キング・クリムゾンの来日公演が決定した。今年11月下旬から12月初旬にかけて開催される。今回の開催地は東京、名古屋、大阪の大都市圏のみだが、前回の来日公演が大サービスの約1ヶ月に及ぶ日本縦断であったことを考えると、私のような積年のファンからすれば、これでも十二分に有難い早めのクリスマスプレゼントだ。2014年に再結成されて以降、現編成で日本には2015年と2018年に来日してくれたわけだが、その最高過ぎるほどのライブは絶賛の嵐であった。今回も首を長くして彼らが再訪する冬の到来を心待ちにしたい。
現段階で発表されている予定だと、11月27日と28日の土日が東京国際フォーラム、30日が名古屋市公会堂、12月2日と3日が大阪フェスティバルホール、そしてラストの5日が再び東京に戻って立川ステージガーデンという全6公演である。また今はまだ夏であり、今後の展開では追加公演も予想されるが、事前に日本とオーストラリアをセットにしたツアーを計画中という情報もあった為、日本公演後に南半球へ移動して今年のツアーを締めくくるのかもしれない。だとすれば追加公演が発生したとしても少ないのではないか。
また全公演の半数が土日にセッティングされている為、2018年の日本縦断で感動した多くの人々が、土曜と日曜にスケジュールが組まれた東京へ駆けつけると思われる。そして今回のコンサートでは、Music is our friends !がキャッチコピーになっており、この素晴らしい謳い文句から連想するなら、またしても既成概念を覆すキング・クリムゾンに出会えるに違いない。彼らの音楽活動は既に半世紀を超えており、メンバーの高齢化も著しく、特にロバート・フリップとトニー・レヴィンとメル・コリンズはもう70代半ばだ。しかし高齢のミュージシャンだからこそ表現できる貴重な音世界が存在することもまた事実である。古今東西、いつでもどこでも音楽は私たちの友人であり続けたという真実を、まざまざと深く感じさせてくれる演奏は、やはり人生の終焉を見据えてもなお音楽活動を地道に継続中の彼らだからこそ可能なのだ。
今回来日するメンバーはロバート・フリップ、トニー・レヴィン、メル・コリンズ、バット・マステロット、ジャッコ・ジャクスジク、ギャビン・ハリスン、ジェレミー・ステイシーの7人だが、これは前回の来日公演に参加していたビル・リーフリンが鬼籍に入ってしまったことによる。誠に残念なことではあるが、コロナ禍のパンデミックが発生する前年、つまり2019年のキング・クリムゾンの北米と南米、及び欧州公演でも、彼は体調が優れずに参加していなかった。つまり2018年の来日公演が、キーボードを担当したビル・リーフリンにとっては人生最期のステージだったわけだ。私は大阪のグランキューブのコンサート会場で彼が弾いた「クリムゾンキングの宮殿」終盤のコーダでの物悲しい調べを今でも克明に思い起こせる。
キング・クリムゾンをライブ体験した人々の多くは、一生消えることのない記憶を心に焼き付けている。2017年に他界したジョン・ウェットンは1970年代にヴォーカルとベースを担当し、名曲「スターレス」を歌ったことでも有名だが、1974年にキング・クリムゾンが解散してから何年も経過した後に、旅先のオランダでファンの1人から丁重に挨拶され、1970年代のアムステルダム公演の演奏を感謝されたという。しかもそのような出会いが生前に数多くあったそうだ。そして興味深いのは、ライブ体験をしたファン同様に、ステージで演奏していたジョン・ウェットン自身にも当時の記憶が歴然と残っていたことだ。事実、彼はこうした貴重な機会を、あの日あの時の魂にまた再会できたと、20世紀に述懐している。
これはジョン・ウェットンに限らず、キング・クリムゾンに在籍したミュージシャンの殆どがそのような経験があるように思える。それだけ彼らは、スタジオ録音においてもライブにおいても誠実に音楽と向き合ってきたのだ。そしてこのバンドに特徴的なのは、ジョン・ウェットンは言うに及ばず、ヴォーカル専任のミュージシャンが不在にも関わらず、歌唱力の優れたベーシストやギタリストが、文学的な詞を歌ってきたことである。これは実力派のオペラ歌手や日本の演歌歌手のパフォーマンスにおいて、音楽への愛が十二分に感じられても、意外なことにその音楽より音楽を表現する歌い手の存在感が際立ってしまうのとは対照的だ。それはロバート・フリップがこのバンドには、バレーにおける主役たるプリマドンナがいないと明言していることからも理解できる。
つまりキング・クリムゾンの場合、バンドの結成当初からやはり主役はミュージシャンではなく音楽であった。さらにその指針を決定付けたのは、ジェイミー・ミューアが参加した「太陽と戦慄」を制作した時期だ。そして音楽そのものに生命があると感じる瞬間は、もしかすると楽器演奏の表現の方が、歌や踊りよりも強いのかもしれない。これはプロのミュージシャンではなくとも、楽器を弾いた経験のある人ならば、朧げながら身に覚えがあるはずだ。人は自ら声を発する時、自我を明確に認識できている。しかし楽器を弾く時というのは、自我はもっと曖昧で控え目だ。特に演奏に没入しだすとさらにこの傾向は強まる。
ここでこのブログを書いている最中に、興味深いニュースを知った。これはキング・クリムゾンのジャッコ・ジャクスジクが受けたインタビュー記事の情報だが、どうやら米国公演は今年が最後になるだろうという内容である。そしてそこから推測できるのは、キング・クリムゾンとしてのライブ活動はこのツアーで終了する可能性が高いということだ。それを裏付けるように、メンバー最高齢のロバート・フリップとトニー・レヴィンには、広大なアメリカ大陸を移動するツアーは身体的な負荷が大変なものであることも述べられている。
勿論、今年来日する7人のメンバーは仮にキング・クリムゾンとしてのライブ演奏が無くなったとしても、死ぬまで音楽と共に生きてゆくような人々だ。実際、このジャッコ・ジャクスジクのインタビューでは、ライブ演奏が不可能になった場合、スタジオアルバムの制作や過去のライブ音源の編集など、キング・クリムゾンの活動は今後も継続すると述べられている。ファンにとっては大変安心できる話だ。
今回の来日公演も前回同様に主催はクリエィティブマンプロダクションだが、「音楽」とは何か、その偉大さを説くような最高峰のバンド・パフォーマンスは見逃せない、と最大級の賛辞を贈っている。その言葉通り、これは本当に見逃せない機会だ。ましてやキング・クリムゾンのライブ活動が今年で最期になってしまうのならば、なおさらであろう。トニー・レヴィンのロード・ダイアリーというWEBページを見ると、現在米国ツアー中のキング・クリムゾンの近況が写真で確認できるのだが、ここを拝見する限り、メンバー全員はコンサートを心底楽しんでいるようで、とても元気そうである。コロナ禍の中、アジアの東の果ての島国に御足労下さり感謝感激雨霰だが、コンサートへ足を運ぶ私たちもワクチンを接種し万全の備えで、最高の音楽を届けてくれるキング・クリムゾンのメンバーとスタッフを出迎えたい。
現段階で発表されている予定だと、11月27日と28日の土日が東京国際フォーラム、30日が名古屋市公会堂、12月2日と3日が大阪フェスティバルホール、そしてラストの5日が再び東京に戻って立川ステージガーデンという全6公演である。また今はまだ夏であり、今後の展開では追加公演も予想されるが、事前に日本とオーストラリアをセットにしたツアーを計画中という情報もあった為、日本公演後に南半球へ移動して今年のツアーを締めくくるのかもしれない。だとすれば追加公演が発生したとしても少ないのではないか。
また全公演の半数が土日にセッティングされている為、2018年の日本縦断で感動した多くの人々が、土曜と日曜にスケジュールが組まれた東京へ駆けつけると思われる。そして今回のコンサートでは、Music is our friends !がキャッチコピーになっており、この素晴らしい謳い文句から連想するなら、またしても既成概念を覆すキング・クリムゾンに出会えるに違いない。彼らの音楽活動は既に半世紀を超えており、メンバーの高齢化も著しく、特にロバート・フリップとトニー・レヴィンとメル・コリンズはもう70代半ばだ。しかし高齢のミュージシャンだからこそ表現できる貴重な音世界が存在することもまた事実である。古今東西、いつでもどこでも音楽は私たちの友人であり続けたという真実を、まざまざと深く感じさせてくれる演奏は、やはり人生の終焉を見据えてもなお音楽活動を地道に継続中の彼らだからこそ可能なのだ。
今回来日するメンバーはロバート・フリップ、トニー・レヴィン、メル・コリンズ、バット・マステロット、ジャッコ・ジャクスジク、ギャビン・ハリスン、ジェレミー・ステイシーの7人だが、これは前回の来日公演に参加していたビル・リーフリンが鬼籍に入ってしまったことによる。誠に残念なことではあるが、コロナ禍のパンデミックが発生する前年、つまり2019年のキング・クリムゾンの北米と南米、及び欧州公演でも、彼は体調が優れずに参加していなかった。つまり2018年の来日公演が、キーボードを担当したビル・リーフリンにとっては人生最期のステージだったわけだ。私は大阪のグランキューブのコンサート会場で彼が弾いた「クリムゾンキングの宮殿」終盤のコーダでの物悲しい調べを今でも克明に思い起こせる。
キング・クリムゾンをライブ体験した人々の多くは、一生消えることのない記憶を心に焼き付けている。2017年に他界したジョン・ウェットンは1970年代にヴォーカルとベースを担当し、名曲「スターレス」を歌ったことでも有名だが、1974年にキング・クリムゾンが解散してから何年も経過した後に、旅先のオランダでファンの1人から丁重に挨拶され、1970年代のアムステルダム公演の演奏を感謝されたという。しかもそのような出会いが生前に数多くあったそうだ。そして興味深いのは、ライブ体験をしたファン同様に、ステージで演奏していたジョン・ウェットン自身にも当時の記憶が歴然と残っていたことだ。事実、彼はこうした貴重な機会を、あの日あの時の魂にまた再会できたと、20世紀に述懐している。
これはジョン・ウェットンに限らず、キング・クリムゾンに在籍したミュージシャンの殆どがそのような経験があるように思える。それだけ彼らは、スタジオ録音においてもライブにおいても誠実に音楽と向き合ってきたのだ。そしてこのバンドに特徴的なのは、ジョン・ウェットンは言うに及ばず、ヴォーカル専任のミュージシャンが不在にも関わらず、歌唱力の優れたベーシストやギタリストが、文学的な詞を歌ってきたことである。これは実力派のオペラ歌手や日本の演歌歌手のパフォーマンスにおいて、音楽への愛が十二分に感じられても、意外なことにその音楽より音楽を表現する歌い手の存在感が際立ってしまうのとは対照的だ。それはロバート・フリップがこのバンドには、バレーにおける主役たるプリマドンナがいないと明言していることからも理解できる。
つまりキング・クリムゾンの場合、バンドの結成当初からやはり主役はミュージシャンではなく音楽であった。さらにその指針を決定付けたのは、ジェイミー・ミューアが参加した「太陽と戦慄」を制作した時期だ。そして音楽そのものに生命があると感じる瞬間は、もしかすると楽器演奏の表現の方が、歌や踊りよりも強いのかもしれない。これはプロのミュージシャンではなくとも、楽器を弾いた経験のある人ならば、朧げながら身に覚えがあるはずだ。人は自ら声を発する時、自我を明確に認識できている。しかし楽器を弾く時というのは、自我はもっと曖昧で控え目だ。特に演奏に没入しだすとさらにこの傾向は強まる。
ここでこのブログを書いている最中に、興味深いニュースを知った。これはキング・クリムゾンのジャッコ・ジャクスジクが受けたインタビュー記事の情報だが、どうやら米国公演は今年が最後になるだろうという内容である。そしてそこから推測できるのは、キング・クリムゾンとしてのライブ活動はこのツアーで終了する可能性が高いということだ。それを裏付けるように、メンバー最高齢のロバート・フリップとトニー・レヴィンには、広大なアメリカ大陸を移動するツアーは身体的な負荷が大変なものであることも述べられている。
勿論、今年来日する7人のメンバーは仮にキング・クリムゾンとしてのライブ演奏が無くなったとしても、死ぬまで音楽と共に生きてゆくような人々だ。実際、このジャッコ・ジャクスジクのインタビューでは、ライブ演奏が不可能になった場合、スタジオアルバムの制作や過去のライブ音源の編集など、キング・クリムゾンの活動は今後も継続すると述べられている。ファンにとっては大変安心できる話だ。
今回の来日公演も前回同様に主催はクリエィティブマンプロダクションだが、「音楽」とは何か、その偉大さを説くような最高峰のバンド・パフォーマンスは見逃せない、と最大級の賛辞を贈っている。その言葉通り、これは本当に見逃せない機会だ。ましてやキング・クリムゾンのライブ活動が今年で最期になってしまうのならば、なおさらであろう。トニー・レヴィンのロード・ダイアリーというWEBページを見ると、現在米国ツアー中のキング・クリムゾンの近況が写真で確認できるのだが、ここを拝見する限り、メンバー全員はコンサートを心底楽しんでいるようで、とても元気そうである。コロナ禍の中、アジアの東の果ての島国に御足労下さり感謝感激雨霰だが、コンサートへ足を運ぶ私たちもワクチンを接種し万全の備えで、最高の音楽を届けてくれるキング・クリムゾンのメンバーとスタッフを出迎えたい。