むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所 「月星人」抜粋⑥

2019-04-02 12:37:21 | 小説

 おれはある鉱石を薄く研磨して光に当てると、宇宙光線になることを発見した。だいだい色の光線だ。宇宙光線を物体へ照射した場合に、物体の重量が半ぶんになって、すぐ横に同じ物体が出現する。最初は発光半導体の特許を調べようと思っていた。しかし金属を腐食させる効果があるような、気がして銅貨に照射してみると、二枚になっている。おれは地球と金星が同じぐらいの大きさであることから、古代の太陽に、この、鉱石のかたまりが衝突して、古代の地球へ宇宙光線を照射したために金星ができたと思った。鉱石に光を当てると実際は、光線というよりは色つきの透明包装紙に、光を当てたような状態になる。きっとまだらな光でも効果があるのだろう。二枚になった銅貨は光の反射が、黒っぽくなったような感じがする。固さは同じようだが金属原子の水準で、半ぶんの密度になっているようだな。ある鉱石は海岸で拾った黒っぽい変成岩だ。見つけたときは火打ち石かと思ったが、かなづちでたたくと不自然に乾いた音がする。半導体部品の、原料になる未発見の物みたいな雰囲気があっておれは研削盤で削って研磨した。おれは鉱石の使い道を考える。安い腕時計で試して同じ物が、出現したがどちらも動かなくなっていた。一万円札じゃ半紙みたいになるだろう。金貨なら別物だ。おれは「鉱石は隕石なのかも知れない」と思いながら二枚の銅貨をもういちど計りで量る。半ぶんじゃない。やった。もとの重量で二枚ある。一時間くらいでもとの重量になるわけだ。おれは古銭店で十万円金貨を買ってきて五〇枚ほどつくる。五秒ぐらいでもうひとつ出現するから、今日じゅうにあと千枚つくって明日あちこちの銀行で両替しよう。おれは作業をやりながら、金星のことを考えた。金星が古代の地球と同じなら、地球人のような人間がいるかも知れない。地球よりも科学が発達していて地球から観測できないように有色気体の雲を発生させている可能性もある。そのとき「それ私のよ」と言う声が聞こえた。しばらくして「こちらは時空警察です。ゾロマイト鉱石で金貨を増やしてませんか」と言う声がする。おれは時空警察なら地球人だから心配ないと思った。しかし金星人と目が合う。目が「そちらに出現した物体と同じ物体がこっちで消失してます」と言っている。金星人が瞬間移動してきて左手で、鉱石をつかんで消えた。あとには光源と十万円金貨が一枚だけある。