最近の市場にはあまりお目にかかることが無くなったスタインバーガー。約40年近く前に奇抜なデザイン、EMGピックアップ、グラファイトネック&ボディというエレキギターの概念からかけ離れたものがリリースされ驚いたのが遠い昔。メーカー自体も時代と共に変わり、製造が韓国に移り現在はギブソン傘下ですが日本国内の輸入代理店も不透明でこのニューモデルといわれたシナプスシリーズも2016年に生産終了していたとは知りませんでした。内情は解りませんがいまだにデザインしたネッドスタインバーガーが現在も絡んでいるようなのが救いですか。2018年からはトラッドなスタインバーガースタイルを世襲したスピリットシリーズのみの生産のようです。2006年に新モデルとしてのこのシナプスは今となっては過渡期の10年間の間に出た特殊な仕様のようなモデル。スタインバーガーの中でこのシナプスはネッドスタインバーガーが1990年に立ち上げたエレクトリックアップライトベースで有名なNSデザインのスタイルを元にしているような雰囲気。
元々のスタインバーガーデザインは24フレット仕様のためフロントピックアップがブリッジ寄りにセットされ固めでモダンなフロントPUサウンドでしたが、このシナプスは若干大きめのボディに22フレット仕様、トレモロアームが無いオリジナルブリッジからレスポールに通じるトラッドな2ハムバッキングトーンが特徴です。ストラップピンの位置をヘッド側にアジャストするストラップアームがギターを持った時のバランスを最高に保ちます。このギターはリアPUをEMG81から85にチェンジして配線、SW、ポットもEMGオリジナルのハンダフリーなコネクター配線に変更し、ジャックもボディ裏のプラグが隠れる位置。ネックは今となっては珍しい手間のかかる3ピースハードロックメープルのスルーネック構造。両側からボディ材のメープルでネックをサンドしてタイガーストライプのメープルべニアを張り付ける仕様。特殊グラファイトを仕込みフェノール樹脂の指板という革新的な複合素材構造のネック。硬くタイトなオールメープル材でボディとネックの余計な倍音や振動を排除してクリアなEMGのアクティブトーンを出すというコンセプトはグラファイト材を使っていた時からの流れ。ボディ裏にはコンター加工まで施しそんな先端を行くデザインコンセプトとビンテージトーンの融合なのですが生産終了が残念でなりません。実売価格とコストが合わない現実も理解できます。
ギターには機能性とスタイリングとトラッドがどのような混ぜ合わせ方なのかで評価が変化します。アーチドトップのギブソン全盛期の50年代にソリッドギターのフェンダーが出た時の衝撃はある意味、ソリッドギターは何でもありの楽器というポテンシャルが証明された時期でもありました。70年代後半、スパニッシュスタイルのギターなのにこの形状とアクティブPUというデザインもある意味50年代のフェンダーに近いアプローチが漂います。
いろいろ言っても入手以来6年間DAW作業での使用頻度ナンバー1がこのシナプス。コンパクトボディとEMGがオーディオインターフェースに直結してもノイズが無いのとゲインが安定しているのでアンプシュミレーターのポテンシャルを最大限に上げます。また少なくなりましたがダブルボールエンド弦とオリジナルブリッジが究極のローアクションと全く狂わない正確なピッチを保持する高い完成度が録音に最適です。このボディ形状でもウエイト3kgとスピリットより一回り重い重量感。PCと格闘しながら弾いていると結構肩がこります。