むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所 太平洋戦争概説⑦

2019-04-13 14:22:42 | 小説

 前回までのあらすじ。サイパンの戦い九日目に、南雲がH.スミスと島の東側を、中立地帯にする協定を結んだためとりあえず海水蒸留装置の安全が確保された。


 一〇日目朝。

 竹田が東側で待つ。トラック六台と年配な方の米軍医が来た。

米軍医 海水蒸留装置がこの近くにあるんだろ(イギリス人カメラマンで同時通訳している)。

 曲射砲部隊の一番強いやつをみせた。

米軍医 午前九時まで死体回収。そのあと非正規傭兵。

 米軍医から長さ二mの室内用水道管をもらった。なにか書いてある。タラワ、クワゼリン、ニューギニア。(タラワとクワゼリンは日本軍が玉砕した島でニューギニアは不明)。

 洞窟内でカメラの前に曲射砲部隊が集まってVサインをしている。

長野君 百合子(七三一部隊からきている女性特務兵)の写真を撮ろうとした軍神一名が突然死しました。

M 貴重品は三番トーチカ(暗号)だ(霊体を物に置きかえる)。

 午前九時。タッポーチョ山に猛獣のような兵士たちが上がってきた。おとりがすばしこく動いて銃口を探す。精鋭部隊だ。正面に一〇〇人、西側面に二〇〇人。東側は中立地帯だ。

「正面に曲射砲部隊。西側面に小銃部隊っ」

米軍医 午後から新兵の訓練。

M ちびがどっちか確認するんだ。

 小銃使いが精鋭部隊を撃つ。

「出身国と組織名を聞くんだ」山の側面と正面が片づいた。もうひとりの高年な陸軍将校が大砲を目玉に運んでいる。

「戦車が通過したあとの通行帯を砲撃して。被弾した部分が機銃陣地に見える。それとあそこの平らな場所を穴だらけにすれば近づけない」

長野君 上板と下板間の仕切り岩には、穴が複数あって有利に戦えます。

「今朝の水道管をポイントM付近に立てて」

長野君 西側はタッポーチョ山から北に向かって、M~M五の区画にわかれててコンクリートポールが建ってます。文章が出てきました。

 

 昭和一九年六月。アメリカ軍のトーマス・ジュライド少尉二二歳はサイパン島で戦っていた。その日はハワイ向けに「軍部がクーデターを起こして、内乱が発生してることを日本人のせいにしてる」と放送している電波発信施設を破壊する任務だ。トーマスは四名の破壊工作部隊を率いて、海岸付近のコンクリートポールに電線などがついてないか調べていた。トーマスは一〇代の頃に、イタリアマフィアにあこがれて、支配下の組織に入る。移民を相手に「英語がぺらぺらとしゃべれるようになる薬だ」と言って、麻薬を密売していた。二〇歳のときにトーマスが密売した麻薬で、死者が出たために逮捕されて死刑判決を受ける。獄中でトーマスは古代ローマの、弁論家の必殺わざに「アーアーアー」があるかをいつも考えていた。相手の真剣な語りに対して「そんなことばを聞く必要は、ない」と念じながら、「アー」と叫ぶ。そういう弁論家が存在していたと感じながら勝率を想像した。戦争が始まって軍に招集されたトーマスは、ジャップを撃ち殺せば自ぶんが戦死したことになって、自由の身になれると考える。山に立てこもるジャップはいずれ食料が尽きて、投降者が続出してそれを撃てばよいと考えていた。日本軍が構築していた高さ三mほどの白いコンクリートポールは全部で五か所確認される。最初のコンクリートポールからは電波が発信されておらず、トーマスの部隊は二つ目に向かう。海岸付近は平坦な地形であったが、ジャップが潜んでいる可能性は無数にあった。ジャップの攻撃を回避する方法はただひとつ「停止しないこと」である(停止すると威嚇するように撃ってくる)。ゆっくりでも動いているときは撃ってこないことが知られていた。二つ目のコンクリートポールは、中央から二本のケーブルが地面につながっている。トーマスはポールの反対側をゆっくりと見た。そこには黒いペンキで「AーAーAー」と書いてある。トーマスは古代ローマの弁論家と、ジャップとの関係を考えて立ちどまった。そのとき銃声がして、日本兵の小銃使いが、撃った弾がトーマスの頭部を貫通する。

 

 新兵一五〇〇人と戦車一〇〇台がきている。午後三時。太陽が西に傾いてきた。戦車が全部被弾。機銃を持った囚人トーチカが、弾薬の箱を片手に持って歩いていった。小銃使いと陸軍の特殊衛生兵Mが出ていく。

「ギャングの銃撃戦に軍隊が出動。全員射殺」死んだらどうする。

「密造酒の売人を撃つんだ。自由の女神を、悪く言うやつを撃て。おれのことを、ちびって言ったやつを撃つんだ」

「生存率二わり。ちびがいる集団。他八わりは死亡」

囚人トーチカが「了解」と言う。

長野君 文章が出てきました。

 

 昭和一九年六月。アメリカ海兵隊ナット・コールマン中尉三七歳はサイパン島で戦っていた。ナットは身長が一五〇㎝で「ちびおじさん」と呼ばれている。ナットは志願兵だが、囚人兵が別人のふりをして、帰国する方法があることを不安に感じていた。囚人兵はいつも自ぶんと体型が似ている志願兵を探して、死に神(米国の死に神は赤ん坊)を観察しているようだ。ナットは志願兵二〇名を連れて日本軍の陣地に向かっていた。後衛の囚人兵二〇名(別部隊)を誘導してから、志願兵は日本軍の捕虜になるためである。日本兵とのサインは、「ちびがいる集団」のためナットを先頭にして、極端に密集しながら進軍していた。やがて日本兵との合流地点まで二〇〇mほどに、近づくと囚人兵たちが囲むように合流してくる。腕をまくって、さそりの入れ墨を見せている男が「誰かと待ち合わせをしてるのか」とナットに話しかけてきた。ナットは立ちどまって小銃を構えながら「ジャップとだ」と、言うとナットの死に神が、「シューティング。ジャップ」と叫ぶ。ナットの部隊は走り出した。囚人兵たちは停止したままだ。岩陰から出てきた日本兵の小銃使い数名がすれ違いに、囚人兵に向かって走っていく姿が見えた。不規則な銃声が人数ぶん聞こえる。しばらく走ると英語のサインボードを持った日本人女性が立っていた。ナットの部隊は全員捕虜になる。

四七四三の悪魔 「米国の死に神」は東京大空襲で出てくるわ。

 

 囚人トーチカ五人で二〇〇人ずつ片づけた。定量の倍。しかも斬り込み装備なし。

長野君 囚人トーチカの保険が切れました。以後斬り込みと小銃使いだけ記述します。

M 死亡一五五一名、捕虜四四九名。二〇人腰痛になった。少なくしてくれ。

米軍医 明日東側で。

   つづく

 解説。米国本土は一九二〇年~一九三三年まで施行された禁酒法によって、密売などを原因とした犯罪が多発。禁酒法がなぜ施行されたかは、「未来が見える鏡」の噂が広まって、政府が調査するために導入されたと考えられる。