よろずのモノ語り(『近代建築撮影日記』別館)

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宮川泰先生の音楽-宇宙戦艦ヤマト-【その1】「想人」を聴き比べる

2018年06月09日 16時46分21秒 | 宇宙戦艦ヤマト

2018年5月5日は忘れられない日になりそうだ。
4時間にも渡り、ヤマト音楽だけで構成された『ラジオスイート 宇宙戦艦ヤマト』が放送されたからだ。

以来、ヤマト音楽ファンの血(というより宮川マニアの血)が騒いで仕方なく、
宮川泰先生と宇宙戦艦ヤマトの音楽について語ってみたいと思うようになった。

しかし音楽学と言うのか、楽譜を読んだり、そういう知識が全く無いため的を得た表現は出来そうにない。
特にメロディーについての分析能力は無く、編曲についての記述が大半になると思う。
泰先生はアレンジャーとしての手腕が傑出しており、自分自身もその編曲に魅了された一人である。
泰先生の楽曲を聴きたいがためにレコードやCDを山ほど聴いたが、
自分自身が愉しい、面白いと感じ、先生の楽曲にはまった原因はその編曲によるものだと思う。
もちろん、メロディーの美しさにも屈指の物があるのだが、
何故美しい?どういう構造のメロディーか?ということはさっぱり分からない。
感性で美しいメロディーと感じる事は出来るが、自分にとってはそれ以上でもそれ以下でもないので
メロディーに関しては「美しい」以外どうにも言い表す事は出来ない。
メロディー分析を期待される方には参考になる内容ではないと思いますので、悪しからずご了承ください。

更に、使用楽器の音を正確に聞き分けることも出来ない。
編曲について語るには、ここでこの楽器がこういう音で演奏している、ということを文章表現しなくてはならないと思うが、
楽器名を間違えたり、不明のまま話を進めることも多々あると思う。
使用楽器名が明確に分からなくても、こういう音で編曲しているという事が伝われば話は成り立つという前提で、
このような場合も、そのまま話を進めさせていただく。


宮川泰先生と宇宙戦艦ヤマトの音楽が好きで好きでたまらない音楽素人が、
音の魔術師と云われる泰先生の編曲の魅力を皆さんに伝えたい、という一心で書いてみた、いう感じでしょうか。
駄文乱筆長文(三拍子揃った悪文です(汗))ながら、お読みいただければ幸いです。


【凡例】
曲名「」
アルバム名・作品名など『』
曲名、アルバム名は現在最新の『YAMATO SOUND ALMANAC』シリーズに準拠します。
失礼ながら、人物名は基本敬称略とします。

なお、音楽的知識が希薄なため、音楽用語等はネットで調べながら書いています。
更に、使用楽器は素人の耳で聴いて判断していますので間違いがあると思います。
間違いや、更に分かりやすい表現方法など有りましたらご指導いただければ幸いです。



『ラジオスイート 宇宙戦艦ヤマト』の核ともいえる企画が「聴き比べ」だった。
以来、私も聴き比べに凝り始めている。
ヤマトは、その長い歴史の中で市販された音源の豊富さは日本のみならず、世界的に見ても稀有なレベルであろう。
音源の豊富さ故にサンプルを揃えることも可能で、聴き比べはヤマトならではの愉しみ、いや、醍醐味とも言えよう。
そこで、恥ずかしながら『宮川泰先生の音楽-宇宙戦艦ヤマト-』と大きく銘打ったブログシリーズの1回目は「聴き比べ」にした。
特に、音の魔術師といわれた泰先生の編曲について分析してみたいと思う。


今回は2202でもリアレンジされ、『さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち』で名曲との誉れ高い「想人」を選んでみた。

聴き比べたのは以下の通り。
1978年の『さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち』&『宇宙戦艦ヤマト2』のBGM、音楽集より
1.「想人 (M-72B[5])」(オールナイトニッポン『さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち』使用BGM)『YAMATO MUSIC ADDENDUM』
2.「永遠の生命 (M-65)」『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち BGM集』
3.「永遠の生命 (M-66A)」『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち BGM集』
4.「想人 (おもいで)」『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち 音楽集』
以上、宮川泰先生 作・編曲のオリジナル楽曲。

それから40年を経た『宇宙戦艦ヤマト2202』より
5.「想人の記憶 (スキャット)」『宇宙戦艦ヤマト2202 オリジナル・サウンドトラック vol.1』
父泰先生の楽曲を息子 彬良さんが編曲。

では、聴き比べ開始!
音源をお持ちの方は、聴きながらお読みいただけたらと思う。

1.「想人 (M-72B[5])」
全編に渡り川島和子のスキャットが主旋律を唄い、ピアノと弦楽器が伴奏するという形。
このバージョンが、スキャット曲である「想人」の基本形だと仮定し、最初の曲に選んだ。

「無限に広がる大宇宙」の「アー アー」という澄んだ声と同一人物とは思えない、
少しハスキーでため息のような「ハーァ アー」という哀愁を帯びたソロ・スキャットで始まる。
この、哀愁を帯びたスキャットこそが「想人」という曲のプロトタイプだと思う。
ソロ・スキャットに続きピアノの伴奏が加わり、
そしてチェロ、バイオリン(またはビオラ?)、コントラバスっぽい低音の伴奏も加わり、
更に、和音で表現されたバイオリン主旋律も加わり、楽曲の最高潮を迎える。
「ボレロ」のようにだんだんと華が添えられていく感じで構成楽器が増えていく。
そして、それらの楽器が絡み合いながら静かに終了する。
オーソドックスな構成ながら、スキャットを引き立てる編曲だと思う。

2.「永遠の生命 (M-65)」
スキャットは無く、楽器のみで演奏されている。
バイオリンの主旋律とピアノの伴奏で始まる。
次にピアノの主旋律と伴奏、そこにバイオリンがバックコーラスのように和音で伴奏を付ける。
楽器の役割を交代しながら聴き飽きさせることなく、サビに向けて少しづつ盛り上げていると思う。
そして、0:53(演奏開始後53秒)頃からがこの曲のサビだ。
主旋律はバイオリンの和音表現、伴奏はピアノ、更にバイオリン、チェロ(もしくはビオラ?)の音を主旋律にハモらせるように加えている。
数えきれないほどの音が重なりつつも、大変美しく響き合う泰先生の魔術的な編曲を聴くことが出来る。
このように主旋律をバイオリンの和音表現で聴かせるのは、泰先生の編曲で最も美しく響く部分のひとつだ。
この部分は前後に比べて音の多さ・美しさが突出しており、泰先生の「やり過ぎる」という特徴も出ていると思う。
(※泰先生、編曲だけでなく紅白「蛍の光」の指揮でも分かるようにあらゆる面で「やり過ぎる」のが持ち味だと思う。
そこを玉に瑕と思われる方もあるかもしれないが、それこそが泰先生の本質なんだと思う。
編曲に関しては、音を重ね過ぎる、騒がし過ぎる、激し過ぎる、忙し過ぎる、速や過ぎる、美し過ぎる等、先生の「やり過ぎ」は枚挙に暇ない)
個人的には、今回聴いた5曲で一番好きなのはここ。パイ生地のように幾重にも重なった音が本当に美しく響く。
パート2・26話の古代と雪が寄り添い歩くシーンで初めて聴いて惚れ込んだのだった。
とにかく、泰先生の「やり過ぎ」な編曲が好きなのである。
最後に初めと同じ、バイオリンの主旋律とピアノの伴奏に戻ってこの曲は終了する。

次に聴くのが、ほぼ同じ編曲で主旋律をスキャットに変更し、楽器数を増やした曲。
今聴いたスキャットの無いバージョンは、映画のシーンを想定して音楽表現を控え目に、楽器を減らしたように思われる。(あるいは逆の手順で楽器を増やした可能性もある)
このように同じ編曲から楽器を間引いたバージョンを聴くことができると、各楽器の編成や息遣いの聴き分けが出来るので面白い。

3.「永遠の生命 (M-66A)」
この曲は、2.「永遠の生命 (M-65)」とトラックダウン違いかと思っていたが、
同時再生してみたところ、音ズレにバラつきがある。別テイクなのか?
まあ、これは余談でした。では、本題。

主旋律はスキャットとバイオリンとピアノ、伴奏はピアノで始まり、早い時期にコントラバス?っぽい長い低音の伴奏も加わる。
チェロの伴奏が加わった時点でバイオリンの主旋律が和音表現に変化(もしくはバイオリンの主旋律がビオラの和音表現に交代?)して軽くサビをむかえる。
次に、主旋律はピアノ一本になり伴奏もピアノ。コントラバス?の長い低音に合わせてバイオリン(もしくはビオラ?)も長音で伴奏している。
ここは、ピアノを聴かせるために、少しおとなしくなった印象。次のサビを引き立たせる意味もありそうだ。
この曲も0:53頃からがサビ。
主旋律はバイオリンの和音、伴奏はピアノ。バイオリン、チェロ(もしくはビオラ?)、金管楽器(ホルン、もしくはトロンボーンかな?)、
更にコントラバス?の低音も主旋律にハモらせるように加わり、ここで最高に盛り上がる。
先程聴いた、2.「永遠の生命 (M-65)」は、楽器が少ない故に、この部分の何重にも重なった音を聴き分ける手掛かりになると思う。
(※仮に楽器の名前が分からなくても、ここにこんな音が入っているということが聴き取れたら、泰先生の編曲の魅力を理解できると思う。
そういう訳で、楽器名が出鱈目のまま話を進めさせていただいた。本来なら楽器名を特定させたうえで公開すべきところ、自分の無知故、申し訳ないです)
そして、金管楽器以外の全ての楽器を使いながら静かに終了する。


ここまでの3曲は実際に映画で使うことを前提に編曲されたものだ。元々音盤化の予定も無く、音楽として鑑賞することは考慮されていないと思う。
それぞれは、大体以下のようなことを念頭に作られたのだろうと思う。
1.「想人 (M-72B[5])」はスキャットをメインに哀愁をより深く表現した作品だと思う。(ただし、この曲はラジオドラマのみの使用にとどまった)
2.「永遠の生命 (M-65)」はスキャットを排し小編成にすることによって哀愁の深さや感情の高まりを押さえ、セリフの邪魔をすることなく細やかな感情を表現するように作られていると思う。
(実際に、沖田艦長のセリフのシーンで効果的に使われていた)
3.「永遠の生命 (M-66A)」は楽器を多く使用することにより、哀愁の深さや感情の高まりをより豊かに表現しており、セリフの無い場面で効果的に使用されている。
このように映画で使うことを前提とした制約があるものの、それぞれの曲は音楽としての美しさ、愉しさも堪能できるような工夫も加えて編曲されていると思う。

次に聴く、4.「想人 (おもいで)」は、音楽として鑑賞することを前提として編曲・演奏された曲だ。
音楽としての美しさ、愉しさを堪能できるように、どのような編曲がされたのか、上記3曲と聴き比べると面白い。


4.「想人 (おもいで)」
泰先生作・編曲、伊東ゆかりが唄う「青空のゆくえ」に似たピアノとハープからなる前奏から始まり、スキャットの主旋律が入り、
ピアノとハープによる前奏はそのまま伴奏となって続き、トライアングルかフィンガーシンバルのような「チーン」という音が入る。とここまで、ほんの出だしだが先の3曲より豪華な編成なのがわかる。
映画で使うことを前提とした制約が無く、自由に編曲しているようだ。しかし、音楽として鑑賞し易くするために控え目にした部分もあると思う。それは、後で述べる。
しばらくしてバイオリン(もしくはビオラ?)、ベース、ドラム更にギターのアルペジオ伴奏が加わり、先の3曲に無かったポップスの要素も顔を見せる。これは、愉しくなってきた!
ドラムは、村上秀一。そう、ポンタさんだ。思わぬ所に大物登場で、その正確なスティック捌きに耳を傾けるのも良い。ちなみにこの演奏のピアノは羽田さんではない。
次に、バイオリン(もしくはビオラ?)伴奏が和音になり、更に高音のバイオリン和音伴奏と鉄琴(ビブラフォン?)も加わり、ちょっとした盛り上がりを見せる。
ここで主旋律はホルンに交代、伴奏にフルート?が登場し、更に管楽器も加わり、ベース・ドラムも大きくなる。
次にバイオリンはトレモロ?(セミやキリギリスのように弓を高速で震わせる奏法)で美しく主旋律を奏で、主旋律がチェロにバトンタッチされるとトロンボーン?がリズムを刻むように伴奏する。
更にバイオリンの和音で主旋律、ホルンが副旋律の伴奏を奏で、ここでサビをむかえる。先の「0:53頃からのサビ」に該当する部分だ。
ただし、ちょっと音の重なりが減った印象だ。

主旋律、副旋律が様々な楽器にバトンタッチして演奏されているが、
同一楽器が再登場すると奏法を変えるなど、聴き飽きさせない工夫が感じられる。
そして、哀愁のあるオーボエが主旋律を引き継ぎ、最後のスキャットへの橋渡しとなる。
最後は静かに哀愁を帯びて終了するのではなく、もう一度サビをむかえてハープのグリッサンドも絡めて明るめの曲調で終わる。

この曲、先に聴いた3曲と比べて豪華になっているのだが、
音楽としてのバランスを考えて逆に控えめになった部分もあると思う。
・哀愁が深くなりすぎないように、スキャットの声色を明るく澄んだ方向にシフトしている。
・本来、哀愁が深まって終わる曲だが明るめのラストに変更している。(音程は先の3曲と同じく下がって終わるのに明るく感じるのは何故だろう?)
・2.「永遠の生命 (M-65)」と3.「永遠の生命 (M-66A)」の数えきれないほどの音が重なり合いつつ、大変美しく響き合う0:53頃からのサビに該当する部分の音の重なりが減りシンプルになっている。
「永遠の生命」ではこの部分が前後に比べて突出しており、「想人 (おもいで)」では曲としての流れを整えるために前後に合わせてシンプルにしたのではないかと推測する。

以上のように、4.「想人 (おもいで)」は音楽としての美しさ、聴き易さ、飽きの来なさを考えて編曲されていると言えよう。


こんなに念入りな聴き比べは初めて試みたが、
映画に使うことを前提に作られた曲、音楽として聴くことを前提に作られた曲、双方に一長一短があるものの、
両方を比べて聴けばその楽曲に対する理解が深まると実感した。
更には、宮川泰先生の緻密で美しく魔術的ともいえる音作りを改めて再認識出来て有意義だったと思う。


5.「想人の記憶 (スキャット)」
3.「永遠の生命 (M-66A)」をベースに彬良さんが再アレンジした最新録音版。
こちらは、簡単にポイントのみ。
初めは、1.「想人 (M-72B[5])」や 3.「永遠の生命 (M-66A)」に近く、哀愁が深い印象だが
後半はベース、ドラム、木管楽器が加わり、4.「想人 (おもいで)」のようなポップスの要素も加わり、
主旋律は多くの楽器でバトンを繋ぐように演奏されている。
更に、2.「永遠の生命 (M-65)」の「0:53頃からのサビ」も踏襲されて残っている。
(音の重なりはやや減っているように思うが、4.「想人 (おもいで)」ほどシンプルにはなっていないと感じる。程よい着地点でまとめていると思う。もしくは、ミキシングでバイオリンの音を絞っただけで同じ音の重なりかもしれない。)
曲の終わりは、3.「永遠の生命 (M-66A)」と比べると少し明るい印象。(この曲は音階が上がって終わっている!)

このように「想人の記憶 (スキャット)」は、1978年の「想人」4曲の記憶から良い所を選んで紡ぎ直した曲と言えそうだ。
図らずも、名は体を表しているということだろうか。
映画に使う、音楽として鑑賞する、という双方の要望を一曲に集約した、彬良さんの手腕が光る一曲だ。


これら5曲のような密接な関係性は無いが、泰先生がそれぞれ違ったコンセプトで編曲したヴァージョンとして、
以下の3曲も紹介しておきたい。

6.「想人(おもいびと)」『不滅の宇宙戦艦ヤマト ニュー・ディスコ・アレンジ』
1978年の演奏。
この曲はポール・モーリアの「オリーブの首飾り」を思わせるアレンジになっている。
「オリーブの首飾り」と聴き比べるとメロディーは全然違うのに楽器の使い方はかなりの部分で一致している。

7.「想人 YOU BE THERE」『ギターが奏でるヤマト・ラプソディ』
1982年の演奏。
ラテン風のパーカッションとドラムから始まる軽妙なアレンジ。
哀愁を帯びた曲が楽しい曲に化けている。
木村好夫のギターも素晴らしい。

8.「想人 YOU BE THERE」『バイオリンが奏でるヤマト・ラプソディ』
こちらも1982年の演奏。
バイオリンの徳永二男、ギターの木村好夫、そしてピアノの羽田健太郎という
ヤマト音楽奏者のビッグスリーが揃って共演している。
3人の名プレーヤーが、代わる代わる主旋律と伴奏を巧みに絡ませ合いながら演奏している。
この3人の会話のような絡み合いを追いかけながら聴けば、それぞれの稀有な演奏技術を堪能出来ると思う。



以上「想人」の聴き比べでした。

元々音楽用語の知識もなく、オーケストラ楽器それぞれの音も判別できずにこういう文章を書こうとするのが間違いだったかもしれない。
そして、音楽を文章で説明するのは難しいと思い知った。
だが、宮川泰先生とヤマト音楽の素晴らしさを伝えたい。その一心でこんな文を書いてみました。
どうにか意味は通じるように書いたつもりだが、分かりづらい所があれば、どうかお許し願いたい。

そして、個人的趣味全開で書かせていただいた文章を最後までお読みいただき、本当に有難うございました。



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