むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所 太平洋戦争概説②

2019-04-09 20:08:56 | 小説

 仮想通貨の注意点がわかった。IQが平均以下になると幽霊(死んだ人間の、生前の声)の声を少し聞いただけでからだが動かなくなることだ。金融機関の人間はIQを高めてお客様へ、死んだ人間のお金を出さないようにしている。

 

 アッツ島の戦い

 昭和一六年未明。アッツ島(千島北東にあるキスカ島と近接した島)にて。地熱発電所を建設中。自称内科医で、本当は外科医の伊藤とおれで医療レセプトをやっている。伊藤の口ぐせは
「読み書きができないと知能指数は平均の一〇〇を超えない」だ。作業員はいくつなのか伊藤に聞くと、
「九〇ぐらいだ」と答えて、
「ダイナマイトを使うときは、一〇〇を超えなければならない」と言う。おれは作業員の、女の声を毎日記録して、爆破作業のときに、一〇〇を超えるように、書類をつくる。作業員は朝鮮からの労働者が多くて戦争で勝った場合の報奨金を、大きな声で計算している者が数名いた。坑道を掘っていると魔石(模様のある硬い石で砥石に使えて、映画のシーンみたいに大陸をかいま見ることができる)がよく出てくる。疲れるなと思ったら色違いの石が出てきた。おれは特にきれいな石の表面を毎日磨く。
 一二月に入ると坑道の枝道を突き抜けて銃座が置かれる。山崎大佐(アッツ島の指揮官)がやってきた。米国と戦争が始まったようだ。山崎大佐に、キスカ島の仕事をしてくるように言われた。山の斜面をくりぬいて、洞窟型の飛行場を造っている。ボール紙でできた海岸砲を米軍の偵察機に、見えるように前へ出す。声の大きいサル(血液型がO型の将兵)が、巨大な海岸砲の図面を広げて、構造や性能を読み上げる。
 昭和一八年未明。キスカの飛行場が完成して今度はアッツ島で飛行場を造り始めた。

 五月未明。幌延基地(日本軍の前線基地)から連絡が入り
「米軍空母二隻、戦艦八隻がそっちへ向かってる」と言う。
「対空砲の照準を聞き出せ」南雲(有名な南雲忠一中将とは別人で南雲を名乗る三〇代前半の指揮官)の電撃指令だ。アッツ島に艦隊がやってきた。囚人パイロットが航空母艦を撃沈させる。旋回速度がまるで違う。二隻目の航空母艦は舵が故障して浮いているだけだ。電撃指令に誘導された囚人パイロット五機で戦艦を全部投降させた。全員上陸させてから投降書類をつくる。伊藤に南雲のIQはいくつか聞くと、
「一五〇以上必要だ」と言う。明け方に捕虜のレセプトが終了。輸送船が到着するまで仮眠だ。
 早朝に飛行機がこっちへ向かって飛んでくる。真上で旋回してから二〇mほどの舗装した部ぶんに、すご腕の囚人パイロットが着陸させた。後部に南雲が乗っている。黒々とした長髪でさんまのくさった目をしていた。彼は山崎大佐とぶっきらぼうに会話してから米兵の埋葬を手伝っている。
「ミッドウェーの穴埋めだ」ミッドウェーの説明が必要かな。
「ハワイ奇襲やミッドウェー大敗を知らないやつは日本人じゃない」キスカのサルと二人で、囚人パイロットが操縦していた飛行機の向きを変えた。南雲は宇宙人と一体化していてIQが二〇〇ぐらいあるようだ。
 家に帰ると、柔道の道場が捕虜収容所になった。みやげが捕虜三〇名とアッツ桜の切り株だ。捷号作戦の召集令状をもらった。集合場所はサイパン(グアム、テニアンに近接したマリアナ諸島の島)。

  つづく