー/アンニャ・ハルテロス(Anja Harteros、1972、独)
アンドレア・シェニエ/ヨナス・カウフマン(Jonas Kaufmann、1969、独)
カルロ・ジェラール/ロベルト・フロンターリ(Roberto Frontali、1958、伊)

ベルシ(召使) /イルセヤル・ハイルロワ(Ilseyar Khayrullova)
グレフィン・ディ・コワニー(伯爵夫人) /ドナ・エレン(Donna Ellen)
マデロン(老女) /ゾリヤナ・クシュプラー(Zoryana Kushpler)
ルーシェ(シェニエの友人) /ボアズ・ダニエル(Boaz Daniel)

あらすじ

フランス革命の頃のフランス。革命志向の詩人アンドレア・シェニエはロベスピエールの恐怖政治の魔の手中に陥り、反革命の容疑をかけられる。彼の運命は、若い貴族の娘マダレーナ・コワニーと元侍従ジェラールの運命と密接に絡み合っている。二人ともマダレーナを愛し、マダレーナはシェニエを愛している。しかし最後には死が待ち受けており、アンドレア・シェニエとマダレーナ・コワニーは共に断頭台に向かう

感想

  • やはりオットー・シェンクによる演出は良かった、奇をてらったところが全くなく、実にオーソドックスな演出で楽しめた、こういった演出がシェンクらしいのでしょう、フランス革命時の話なので舞台上で3色のフランス国旗がさりげなく使用されている場面が何回かありにくい演出だと思った、そして最後でシェニエとマッダレーナが2人そろって人力車のようなものにのせられて処刑場に連れていかれるところで幕となるが、露骨でない演出で品があってよかった、最近の意識高い系演出家にやらせたらとんでもない場面にするのではないか
  • このオペラは普段あまり見ないので論評するだけのものは持っていないが、ストーリーがわかりやすく、かつ、悲劇のロマンスというだけでなく、終わり方が劇的なので悲劇があまり好きでない私でも楽しめた、こういう終わり方は「トスカ」と共通するところで、最後で盛り上がるところが良い

  • そして、何と言ってもこの作品の主役の二人、タイトルロールのカウフマンとマッダレーナのハルテロスが素晴らしかった、美男・美女の組み合わせで歌も二人ともすごかった、うまかった、最高の組み合わせだ、この舞台を観た人は最高の思い出になったのではないか、というのも、実はこの二人は公演をキャンセルするので有名な歌手だからだ、キャンセル男・キャンセル女と揶揄されているらしい、そういう意味でウィーン国立歌劇場は良くもこの二人の大物をアサインしたものだと感心した、劇場側は開幕までと開幕後も毎日ハラハラしていたのではないか
  • 第3幕目にマッダレーナが革命軍で出世した元召使のジェラールのところにシェニエの命乞いに行く場面で、ジェラールが「自分はあなたが欲しい」とマッダレーナに迫る場面のいつくかの二人のセリフが露骨すぎると思った、曰く、あなたのブロンドの髪の海にこの手を沈めたい、私の体であの人が救われるなら奪いなさい、私は瀕死の体どうぞ奪いなさい私はもう死んでいる、など

存分に楽しめました


映画「METトスカ」を観る

2025年01月30日 | オペラ・バレエ

METライブビューイングの「トスカ」を鑑賞した、3,700円だったか、3枚セットのムビチケ9,600円を買ったが、買った当日は使えないのを忘れていたため通常料金を払った、上映時間は3時間15分(休憩2回)、30人は来ていたか、MET上演日は2024/11/23

演目:トスカ/プッチーニ
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン(1975、Yannick Nézet-Séguin、カナダ)
演出:デイヴィッド・マクヴィカー(David McVicar、1966、英)

出演:
トスカ/リーゼ・ダーヴィドセン(Lise Davidsen、ノルウェイ)
カヴァラドッシ/フレディ・デ・トマーゾ(Freddie De Tommaso、1993、英)
スカルピア/クイン・ケルシー(Quinn Kelsey、1978、米)
堂主/パトリック・カルフィッツィ

つい2か月前に上演されたMET公演が映画になって見れるなんて何という贅沢だろうか、今シーズンはフィガロやセビリアの理髪師など好きな演目も多いのでなるべき観に行きたい

METライブビューイングは舞台裏が見れたり歌手や演出家などのインタビューが聞けるので貴重だ、同じようなものにROHのライブビューイングもある

鑑賞した感想などを述べてみたい

  • この演目の持つ歴史的な意味などについては以前のブログで取り上げた(こちら)

演出について

  • デイヴィッド・マクヴィカーはMETでは既に13作品手がけいるようだが、この日の演出は良かった、時代の読み替えなどなく、謎かけのような演出もなく、オーソドックスな正統派演出だと思った

歌手について

  • タイトルロールのリーゼ・ダーヴィドセンだが、歌は良かった、声量は豊かだし、歌唱力もあると思った、ただ、最近ちょっと太目になってきたのはいただけない、第2幕では戦勝記念のオペラを歌った後、直ぐにスカルピアのところに駆け付けるためオペラ歌手の衣装そのままで登場する演出であり、これは非常に妖艶な感じがして良かった、また、幕間のインタビューの最後には自分のノルウェーの家族に母国語で「ハーイ・・・」などと話しているところはまだ子供っぽいあどけなさが残っていると思った

  • カヴァラドッシのフレディ・デ・トマーゾはMET初出演だが、これもよかった、なかなかの歌唱力、声量だと思った、ただ、リーゼ・ダーヴィドセンより背が低いため、二重唱など二人並んだ場面ではどうしても姉と弟と言う感じに見えた、彼は幕間のインタビューで、自分はイタリア人の父と英国人の母をもち、王立音楽院在籍中にバリトンからテノールへ転向しためずらしい経歴で、リーゼ・ダーヴィドセンなど周りの人に助けられて務めていると述べていた
  • カーテンコールで一番の喝采を浴びていたのはスカルピアのクイン・ケルシーだった、彼はMETの常連メンバーでしょう、実際、素晴らしい演技だった、特に第1幕のテ・デウムはスカルピアの最大の見せ場で演出も含め最高に盛り上がった、そして、スカルピアと言えば私の中では2018年ザルツブルク音楽祭でのティーレマン指揮の「トスカ」でスカルピア役をやった伊東四朗似のルドヴィック・テジエ (Ludovic Tézier、1968)が最高のスカルピアだ(と言っても、そんなに多くのトスカを観ているわけではないが)、この日のケルシーもテジエに負けない演技だった

指揮、演奏について

  • ヤニック・ネゼ=セガン指揮による演奏も素晴らしかった、セガンは代役だったようだが、メリハリを効かせ、盛り上がるべきところできちんと盛り上がっていたのは良かった

楽しめました


新春浅草歌舞伎(第1部)を観劇

2025年01月29日 | 歌舞伎

例年通り、1月は浅草公会堂の新春浅草歌舞伎(第1部)を観に行った、いつもの3階席3,000円、7割くらいの入りだった、11時開演、14時終演

お年玉〈年始ご挨拶〉
左近

(感想)

最初は地声で真面目に挨拶を述べていたが、一通り終わるとマイクに持ち替えて、ざっくばらんな雰囲気で新年の感想などを話してくれたのは良かった、ただ、新春浅草歌舞伎が今年から若手とは言えなくなった先輩たちが出演しなくなって自分たちの代になって初めての公演だったこともあり、表情に緊張感があり、顔が引きつっている感じが出ていたのはまだ修業が足りないと思ったが、仕方ないでしょう、頑張ってください

上演演目説明
中村莟玉

(感想)

話し方にそつがない慣れた感じがした

一、絵本太功記/尼ヶ崎閑居の場

武智光秀/市川 染五郎
武智十次郎/中村 鷹之資(1999、天王寺屋)
初菊/中村 玉太郎(2000、加賀屋)
皐月/中村 歌女之丞(1955、成駒屋)
佐藤正清/尾上 左近(2006、音羽屋、松緑息子)
操/中村 鶴松(1995、中村屋)
真柴久吉/中村 莟玉(1996、高砂屋)

本能寺で主君尾田春長を討った武智光秀が、尼ケ崎の閑居にひそむ宿敵真柴久吉をねらって竹槍を突き入れた、しかしそこにいたのは光秀の母、身替りに竹槍を胸に受けた母は、息子を主殺しの人非人と責めたてて息を引き取る、戦場で深手を負って戻った光秀の息子十次郎も絶命、親と子を一時に失った光秀、逆賊非道の報いは重かった

(感想)

話は分かりやすかった、出演者の中では十次郎の鷹之資が頑張っていたのが目立った、凛々しい感じがして良かった、一方、光秀の染五郎は演技がまだ役に見合っていなかった、染五郎はまだ若く、平安貴族のような細身で上品な女性的ともいえる役者なのでこの日の光秀のような主君に謀反を起こす武士は似合わないと感じた、イヤホンガイドの説明では曽祖父の初代白鴎が演じた役とのことなので想い入れが強いのだろうが、もう少し年を重ねてからやる役ではないかと思った

仮名手本忠臣蔵
二、道行旅路の花聟(はなむこ)落人

腰元おかる/中村 莟玉
鷺坂伴内/中村 玉太郎
早野勘平/中村 橋之助(1995、成駒屋)

早野勘平とお軽は罪人となって共に落ち延びて行かねばならなくなった、理由は主君の塩谷判官(浅野内匠頭)登城の供として選ばれた勘平が、恋仲であるお軽と色事をしている間に、主君が高師直(吉良上野介)を殿中で斬りつけるという事件が発生し、主君の大切な場に居合わせる事が出来なかったため

勘平は大いに悔やみ、自害を試みるがお軽が説得に努め、一先ず自分の京都山崎の里へと「落ち人」となって道行をする事になった、その途上、松かげで休憩をしながら自分たちの馴れ初めや勘平の自害にはやる行動をお軽は諫める、そこへ江戸よりの追手で高師直の家来「鷺坂伴内」らと遭遇し戦いになり、無事伴内らを追い返し、二人は旅を急ぐのだった

(感想)

基本的には舞踊であるので踊りであるが、ところどころ台詞が入る、お軽の莟玉もよかったし、勘平の橋之助もよかった、橋之助の表情を見ていると父親の芝翫の面影がありやはり親子だなあと思った、また、ひょうきんで間抜けな伴内の玉太郎は絵本太閤記の初菊はイマイチと思ったが、この落人の伴内には完全にはまっていた

さて、この日は開演前に浅草に早めに到着し、国際通りにあるミスタードーナツに寄り、ピエール・マルコリーニとのコラボ商品ショコラ ノワールを買ってコーヒーを飲んだ、このコラボ企画は素晴らしいと思った

幕間の昼食は浅草公会堂で児雷也の天むすを買って楽しんだ、何度食べても飽きないおいしいものだった

楽しめました


太平洋クラブ益子PGAコースでゴルフ

2025年01月28日 | ゴルフ

太平洋クラブ益子PGAコースでゴルフをした、3年ぶりくらいか、この日は天気予報が外れて朝から雨、スタートの3ホールはけっこう雨が降って大変だったが4ホール目くらいに雨が上がり、後半は晴れに、気温も朝こそ寒かったが昼間は12度くらいあり温かかった

このコースは、1976年9月に開場、コースの設計および改造は加藤俊輔氏、1986年に太平洋クラブが買収し、名称も「太平洋クラブ益子コース」に変更され、2015年にPGA(日本プロゴルフ協会)と提携し、「太平洋クラブ益子PGAコース」という現在の名称になった

コースは18ホールでワングリーン、乗用カート(電気)でラウンドするが、フェアウェイ乗り入れは不可、リモコンもないがナビ画面がある、コースは林間コースで適度なアップダウンがあり、グリーンもところどころ大きなアンジュレーションがありスピードは9.5ftだった、池が絡むホールがいくつかあった、全体的には素晴らしいコースレイアウトだと思う、この日はそんなに混んでなく、進行はまずまずでそれほどストレスはなかった

久しぶりにラウンドして気になったのは、

  • アウトの5番ショートホールと6番ミドルホールが隣り合わせで、6番のティーショットが右に曲がると5番のティーグラウンドの方に来る可能性がある、特に5番のレディースティーが危ないと思った
  • コースにはディボット跡が多かったし、グリーンにはボールマークの跡が多かった、来ている客のマナーは良くないでしょう
  • コース全体の手入れは良いと思うが、ティーグラウンドの芝が剥げているホールが多かったのはどうしたことか
  • カートのフェアウェイ乗り入れをOKにしてもらいたい、太平洋軽井沢はOKだ、他のコースもOKにしてもらいたい、特に夏場は

クラブハウスも含めたコース全体は高級感があってよかったし昼食もおいしかった、クラブハウスからはコースが見渡せるので理想的な配置であった

この日のラウンドでは17番のグリーン手前の深い入れてはいけないバンカーにつかまってしまった、自分の背の高さより深いたこつぼのようなバンカー、「しまった」と思ったが、なんとそこからのバンカーショットがホールから10㎝くらいのところについてパーをとれたのがうれしかった

楽しめました

さて、この日は帰りに益子のまちあるカフェに立ち寄った、Googleマップでカフェを検索して「自家焙煎珈琲イチトニブンノイチ」に行ってみた、店内は撮影禁止なのは残念だがいろんな種類のコーヒーを用意してあり、焙煎もやっているようで、かなりのこだわりがある店だった

店内に骨董品や陶芸品が多く、アンティーク店のような雰囲気があった、店主とちょっと話をしてみたら、古くからあるものを大事に「珈琲と文化」を大事にした店にしているとのこと

楽しめました


阪田知樹/オール・リストピアノ協奏曲演奏会を鑑賞

2025年01月27日 | クラシック音楽

阪田知樹/オール・リストピアノ協奏曲演奏会に行ってきた、場所はサントリーホール大ホール、19時開演、21時終演、この日はS席で正面中央から若干右側の前から4列目、9,000円、8割以上は入っていたか、女性客が多いような気がした

出演

指揮:角田鋼亮
ピアノ:阪田知樹
東京フィルハーモニー交響楽団

曲目

リスト:

  • ピアノ協奏曲第2番 イ長調 125/R. 456(1861年)
  • 死の舞踏(「怒りの日」によるピアノと管弦楽のためのパラフレーズ)126/R. 457(1862年)
  • ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 124/R. 455(1856年)
  • ハンガリー幻想曲 123/R. 458(1852年)

(アンコール)

  • ここは素晴らしい処(ラフマニノフ、阪田知樹編曲)
  • Lady be Good(ガーシュウィン)

(感想)

  • 東京フィルとのピアノ協奏曲の演奏会、ピアノ独奏ではないにしても阪田が主役でサントリーホールの大ホールをほぼ満席にできるのは阪田人気がすごいからなのでしょう、たいしたものだと思った
  • この日はリストの曲ばかりだったが、阪田は2016年のリスト国際ピアノコンクール第1位だったのでリストは得意なのでしょう、プログラムノートでも「リストとの出会いは20年以上前で、それ以来、リストに魅了され、その作品と音楽感を研究することと、その魅力を伝えることをライフワークの一つとしてまいりました」と述べている、ピアノを弾いている表情もよく見えたが楽しんでいるように見えた
  • 私の座席は右寄りだったのでピアノを弾く手許は見えなかったが、ピアノの音の響きは確かによく聞こえた、やはり右側の方が鑑賞目的には良いのかなと思った、ただ、前から4列目は舞台に近すぎてピアノの音が強く響きすぎてあまりよくないと思った、前から10列目くらいの方が全体の楽器がバランスよく聞こえて良いのではないかと考えた、また、右側の座席は前の方でも空席が目立った
  • 最初の3曲は普段あまり聴かない曲なので、良い曲なのか悪い曲なのか分からなかったが、最後のハンガリー幻想曲はテレビで阪田が弾いているのを聴いたことがあり、良い曲だなと思ったため、この日の演奏も非常に良かったと思った
  • いずれの曲もリストの超絶技巧を存分に味わえる曲だと思った、ぺーと―ヴェンやモーツアルト、シューベルト、ショパンとも明確に違う、リストらしい技巧を凝らした曲を選曲していると思った、阪田の演奏もその超絶技巧を存分に発揮していると思った、ただ、メロディー的にはハンガリー幻想曲が一番良いと感じた

  • 阪田はアンコールで2曲弾いてくれ、終演後、出口の外にアンコール曲目が手書きで貼り出してあったが、みんなが確認するために殺到するため確認するのに時間がかかった、Xでも情報提供してほしい
  • さて、この日の東京フィルの演奏を舞台近くでじっくりと聴いて、楽団員の演奏姿を観たが、私の正面に見えたオーケストラの右サイドをはじめ奏者はなぜか皆、表情が暗かった、演奏して楽しそうには見えなかったのはどういうわけだろうか、演奏終了後も笑顔は全くなし、無表情で楽しそうに仕事をしているように見えなかったのが気になった、指揮者やピアニストなどに問題があったのか内部で何か問題を抱えているのかと心配になった、先日鑑賞した都響はコンサートマスターの水谷晃氏が終始にニコニコ笑顔で好印象を持ったのだけど・・・

さて、この日の公演であるが、自席から舞台後方席など周辺を見渡すとほぼ8割くらいの人がマスクをしていたのには驚いた、私はしないけど

楽しめました


映画「敵」を観た

2025年01月26日 | 映画

池袋のシネマ・ロサで映画「敵」を観た、シニア料金1,200円、2023年製作、108分、監督・脚本吉田大八、原作筒井康隆、けっこう入っていた、シニアが多いが女性客も多かった、「シニアもの映画」はこれからもどんどん増えるだろう

筒井康隆が1998年に発表した同名小説の映画化、フランス近代演劇史を専門としていた大学教授をリタイアし、妻には先立たれ、日本家屋にひとり暮らす渡辺儀助77歳(長塚京三)、毎朝決まった時間に起床し、料理は自分でつくり、衣類や使う文房具一つに至るまでを丹念に扱う、時にはわずかな友人と酒を酌み交わし、教え子を招いてディナーも振る舞う、そんな穏やかな時間を過ごす儀助だったが、ある日、書斎のパソコンの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくると・・・

鑑賞した感想などを書いてみたい

  • この映画の前半は主人公の渡辺儀介の毎日の生活の様子を描いている、規則正しい生活リズム、自炊生活と食へのこだわり、買い物も洗濯も料理も全部自分でやり、机に向かい専門の仏文学エッセーの原稿を書いたりする、インテリの独り暮らしシニアの一つの理想的な生活でしょう、こういったものを淡々と描く映画は好きだ、欧州映画にこういったものが多いような気がしているが、日本でも昨年の役所広司のPERFECT DAYSなどがあった

  • この映画の儀介の普段の生活の特徴は、買い物以外はほとんど出かけずに家にいることであろう、自分が同じ立場になったらもっと積極的に出かけるだろう、映画や音楽鑑賞、美術鑑賞、街歩き、食べ歩き、ゴルフなどだが、一人で出かけたくなるような楽しみを持っているということがけっこう大事なのではないかと思った
  • 儀介を見ていると金に対する執着というものがあまり感じられなかった、節約しようだとか、金を儲けようなどの雰囲気は全く感じなかった、貯金がなくなったら死ぬと言う感じであったが、ここまで枯れた心境になれるものだろうかと思った
  • 金に対する欲望は感じられないが女に関する欲望・願望は全く枯れていないのが儀介の特徴で、これは同じ男としてわかるような気がした、男はこうでないと早死にするのかもしれない

  • 映画の後半はこの主題である「敵」に関する描写が中心となる、教え子を招いての自宅での食事の後の出来事や、たまに通うバーの女子大生アルバイトとの交流などに始まり亡くなった妻が出てきたり、現実と就寝中の夢と妄想や痴呆とが入り混じって、どこまでが現実かわからない、この辺りは私はあまり興味がわかないが、自分よりも何歳も若い教え子の既婚女性を自宅に招いて二人でワインを飲みながら食事をするなど現実には有り得ない設定ではないかと思ったが、妄想だからよいのでしょう、元気な証拠でもあるのでしょう
  • 「敵」とは何か映画の中でははっきりしてないと思う、現実と妄想とがごっちゃになってしまう症状のことを言うのか、別のことなのか、見ている人が考えろと言うことでしょう、この映画の新聞にのっていた映画評では「妻への思い、欲望、恐怖・・・、長年目を背けてきたものに襲われ、おびえきる渡辺の姿には身につまされる」とあった、潜在意識下にある何らかの暗い情念、悔い、願望などなのだろうか
  • ただ、これらの妄想について「敵」なのだろうかと思った、それが耄碌したシニアに襲ってきて苦しめるのだろうか、それは人によるだろう、楽天的な人はあまり気にしないかもしれない、何事も思いどうりにはならないよと達観している人も多いのではないか

  • この映画はモノクロで描かれているが、前半の現実はカラー、後半の妄想との戦いはモノクロと区別したほうが良かったのではないかと感じた、また、後半に老いの修羅場ともいえる場面が続くが、この物語は冒頭の夏から始まり、秋、冬、春と4つに区切って進められる、最後の春というのが妄想老人の最後であり、「また会いたいね」という儀介の言葉で終わる、春という季節と最期という点がミスマッチのような気もするけどどうなんだろう
  • 映画の最後で、儀介の遺産を相続した甥が遺品の中にあった双眼鏡を見て隣の家だろうか、何人かの人が集まって食事をしているのか何かしている場面を見て驚いて双眼鏡を落としてしまう場面があった、ここで何に驚いたのかわからなかった

後半はもやもや感が残った映画であったがシニアは観て良い映画でしょう


浦和「満寿家」で鰻重

2025年01月25日 | グルメ

昨日、オペラ演出家のオットー・シェンクの訃報について投稿しましたが、ウィーン国立歌劇場では今日からオットー・シェンク追悼のため彼の作品7つを無料ストリーミング配信します(こちら)、素晴らしい決断だと思います、日本語字幕もあるのでいつくか観ようと思います

夫婦で浦和に行く用事があったので、浦和と言えばはやり鰻を食べようと思い、今回は満寿家にしてみた、初訪問

駅から歩いて10分もかからないだろうか、外観は立派で、4階建てくらいのビルか、内部は和風の造りとなっており、高級感がある、店のwebページを見ると、満寿家は明治21年に浦和の地で店を構え、現在は5代目の女将が切り盛りする、使用するうなぎはすべて国産とある、店は2014年にリニューアルオープンをしたようだ、どうりできれいで豪華さがあるわけだ

12時半くらいに到着すると直ぐに2階の大部屋に通された、ここは畳の部屋だが椅子席となっている、「川越いちのや本店」もそうだった、このほうが楽でいいが座敷に座る方式でも足元が掘りごたつ式になっている昨年行った浦和「山崎屋」方式でもいいと思う、この大部屋はテーブルが15以上あっただろうか、半分くらい埋まっていた

さて、注文だが、メニューを見ると「ランチメニュー」というのがあり、鰻重1,850円があった、これでは鰻の量が少ないので、通常の鰻重並(お新香、肝吸い付き)4,400円をたのんだ、これは鰻一尾が乗っているとのことなので、これで十分だと思った、これより上は鰻重上、特上とあるが、我々は鰻の量が多すぎるものは好まないので並で十分だ

注文してから20分弱で鰻重が出てきた、山椒を振りかけて食べてみると、焼きと蒸しで柔らかく、おいしい、タレの味付けも甘くも辛くもないちょうどいい塩梅、ご飯の炊き具合もちょうどいい、おいしく頂きました

来ているお客さんを見ると、皆さん昼間からビールやお酒を飲んでいるテーブルが多いのには驚いた、多分、何か良いことがあってちょっと贅沢したいときに来る場所なのでしょう

ご馳走様でした


映画「はたらく細胞」を観る

2025年01月24日 | 映画

オペラ演出家のオットー・シェンクが今月9日に亡くなったのを知った、享年94才(新聞記事はこちら)、オットー・シェンクは私の好きなオペレッタ「こうもり」の演出で知った、彼の演出した「こうもり」はつい最近までウィーン国立歌劇場で上演されていて私も大好きだった(こちら参照)、心よりご冥福をお祈りします

映画「はたらく細胞」を観た、2024年製作、109分、監督武内英樹

人間の体内の細胞たちを擬人化した斬新な設定で話題を集め、テレビアニメ化もされた同名漫画を実写映画化したもの、原作漫画「はたらく細胞」とスピンオフ漫画「はたらく細胞 BLACK」の2作品をもとに、ある人間親子の体内世界ではたらく細胞たちの活躍とその親子を中心とする人間世界のドラマを並行して描く映画

永野芽郁が赤血球役、佐藤健が白血球役でそれぞれ主演を務め、人間の漆崎茂を阿部サダヲ、その娘の日胡を芦田愛菜が演じる、人間の体内には37兆個もの細胞が存在し、無数の細胞たちが人間の健康を守るため日夜はたらいている

高校生の漆崎日胡は、父の茂と2人暮らし、健康的な生活習慣を送る日胡の体内の細胞たちはいつも楽しくはたらいているが、不規則・不摂生な茂の体内ではブラックな労働環境に疲れ果てた細胞たちが不満を訴えている、そんな中、よりによって日胡の体内へ侵入を狙う病原体が動き始め、細胞たちの戦いが始まるが・・・

なかなか面白い設定で、原作のすばらしさが想像できる、原作マンガは読んでいないが、いきなり映画を観ても十分理解できた、鑑賞した感想を述べよう

  • 血液の働きなど知っているようで知らないことを勉強できた、血液の中の赤血球は酸素を運ぶ役割を、白血球は細菌と戦う役割があったとは知らなかった、キラーT細胞や血小板などいろんな医学用語が出てくるが、映画で見ているとその役割がよく理解できた
  • 日胡が白血病になった時の治療で、放射線治療をすると体内を模した世界では空からオーロラが地上に降りてきて地上を焼き尽くすようなイメージが描かれ、また、抗がん剤治療を行うと、空から地上にいる悪玉菌めがけて抗がん剤のミサイルが飛んできて、悪玉菌だけではなく周辺の正常な組織にも被害を与える悲惨な状況になるのを実にうまく描がいていた

  • 日胡が抗がん剤治療でも回復しないため、最後は骨髄移植を受けることになるが、骨髄移植とはてっきりドナーの骨髄を外科手術で患者の骨髄に移植することだとばかり思っていたが、映画ではドナーの腰(腸骨)から全身麻酔で吸引した骨髄液を患者に点滴で注入する治療の姿が描かれており、「そうなんだ」と初めてどういう治療かわかった、移植という言葉に惑わされていた
  • 体内の血液の働きを説明するときの映像にはものすごい数のエキストラが使われており、さぞかし動員が大変だったろうな、コストがかさんだろうなと思った

いろいろ体内の仕組みについて勉強になったが、内容的には小学生が観て面白おかしく勉強する映画だと思った


西新橋「長安刀削麺」でランチ

2025年01月23日 | グルメ

久しぶりに西新橋「長安刀削麺」の刀削麺が食べたくなって行ってみた、以前よく食べに行っていた店、刀削麺(とうしょうめん)は、中国山西省の伝統的な麺料理で、小麦粉の生地を包丁で削って作る麺、断面が菱形や三角形で、もちもちとした食感が特徴

モンゴル族が漢民族の反乱を恐れて武器を取り上げた際に、庶民から包丁も没収し包丁が不足したために人々は薄い鉄片で刀を自作し、それを麺を作るのに用いたのが起源という

刀削麺の店を調べると西安刀削麺という名前の店が多く出てくるが、ここは長安刀削麺だから違うのかなと思ったら、西安というのは昔の長安のこと、西安は山西省ではなく、その隣の陝西省(せんせいしょう)にあるようだ、まあその付近で広まった料理なのでしょう

11時半過ぎに入ると先客は1人だけ、ランチメニューを見て一番オーソドックスな「山椒の効いた麻辣刀削麺」880円をたのんだ、麻はしびれ、辣はラー油のラだから辛み、そのミックスで麻婆豆腐のラーメンバージョンというようなものか

出てきたものを見ると、麺の上にもやしとパクチーか何か薬味の葉っぱがいっぱい乗っている、その下から麺を出すと、太目で独特の形、汁と一緒に食べるともちもちとした食感でおいしい、痺れと辛さとパクチーの香りが混ざって大変おいしかった、そしてそぼろのような肉の塊がいっぱい入っていた

麺を食べるときに汁がはねるので店の方でエプロンを用意してくれているのが有難い

満足しました、味は以前とちっとも変っていなかった、食後のお口直しの杏仁豆腐がついているのがうれしい、これで880円は安いでしょう

ご馳走様でした


有吉佐和子「青い壺」を読む

2025年01月22日 | 読書

有吉佐和子の「青い壺」(文藝春秋)を読んでみた、有吉佐和子(1931-1984)は「個と家の相克」「埋もれてしまった女たちの人生」「老いの深刻さと尊厳」など戦後の文壇が長らく直視してこなかった問題に挑み、それらの問題が引き起こす悲喜劇を真っ向から描き続けた作家、昨年は没後40周年だった

今まで有吉佐和子の小説は、文楽の三味線弾きの名手を主人公にした「一の糸」を読んだだけだった

この「青い壺」は全13話からなる、それぞれは短編として独立しているが青い壺を通して繋がっている、それぞれの短編では、登場人物が抱える人生の葛藤のようなものを描き、読者に自分だったらどうするか考えさせる物語が書かれている

昭和の時代の家庭における中年夫婦の生活の悩み、舅姑らとの関係、子供の人生、本人たちの人生、舅姑らの人生などについてそれぞれが「自分の人生はこれで良いのだろうか」と悩んだり喜んだりする

青い壺の変遷を一つのキーにしてその青い壺を保有した人の人生を描くという著者のこの構想は素晴らしいアイディアだと思った

小説の内容を再確認するために、青い壺の変遷をまとめてみた

第1話
そんなに有名でもない陶磁家の牧田省三が作り、出入りのデパートが買い取る

第2話
定年退職して家で毎日ブラブラしている寅蔵が千恵夫人から言われて世話になった原副社長へのお礼の贈答品として青い壺を買う

第3話
副社長夫人の芳江が生け花に熱中しており、贈答品の壺を気に入る

第4話
芳江の亭主の副社長が青い壺が家にあるのを見て、この家に置いとくなと指示、芳江の生け花の友人千代子にあげることにする

第5話
芳江から壺をもらった独身の千代子、母が緑内障で片方の目が失明し、もう片方の眼も見えなくなってきたが医者に連れて行ったら白内障と言われ手術で直してくれた、そのお礼に執刀した石田医師に贈答する

第6話
その石田先生が患者からもらったものを酒と勘違いして包みを開かずなじみの銀座のバーにもっていき「みんなで飲んでくれ」と言って置いていく

第7話
銀座のバーのマダム(梶谷洋子)が青い壺が入っているのをみて、高そうなので石田家に返しに行く、その青い壺を石田一郎医師の母が気に入る、ロンドン暮らしをしていた時に夫君が青い壺が好きだったため

第8話
石田一郎、厚子夫妻の家に保管されていた青い壺は石田夫婦が芝の高級レストランに外食に出かけている間に泥棒に入られて盗まれる

第9話
京都で開催されたクラス会に参加した弓香が、東寺で開催されていた骨董品セールに出ている青い壺を気に入り3千円の安値で買う

第10話
弓香の孫の悠子は自分が卒業したミッションスクールの小学校で栄養士をしていたが、祖母から青い壺をもらう

第11話
悠子はミッションスクールの栄養士の上司にあたるシスターが母親の病気で国のスペインに一時帰国するときに、今までお世話になったお礼に青い壺を贈答する

第12話
青い壺はシメが清掃員を務める病院、そこには弓香も入院しているが、の個室でスペインで感染した肺炎を患っている気難しい患者の部屋にあった、その壺はスペインから持ってきたものと言う

第13話
シメの病院に入院していた青い壺を持っていた患者は牧田省三の師であった、省三が退院した師の快気祝いに私邸を訪ねると、師は牧田にスペインで見つけた掘り出し物だと言ってあの青い壺を見せると牧田は驚き、これは自分の作品だと言うが、師は信じない

さて、この小説も2024年12月23日にNHK「100分de名著」という番組で取り上げられたことがある、そのwebサイトを見ると(こちら)、「青い壺」は「人生の皮肉を斜めから見つめる」小説だとして、どのエピソードにも「リアルな人生の皮肉」を描くところが話題を呼んだ、としている。幸せが驕りや怠慢などによって不幸せに転化し、不幸せだと思って引き受けたものが幸福をもたらしたりもする一筋縄ではいかない人生を、さりげなく、しかし深い味わいで描いたとしているがそうかもしれない

面白い小説でした