4年ぶりにホワイトハウスに返り咲いたトランプ大統領は、その就任式の演説でアメリカの黄金時代が今からはじまると明言されているが、実に彼らしい大言壮大語である。
しかし21世紀も今年でその4分の1を過ぎようとしているわけだが、20世紀が米国の世紀と形容されたほど、米国が文明の先頭を走っていた時代は、まだまだ余裕で継続しているようにも思われる。それを象徴するのは、今回の就任式において、政界の大物たちに引けを取らないほどの存在感で、ズラリと顔を揃えたGAFAMのテック企業トップの面々だ。ただ、こうした先端技術の邁進や新興の巨大企業の成功の影で、酷い格差に苦しむ多くの貧困層の人々がいることを忘れてはならない。
そして新しい大統領が標榜した黄金時代とは、超大国においてささやかな幸福にも手が届かず見捨てられているような人々も、幸福を実感し享受できるような社会の到来を意味するのではないか。少なくとも劇場型の選挙アピールに酔わずに、トランプ大統領に投票した有権者は、政権が野党から与党に変わることで日常生活の改善をシンプルに望んでいるはずである。こうした現象も、日本がほほ延々と自民党が与党の政権を維持している姿に比べると、日本も米国も共に民主主義の法治国家でありながら、米国社会の方が日本社会よりも、民主主義が正常に機能しているのは間違いない。
今回の就任演説でアメリカ•ファーストしか視野に入っていない内容は、ここではコメントを差し控えるにしても、以下の言葉には堅実さと賢明さを含蓄した決意を強く感じた。
「平和の使者であり団結を促す人物でありたい」
この声明で、トランプ大統領は「私にとって最も誇らしい遺産は、平和の使者であり、団結を促す人物であることだ。それが私の目指す姿であり、平和の使者であり、団結を促す人物でありたい」と述べている。
遺産という言葉には、メディアで批判されているノーベル平和賞狙いという見方もあるかもしれないが、ここは暗殺未遂にまで遭遇した人物の素直な心情の発露だと解釈したい。そしてここ数日の間に、トランプ大統領は産油国で構成されたOPECに対し、原油価格の引き下げを要求するとも述べている。これは原油価格の下落によりウクライナ戦争が終わる可能性が強まるからだ。また馬鹿げた戦争をやめろとも発言していた。
トランプ大統領は力による平和を信じて疑わないタイプだと思われるが、戦争という選択肢を避けようとする姿勢は感じられる。つまり戦争というハイリスク•ハイリターンの路線は、中長期的には国家経済にとって失敗しか招かないという事実を、過激な言動とは裏腹に、企業経営者でもある観点から熟知しているのではないか。
ここは一つ、日本政府は力による平和ではない、世界で唯一の被曝国である日本の独自な立ち位置を明確にした、日本国憲法や非核三原則といった理念を、日米外交の場で積極的に提唱してはどうか。無論、この理念が世界平和の為の団結にとっては欠かせないものであり、国際政治の場でも現実的に役立つことを丹念に説明してだ。その例をあげれば被団協の活動が核戦争の抑止に貢献した事実はもう自明の理であろう。この大統領に3期目はもうなく、高齢でもあることを鑑みると案外、聞く耳は持っていると思う。
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