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ストレスのない生活を楽しむシニア

「ル・グルニエ・ア・パン麹町店」でクロワッサンを買う

2023年09月11日 | グルメ

先日半蔵門に出かけた際、半蔵門駅近くのパン屋「ル・グルニエ・ア・パン麹町店」によってクロワッサンを買った。初訪問。普通のクロワッサン2個と、パン・オ・ショコラというクロワッサンにチョコチップの入っているものを1つ、計991円。外から見ると店内は広いように見えるが、中に入ると大きな柱があるので、そんなに広くなかった。ル・グルニエ・ア・パンを日本語に訳すと“パンの屋根裏倉庫”。

この付近では、村上開新堂系列の「山本道子の店」でクッキーを買うことがあり(こちら参照)、また、運動のために神保町や竹橋まで歩くときに、この店の前をよく通るので、このパン屋さんは知っていたが、立ち寄ることはなかった。地元で人気店だと知って、今回立ち寄ってみた。

店のHPを見ると、この店はフランスのパン屋さんの日本進出店のようで、「パンとケーキを扱うお店。パンとケーキを扱うお店のことをフランスでは、ブーランジュリー・パティスリーと呼びます。朝は焼き立てのクロワッサン、昼はサンドイッチ、夕方には夕食用のバゲットやデザート、と、フランス人は一日に何度もブーランジュリー・パティスリーを利用します。」と書いてある。2013年にこの半蔵門(麹町)に日本初進出したようです。

私は初めて行くパン屋さんではクロワッサンを買うことにしている。店の実力がわかるからだ。店のHPでは「クロワッサンやブリオッシュなどをヴィエノワズリーといいます。ヴィエノワズリーは卵やバター、生クリームなどを使用したリッチな味わいの物を指し、フランスでは、パティシエが作ることも多く、パンとは明確に分けられています。(フランスではクロワッサンのことをパンとは言いません。)ヴィエノワズリーを体現する為に、フランス、Isigny(イズニー)社のバターを使用した当店のクロワッサンを、まずは一口お召し上がりください。」とある。クロワッサンがパンではないとは知らなかった。

通常、翌朝の朝食用に買うが、クロワッサンは翌朝になると柔らかくなり、パリッとした感じがなくなるものが多い。この店のクロワッサンは翌朝でもパリッとした感じが維持されていた。そのようなクロワッサンは大好きだ。自分ではこれができているパン屋さんの評価が高い、が、あまりない。今までこれが完璧なのは軽井沢の沢村と私の地元のパン屋さんだけだ。それに今回この店が加わったのは喜ばしいことだ。

半蔵門に来たときは次回からも買って帰りたい。


「筑波東急ゴルフクラブ」でゴルフをする

2023年09月10日 | ゴルフ

茨城県つくば市の筑波東急ゴルフクラブでゴルフをした。初訪問。費用は2人で20,000円。

このゴルフ場は名前の通り東急系のゴルフ場だ。ちょっと敷居が高いイメージがあり今まで敬遠していたが、今日は1人1万円程度の安い値段設定のプランがあったので来て見た。

カートはリモコン式、グリーンは2グリーン、ベントとバミューダ、今日はバミューダ芝のグリーン。駐車場を見る限り、そんなに混んでいるという感じではなかった。駐車場にはすべて屋根がついていて驚いた。ティーグラウンド、フェアウェイの芝は猛暑で茶色くなっている箇所が若干あったが、メンテはよいと思った。また、クラブハウスは落ち着いた感じで上品さが感じられ、良い雰囲気であった。

バミューダグリーンはそんなに距離がないが、フェアウェイに木が何本か植わっていたり、池があったり、林が空間ハザードになっていたりしてコースを難しくしている。バンカーはそれほど気にならなかった。アップダウンはほとんどない。インの14番は直角に左ドッグレッグとなっており、コーナーの木も高く、正面を狙っても180ヤードくらいまでしか打てず、コーナーを曲がってからも木が2本左右に植わっていてグリーンを狙うショットを邪魔をするという、極端にトリッキーなホールがあった。これはやり過ぎだと思う。

プレーの進行は順調で大部分のホールで待たずにティーショットを打てたのでストレスは全然たまらなかった。ただ、一つだけ不満を言えば、若干のホールでティーマークの位置がスコアカードの距離より短い地点に設置してあるホールがあったのが気になった。

食事は種類も多く、値段もリーズナブルで、おいしかった。

全体的には満足度が高いゴルフ場であった、課題としては2グリーンというところだけである。東急グループなら1グリーンに改造してもらいたい。そうすればより素晴らしいコースになるでしょう。

また良いプランが出れば来て見たい。


映画「トルテュ島の遭難者たち」を観る

2023年09月09日 | 映画

柏のキネマ旬報シアターで「みんなのジャック・ロジエ」という特集をやっている。ジャック・ロジエは1926年生まれで今年6月2日に亡くなったフランスの映画監督だが知らなかった。享年96才。今日は、「トルテュ島の遭難者たち」(1976、仏、原題:Les naufrages de l'ile de la Tortue)を観た。これはロジエの長編第3作目。

ロジエはヌーヴェル・ヴァーグ初期の傑作「アデュー・フィリピーヌ」で知られる。輝く季節を軽やかに大胆に切り取る才能に、ゴダールは絶賛し、トリュフォーは嫉妬したという逸話をもつ寡作の天才、とパンフレットでは説明している。

トリッキーな旅行プランを企画する代理店のふざけた社員ボナヴァンチュール(ピエール・リシャール)は、カウンターで顧客のニーズにあったプランを提示するのが売り。そんな代理店で、ロビンソン・クルーソー体験ツアーが企画される、ロビンソン・クルーソーのようにカリブ海の無人島で気ままに1ヶ月暮らす企画を実行しようとするのだが現地に行く途中から大変なことに・・・・

ツアーに参加した客10人くらいを路線バスの運転手を買収してチャーターバスに仕立て、それに乗せて現地に向かうが、途中で路線バスの一般客が乗り込んできて大騒ぎに、さらに進んで行くと日が沈み、運転手はもう運転できないと言っていなくなる、宿まで歩いて1時間かかると言い、ジャングルの中のようなところを客に荷物を持って歩かせる、宿についても部屋に入れないで外で寝る、無人島に行く船もかなり危なっかしい船でみていてハラハラする、無人島に接岸することができずに泳いで渡るか小さいボートで行くか決断しないといけないけど・・・・

およそ日本人が客となったら、途中で怒り出してツアー中止になるだろうな、という極めていい加減なツアーであるが、この映画の客は文句は言うが、そういうツアーだと思ってついてくるところが日本と全然違う異次元の世界だ。旅行代理店もいい加減なら客の方もいい加減。最後の方では「なーんだー」と言う落ちがつくが、何とか眠らずに見れた。

日本人とフランス人の国民性の違いが出た映画かもしれないが、この映画におけるいい加減さはさすがに現実ではいくらフランスでもあり得ないのではと思う、そうであれば国民性の違いというのは大げさかもしれないが。


池袋「炭火煎珈琲 皇琲亭」に行く

2023年09月08日 | カフェ・喫茶店

先日池袋に映画を観に行った帰りに時間があったので東口の喫茶店「炭火煎珈琲 皇琲亭」に行ってみた。初訪問。アド街で取り上げられていた。

同店のXには「東京ディズニーランドが開業した1983年4月に池袋で開店しました。美味しいコーヒーと居心地の良い空間で心の充足を満たして頂けるお店を目指しています。」とある。この店名が珈琲亭でなく皇琲亭というのは何か意味があるのだろうがわからなかった。

店に入ると、カウンター席か2人がけの席のどちらかにどうぞ、言われ、カウンター席を選んだ。店内は比較的広く、結構客がはいってるが長いカウンター席はあまり客が座っていなかったのでそちらにしてみた。

メニューを見ると、ブレンドコーヒー850円など結構高めの価格設定。いろんな豆の珈琲が並んでいるので、酸味の少ないブラジルサントス850円とチーズケーキ500円くらいだったか、をたのんだ。

コーヒー豆は炭火焙煎し、淹れる時は普通の店舗の倍以上という一杯に25gも使用し、注文を受けてから豆を挽いて淹く。スタッフはコーヒーインストラクター2級以上を有しており、抽出方法は「粗挽き一湯淹て(あらびきいっとうだて)」といい、挽いたコーヒーに途切れることなくお湯を注ぎ続ける淹れ方だそうだ。

コーヒーを飲みながらケーキを食べ、ゆっくり寛いだ。カウンター席は落ち着いた雰囲気で目の前でコーヒーを淹れているところ見れる。また、カウンター背後の壁は窓があり明るい日差しが店内に入ってくる。そして棚にはいろんなコーヒーカップが置いてある。カウンター席の人は一人で来てゆっくり本を読んでいる人が多かった。

長い時間寛げる雰囲気はあった。BGMもモーツアルトなどのクラシック音楽だ。ただ、テーブル席の客は結構おしゃべりをしている人が多く、店内はうるさい感じであった。それが気になる人はあまり寛げないだろう。また、若干の何か特有な匂いがした。11月に改装工事をするようなので、その辺は改善されるでしょう。

ご馳走様でした。


TVで「N響第1986回定期公演」を観る

2023年09月07日 | クラシック音楽

日曜日のNHKクラシック音楽館を録画して観た。今週のプログラムは、

【曲目】

1.交響組曲「3つのオレンジへの恋」(プロコフィエフ)
2.ピアノ協奏曲第2番(プロコフィエフ)、ピアノ=ベフゾド・アブドゥライモフ(ウズベ、32)
3.歌劇「蛇女」からの交響的断章(日本初演)(カゼッラ)

【演奏】

指揮=ジャナンドレア・ノセダ(伊、59)、管弦楽=NHK交響楽団

 

今週の曲目で注目したのは「3つのオレンジへの恋」と「ピアノ協奏曲2番」だ。ともにプロコフィエフ作曲だ。

「3つのオレンジへの恋」に注目したのは、私がクラシック音楽を聴き始めたきっかけとなった宮城谷昌光氏の本「クラシック千夜一曲」で氏が紹介している10曲の一つに選ばれているためである、が、今までほとんど聴く機会が無かった。

氏がこの曲が好きになったのは、高校生だったとき昼休みに放送劇「アイヴァンホー」がながれ、その始まりの音楽がこの組曲の中の行進曲だった、そしてそれが大変魅力的に聞えたからだ。それ以来、3つのオレンジへの恋の行進曲とアイヴァンホーが分かちがたく結びついて、曲を聴くとアイヴァンホーを自然と思い浮かべるようになった、と紹介されている。ただ、アイヴァンホーとこの曲はなんの関係もない。

氏の本ではプロコフィエフの生涯も簡単に紹介されており、それによれば、1891年ウクライナ生まれ、ペテルブルグの音楽院に入学しピアノを勉強する、在学中にピアノ協奏曲1番を書き上げる、そして「ピアノは打楽器である、打楽器のように演奏すべき」と言う。1917年に革命が起きるとアメリカに行く、その途中、日本に立ち寄り2ヶ月滞在、リサイタルをする、3つのオレンジへの恋はアメリカにいたとき作曲した。のちにソ連に帰国、1953年に亡くなる。

ここでちょっと面白いことに気づいた、この「ピアノは打楽器だ」という考えは、最近どこかで聞いたな、と思って思い出してみると、最近読んだ恩田陸「蜜蜂と遠雷」の中で「バルトークはピアノは旋律楽器であると同時に打楽器である、と繰り返し述べている、鍵盤を弾くのではなく叩くのだ」と書ているところがあったのを思い出した(こういう時、Kindleで読んでいるとすぐに探せるので大変便利だ)。プロコフィエフとバルトークが奇しくも同じことを言っていたのか、どちらかの作家が勘違いしているのか。

「教えてgoo」でベストアンサーとなっているのは、「ピアノを初めて打楽器として扱ったのはバルトークが最初です。その理由は、新たな音色、新たな音楽を求めて、です。その後、ピアノを打楽器的に扱うことで、今までにない急進的な試みができる、ということに多くの作曲家が気がついて、ピアノの鍵盤を腕を使って押しつぶしたり、ピアノの横を太い棒を使って叩いたり、ピアノの弦の部分を指でひっぱたり(弦楽器的な扱い)、様々な音楽が生まれたことは確かです」。どうやらプロコフィエフも同時代人のバルトークが広めた考えに共感していた、と言うことでしょうか。

次に、プロコフィエフのピアノ協奏曲2番だが、この曲に興味を持ったのは、上でちょっと触れた「蜂蜜と遠雷」で、栄伝亜夜が本戦で弾いた曲がこの曲だったからである。本戦に残った6人にピアニストのうち、プロコフィエフのピアノ協奏曲を選んだのは亜夜ともう一人優勝したマサルだ。マサルは3番を選んだ。亜夜が2番を選んだ理由は、天才少女ともてはやされていた当時、母が急逝し、その後のコンサートで母の死を乗り越えて聴衆の前で弾く予定だったのが2番だった、そして、弾くことができずに姿を消した・・・そのトラウマをずっと背負って生きてきた亜夜が、本戦で選んだのが同じ2番だった。

そういったこともあり、この2番協奏曲に興味があっががこれまで聴いたことがなかった。番組の解説では、プロコフィエフ自身がこの2番を評して、信じがたいほど難しく無慈悲なまでに人を疲れさせる作品、としている。

以上の2曲をじっくりと聴いた。指揮者もピアニストも知らない人だし、曲も初めて聴くので、すぐには理解できないので、3回聴いてみた。3つのオレンジへの恋の行進曲は、なんとなく良い曲だと感じたし、協奏曲2番はアブドゥライモフのピアノを弾く手の動き、汗だくになって弾いているというか鍵盤を叩いている姿を見て難しい曲で、ピアニストや聴いている人を疲れさせる曲だというのはよくわかった。

折に触れて聞き直してみたい。


蔵前のロースタリーカフェ「コフィノワ」に行く

2023年09月06日 | カフェ・喫茶店

蔵前の元楽でラーメンを食べた後、どこか喫茶店で休憩してから帰宅しようと思った。最近、蔵前は洒落たカフェが多くできているらしい、清澄白河と同じだ。喫茶店文化を愛する者としてはうれしい限りだ。この地域はよく来るのだが、下町の古い街並みや昔からの蕎麦屋、鰻屋などがあり好きな街である。

この付近にある喫茶ではfrom afarという店が好きで何回か行ったことがある。喫茶半月というカフェも洒落ている。今回は違う店を開拓しようと思い、Googleなどで調べて元楽に近いところで、ここに入ってみた。

店内に入ると、予想していたより狭い店だった。しかし、座席は空いており、2人掛けの座席に座れたのはラッキーだった。店内には若いカップルや女性客が多く、おじさんは少数派だ。カウンターで注文をするが、酸味が苦手だと言い、本日のコーヒー3種類の中からお勧めのグワテマラだったか600円のアイスコーヒーを注文した。

2人がけの席のテーブルは結構大きく余裕があった。店内は開放的で明かりが窓から十分に入ってくる良い雰囲気だ。地下にある喫茶店や薄暗い喫茶店はあまり好きではない。近視と老眼で本が読みづらいからだ。卓上のメモには滞在は1時間以内と書いてあったので、結構居心地が良いのだろう。みんなゆっくりしている感じがした。パン類などの食事もできるようだ。出されたアイスコーヒーは美味しかった。

コフィノワ(coffeenova)という店名には、コーヒーの生産者と消費者を繋ぐ「コーヒーの輪」になる、「新たなコーヒーの素晴らしさを提供したい」という思いがあるそうだ。焙煎したコーヒー豆の卸売り、コーヒー器具の販売、カフェ開業を希望する人への指導など手広く事業をやっているようだ。喫茶店だけではなかなか採算が取れないのだろう。今年で開業して7周年を迎えたそうだが、運営している人は若い人のようだ、頑張ってほしい。応援します。

ご馳走様でした。


高階秀爾「カラー版名画を見る眼Ⅱ」を読む

2023年09月05日 | 読書

高階秀爾(たかしな しゅうじ)著の「カラー版名画を見る眼Ⅱ(印象派からピカソまで)」を読んで見た。この「名画を見る眼」という本は以前からあったが、最近カラー版として再出版されたもの。やはり絵画の本はカラーで見たいので、早速買ってみた。ⅠとⅡがあるが、16世紀以前のヨーロッパ絵画はあまり興味がないので、Ⅱをまず読んで見ようと思った。また、本書はKindle版がない。久しぶりに紙の本を買ったが、やはりこの手の本はKindleではダメだろう。

著者は昭和7年生まれ、大学で美術史を研究し、パリに留学、文部技官、東大教授、国立西洋美術館館長などを経て、現在、大原美術館館長となっている。日本美術界の大御所なのだろう。

この本は、14人の画家を取り上げている。それぞれの画家の名前と誕生国、生存期間を書いておこう。

  1. モネ(仏、1840-1926、81才)
  2. ルノアール(仏、1841-1919、78才)
  3. セザンヌ(仏、1839-1906、67才)
  4. ゴッホ(蘭、1853-1890、37才)
  5. ゴーギャン(仏、1848-1903、55才)
  6. スーラ(仏、1859-1891、32才)
  7. ロートレック(スペイン、1864-1901、37才)
  8. ルソー(仏、1844-1910、66才)
  9. ムンク(ノルウェイ、1863-1944、81才)
  10. マティス(仏、1869-1954、85才)
  11. ピカソ(スペイン、1881-1973、92才)
  12. シャガール(露、1887-1985、98才)
  13. カンディンスキー(露、1866-1944、78才)
  14. モンドリアン(蘭、1872-1944、72才)

これを観て驚くのは、

  • よくこれだけの画家が同時期にでたものだ。クラシック音楽の作曲家も同じだが。1789年にフランス革命が勃発して王制が倒れて、既存の秩序が破壊された歴史の転換点だからだろうか。
  • 圧倒的にフランス人が多いが、クラシック音楽の世界ではそうでもないのが面白い。また、プロイセン、イギリス、イタリアがないのが興味深い。
  • 30代で亡くなった画家が3名(ゴッホ、スーラ、ロートレック)もいる一方、モネ、ピカソ、シャガールなどは長生きした。

この本を読んだ感想を述べよう

  • この本は250ページの比較的ボリュームの少ない本だが、内容的には類書に見ない素晴らしさがあった。これから絵画を勉強しようという初心者向けの写真付き入門書とは違う、内容の濃い、ある程度の知識のある人を対象とした本である。その意味で、絵画をある程度見てきた人が今一度、知識を確認するために読むのに適している本と言えよう。
  • 具体的には、それぞれの画家ごとに、著者が考える代表的な絵を2,3取り上げ、その絵の技術的な特徴をわかりやすく解説し、時の経過とともに起こった画風・様式の変化を説明している、そして、それらの歴史的背景などが書かれている。
  • 例えば、ルノアールの場合、彼は一時期印象派と接して色彩感覚、形態の輪郭線にとらわれない自在なタッチを体得したが、1880年代には、彼自身本質的には人物画家だったこともあり、印象派と決別して、アングルのような人物の堅い線描表現をするようになり、やがて色彩によって対象を肉付けして行く彼独特の様式を確立した、など。

さて、この本で取り上げられている絵であるが、美術館で実際に観たことがあるものも少なくない。その中で、写真が撮れたものから一つ、ニューヨーク近代美術館のピカソ「アヴィニョンの娘たち」を紹介したい。結構大きな絵であることがわかる。大きな絵画はその大きさを忘れないために、あえて人が写っているこのようなアングルで写真を残すことがある。

絵画好きにはお勧めしたい本だ。


映画「エリザベート 1878」を観る

2023年09月04日 | 映画

封切りされた映画「エリザベート1878」(2022、オーストリア・ルクセンブルク・ドイツ・フランス合作、監督マリー・クロイツアー、原題Corsage)をシネコンで観てきた。シニア料金で1,300円、客は20人くらいか、やはり女性が多かった。

1878とはエリザベートが40才になった年だ。原題Corsageはコルセットという意味。彼女が痩せてる姿を見せるため、細めのコルセットのひもをキツく締める場面が何回か出てくるので、それをタイトルにしたものか。邦題が全然違うので、どっちが良いのか。エリザベートは日本では宝塚のミュージカルなどで有名らしいので、コルセットとするよりはエリザベートの方がよいと判断したのでしょう。

この映画は、公式サイトを一部引用して説明すると、「ヨーロッパ宮廷一の美貌と謳われたオーストリア皇妃エリザベート(1837-1898、61才没)が、1877年のクリスマス・イヴに40歳の誕生日を迎えた。コルセットをきつく締め、世間のイメージを維持するために奮闘するが、形式的な公務に窮屈さを覚えていく。人生に対する情熱や知識への渇望、若き日々のような刺激を求めて、イングランドやバイエルンを旅し、かつての恋人や古い友人を訪ねる中、誇張された自身のイメージに反抗し、プライドを取り戻すためにある計画を思いつき・・・」というもの。

観た感想としては、やはり男性のためか、それほど感動しなかった。特に盛り上がるところもなく、ちょっと退屈した。そして公式サイトにある「ある計画」とはなんだったのか、これもよくわからなかった。ネタバレになるので言わないが、そんなにたいした計画ではないように思えた。また、最後の終わり方が史実とは異なると思った。

そもそも何でこの映画を観ようと思ったかだが、私の愛読している本に「わが青春のハプスブルグ」がある。この本の著者はジャーナリストの塚本哲也氏で、この本は塚本氏が若い頃、ヨーロッパ各地を駆け回って仕事をした時に得た体験記である。氏は音楽や映画に造詣が深く、体験記もその話題を中心に中欧の歴史と人物を語ったものであり、氏と同じ音楽や映画ファンとして折に触れて読み返している本である。その本の第1番目の章に「皇妃エリザベート、人形の家ノラの先駆者」がある。

この本を読むとエリザベートのことがよくわかるので映画を見に行く前に再読した。映画をいきなり観ただけでは当時の状況がよくわからない。氏の本を読むと、エリザベートはミュンヘンのバイエルン王国生まれ、父の侯爵が堅苦しい宮廷の付き合いを好まず、社交界から遠ざかり、自由気ままに生きた貴族だった。次女のエリザベートはこの父の血を最も強く受け継いだ。彼女は早くから夢想的な性格で、語学、絵画、詩の才能を見せ、礼儀作法など無縁の生活をし、野山を駆けまわる生活をした。父の侯爵と一緒に庶民に変装してお忍びで村の酒場などに出入りしていた。その彼女がウィーンのハプスブルグ家に嫁入りした、これは野生動物を檻に入れるようなもので、彼女の不幸のはじまりであった・・・

その後の彼女の人生が氏の本には書かれてあり、大変参考になるが、映画では時間的な制約もあり触れられないことも多かった。興味がある人はこの本も映画の前か後で読めば、より深く彼女を理解できると思う。氏が彼女をイプセンの戯曲「人形の家」のノラの先駆者と第1章のタイトル副題に書いたのは、ノラが女性の人格を認めない古くて封建的な社会に反抗して、妻や母である前に人間であるべきだといって、夫と四人の子供をおいて家出する女性解放の象徴的存在として書かれているのをエリザベートに重ねたためであろう。ただ、私はエリザベートはノラとは違う面も多いと思うが。

さて、主役のエリザベートを演じたのは、ヴィッキー・クリープス(43、ルクセンブルク)だが、今まであまり注目はしてこなかった女優だ。なかなか美人で良い感じの女優だった。今後注目していきたい。

女性向きの映画だと思った、が、ハプスブルグ家や彼女の人生に興味のある方は観てみるのも良いでしょう。

 

 


池袋に映画を観に行って(その2)

2023年09月03日 | 映画

(承前)

さて、今日池袋で観た映画は、最近改装された新文芸座の「トスカの接吻」(1984、スイス、監督ダニエル・シュミット、原題Il Bacio Di Tosca)だ。シニア料金1,100円、30人くらいは入っていたか。女性や若い人が結構来ていた。

この映画はミラノに実在する音楽家のための養老院“ヴェルディの家”を舞台に、そこに住む往年のオペラスターたちが全盛期を思い出して語り歌う姿を捉えたドキュメンタリーだ。

実は今年、藤田彩歌著「カーザ・ヴェルディ、世界一ユニークな音楽家のための高齢者施設」という本を読んで、本ブログでも取り上げたところだったが(こちら参照)、そのカーザ・ヴェルディに関連した映画があることを私が日頃よく拝見しているブログ「人生の目的は音楽だ!toraのブログ」で教えられたため、早速観に行ってきたものだ。

藤田氏の著書は、カーザ・ヴェルディが現在では高齢者とは別にミラノ市内の音大に通う学生を最大16名まで受け入れており、その若手音楽家の一人として入居した著者の体験談であった。それは、カーザ・ヴェルディがどういう考え方で運営されているのか、そこに住んでいる往年の歌手たちがどういう生活をしているのか、施設の中はどういう感じになっているのか、などを著者と歌手たちとの交流を通じて理解した経験をもとに書いているものであった。

今回観た映画「トスカの接吻」は藤田氏の著書のアプローチとは異なり、カーザ・ヴェルディに住んでいる往年のスターたちが映画監督などの撮影スタッフを前にして、往時を回想しながら元気に語り合い、歌う姿を放映するものである。映画では、1920年代のミラノ、スカラ座の花形オペラ歌手、サラ・スクデーリをはじめ、作曲家のジョヴァンニ・プリゲドャ、テノール歌手のレオニーザ・ベロン『リゴレット』を得意としたジュゼッペ・マナキーニなどが、往年の自信満々の表情で、それぞれの得意とする題目を披露している。

歌手の皆さんは、キチンと着飾り、背広を着て、かくしゃくとして元気で衰えない声を披露している。観ていて元気が出てくる。いつまでも元気でいてほしい。


(藤田氏の本から拝借)

さて、ミラノには一回だけ観光で行ったことがあったが、その時はこの施設があることをまだ知らなかった。ミラノ中心街からそう離れてないところにあるので訪問することもできたのに残念である。藤田氏の本によれば、週に一度、施設の一部(食堂やコンサートホール、教会など)を見学することができるそうだ。

なお、藤田氏の本には施設の写真などもある(上の写真)、これは中庭からみたもので天気も晴れている日だが、映画では自動車の往来が激しい目抜き通りに面した表玄関を映しており、季節も雪が残った時期だ、このイメージとの違いに驚いた。

ヴェルディファンやオペラファンなら観て良い映画だと思うし、できたら、映画とともに藤田氏の本も手に取ってほしい。

(完)


池袋に映画を見に行って(その1)

2023年09月02日 | その他いろいろ

一昨日、8月31日に池袋に映画を観に行ってきた。駅東口を降りると、西武デパートがストライキで閉館していた。シャッターが降りて、臨時閉館の告知が張り出されていた。1階正面には組合の方が大きな横断幕を掲げ、チラシを配り、行き交う人たちにストの正当性を訴えていて、テレビの取材なども行われていた。

新聞やテレビの報道しか知らない者としては、無責任なコメントできないが、経営者側は社員に対する事前根回しが不足していたのだろう、社員側も譲渡されると雇用の維持が確保されないと言うが、セブングループに残っても不採算部門の雇用は維持されないのではと感じた。また、ヨドバシカメラが百貨店の中に大きなスペースを占めることへの抵抗があるようだが、これも既にニトリやユニクロを百貨店内に入れている時点で同じ問題が起きていたのではないか、と思った。

戦後、百貨店は国民に西洋式の豊かな生活というライフスタイルを提案していたと思う。しかし、世の中が豊かになった後、次にどういうライフスタイルの提案をするのか、それが考えられていないような気がするし、すべてが中途半端な気がする。郊外型のショッピングモールとの違いはなんなのかわからない。

今、百貨店で一番人が入っているのはデパ地下と上層階のレストランだ。思い切ってデパ地下を地上2階か3階まで拡充させ、食堂フロアーをもっと増やす、その間にはさまれたフロアーは日本の高級で上品なものが好きな富裕層向けフロアーにして、外国人や日本人の富裕層が望む日本独自の良いものだけを売る、こういう思い切ったことができないのだろうか。

日本が誇る職人技、物作り、粋、簡素だが実は豊かで上質な生活スタイル、食文化など、実は世界で最も洗練され、サステナブルな日本人のライフスタイルを世界中の富裕層に提案するデパートを目指すのである。これからの世界の文化をリードするのは日本で、欧米のハンドバックや服、化粧品、貴金属などは一切扱わない。このくらい極端なことをやらないといけないのでは。

(その2)に続く