Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

Steinberger Synapse SS-2F Custom

2018-02-15 14:28:14 | GUITARS

最近の市場にはあまりお目にかかることが無くなったスタインバーガー。約40年近く前に奇抜なデザイン、EMGピックアップ、グラファイトネック&ボディというエレキギターの概念からかけ離れたものがリリースされ驚いたのが遠い昔。メーカー自体も時代と共に変わり、製造が韓国に移り現在はギブソン傘下ですが日本国内の輸入代理店も不透明でこのニューモデルといわれたシナプスシリーズも2016年に生産終了していたとは知りませんでした。内情は解りませんがいまだにデザインしたネッドスタインバーガーが現在も絡んでいるようなのが救いですか。2018年からはトラッドなスタインバーガースタイルを世襲したスピリットシリーズのみの生産のようです。2006年に新モデルとしてのこのシナプスは今となっては過渡期の10年間の間に出た特殊な仕様のようなモデル。スタインバーガーの中でこのシナプスはネッドスタインバーガーが1990年に立ち上げたエレクトリックアップライトベースで有名なNSデザインのスタイルを元にしているような雰囲気。

元々のスタインバーガーデザインは24フレット仕様のためフロントピックアップがブリッジ寄りにセットされ固めでモダンなフロントPUサウンドでしたが、このシナプスは若干大きめのボディに22フレット仕様、トレモロアームが無いオリジナルブリッジからレスポールに通じるトラッドな2ハムバッキングトーンが特徴です。ストラップピンの位置をヘッド側にアジャストするストラップアームがギターを持った時のバランスを最高に保ちます。このギターはリアPUをEMG81から85にチェンジして配線、SW、ポットもEMGオリジナルのハンダフリーなコネクター配線に変更し、ジャックもボディ裏のプラグが隠れる位置。ネックは今となっては珍しい手間のかかる3ピースハードロックメープルのスルーネック構造。両側からボディ材のメープルでネックをサンドしてタイガーストライプのメープルべニアを張り付ける仕様。特殊グラファイトを仕込みフェノール樹脂の指板という革新的な複合素材構造のネック。硬くタイトなオールメープル材でボディとネックの余計な倍音や振動を排除してクリアなEMGのアクティブトーンを出すというコンセプトはグラファイト材を使っていた時からの流れ。ボディ裏にはコンター加工まで施しそんな先端を行くデザインコンセプトとビンテージトーンの融合なのですが生産終了が残念でなりません。実売価格とコストが合わない現実も理解できます。

ギターには機能性とスタイリングとトラッドがどのような混ぜ合わせ方なのかで評価が変化します。アーチドトップのギブソン全盛期の50年代にソリッドギターのフェンダーが出た時の衝撃はある意味、ソリッドギターは何でもありの楽器というポテンシャルが証明された時期でもありました。70年代後半、スパニッシュスタイルのギターなのにこの形状とアクティブPUというデザインもある意味50年代のフェンダーに近いアプローチが漂います。

いろいろ言っても入手以来6年間DAW作業での使用頻度ナンバー1がこのシナプス。コンパクトボディとEMGがオーディオインターフェースに直結してもノイズが無いのとゲインが安定しているのでアンプシュミレーターのポテンシャルを最大限に上げます。また少なくなりましたがダブルボールエンド弦とオリジナルブリッジが究極のローアクションと全く狂わない正確なピッチを保持する高い完成度が録音に最適です。このボディ形状でもウエイト3kgとスピリットより一回り重い重量感。PCと格闘しながら弾いていると結構肩がこります。


ギターの表情

2018-01-29 22:57:51 | GUITARS

許容範囲というものがありますが市場に出ているそれなりのストラトキャスターはメーカー問わず良い音がするものです。マニアックな楽器店がスピリチュアルな付加価値を付けるために「鳴る、鳴らない」などというフレーズを語りますが弾き手の好みのトーンかということが重要です。パーツの集合体のストラトではその取付状態で弾き心地は180度変わりハイエンドのストラトでも評価は今一つということも多いです。

ネックグリップの違いやボディ重量等で様々な表情を見せるのがストラトですがその中でトーンに一番影響を与えるのがピックアップ。最近だとコイルやマグネットのパーツまでも当時のマテリアルで作り上げた究極なモディファイPUまで登場。80年代初期のフェンダーカスタムショップのピックアップはまだレギュラーの純正品でした。なのでビンテージと現行品の音の差は歴然でしたが今は力が抜けた古いピックアップよりハイエンドモディファイのほうが安定性はあります。マグネットにコイルを巻くシンプルな構造だけに50年代のような手による加工の精度でトーンのバラつきが出やすくマシン加工は当然の流れでした。ビンテージギターの様々なトーンは経年変化よりこのピックアップ製造の不安定さによるのも大きいでしょう。50~70年代にかけてのフェンダー社でのピックアップの製造工程の変化はなくレシピ―も同じなのに時代によってトーンが変わるのが製造時のバラつきとギタリストの追い求める音のイメージがそれを複雑にしています。60年代後半のヘンドリックスからワンストリングスガイドのラージヘッドをファットなイメージにとらえてしまいがちですがスモールヘッド時期とは製造工程・方法は同じなのです。当時は周辺機器も含め時期によって意図的にトーン設定を変える必要も有りません。

さてこの55年製ストラトに新しいネックを取り付けて1年経過しましたが再度設定してみます。ネックは硬くシェイプがファットにジョイントもよりタイトになった分モダンなトーンの質感も。これはこれでいいのですがトラッドさを強調するにはフローティングしたブリッジのテンションを緩くすると倍音成分が持ち上がります。ネックポケットが浅めな50年代のストラトはピックアップのアジャスト幅が広いので微妙なPUバランスが可能。出力の低いピックアップになるほど弦とポールピースの距離調整でかなりのトーンの違いを作ることが出来ます。これは好みですがザラついたクランチするチューブアンプでストラト特有のセンターPUを中心にチューンしていくのがいいですね。

トールDポールピースの55年製PUは現行のビンテージモディファイPUより出力は控え目ですが倍音成分は多くチューブなクリーンからクランチまでの設定がオイシイポイントです。独特な各PUのキャラクターが突出せずセンターPUにトーンがよってくる雰囲気。しかし、ストラトサウンドは鈴鳴なビンテージトーンが全てではありません。少しファットな出力でアタックにすくい上げるバイト感がついてくるブルーストーンも外せませんがそれだけ全ジャンルに対応するギターがストラトの奥深さなのでしょう。しかし、ビンテージモディファイのピックアップを追及すればするほどEMG・SAの工業製品としての完成度の高さを感じます。


PRS SE Bernie Marsden チューンナップ4 完成

2017-12-07 12:07:02 | GUITARS

多少放置気味でしたがやっと完成です。ストラトと違いタイトなキャビティでの単線使用は大変です。細い単線で何度も位置決めをしていると折れやすいのでダブルでツイスト加工するとハンダ接合部分が太くなりシングルの太い単線より柔軟性があり強度も出ていい感じです。音には大きな変化はありませんがノイズが少なく太くラウドになる気分が味わえます。深いキャビティでもレスポール位面積があればいいのですがこの細長い形状は別のプレートである程度配線してからトグルSW、PUからの結線をして定位置に沈みこませる方法ですが収まりつかせるのに一苦労です。

搭載したPRS DRAGONⅡはロータリースイッチ専用のようなタップもできる3コンダクター。そのためひじょうに細いデリケートなケーブルなのでポット結合前に単線ケーブルに変換しています。タップ用の赤いケーブルは絶縁しレギュラー配線で。PRSの3芯以上のPUはリアとフロントでホットとグランドが逆になっているのが要注意。やっとの思いで完成後、センターポジションでフェイズになっていて驚くこともあるので慎重に。ドラゴンⅡ純正のリアPUの高さ調整ビスが短く、ローアクションでのPUの高さが低く設定出来ないので長いタイプに交換です。実際付けてみないとわからないポイントがチューンナップにはつきもの。

さて、サウンドは狙い通りのラウドなレスポールでビンテージの質感を残しながらもハイパワーなタッチ。DRAGONⅡのハイパワーなリアPUはゲインというよりクランチ感に設定してあるトーンなので数値上の直流抵抗ほど出力差を感じず、センターミックスもスウィート。ピッキングのアタックに絡みつくバイト感を強調するミッドレンジにポイントを持ってきたPRS独特なトーン。ドライブしたシングルノートがオイシイようにセッティングされていますがギターのボリュームを絞るとPAF系のビンテージに変化するところは考えられていますね。ハイエンドですがビンテージを追及し過ぎて非力で腰が無くキンキンするハムバッキングPUが多い中、どんな環境でも裏切らない安心感がこのDRAGONⅡ。レスポールサイズの厚いマホガニーでドッシリとした4.2kgの重量がより粘る濃厚なミッドレンジのシングルノートを生み出します。同じシングルカットのSEはカスタム直系の薄いボディの3.5kg。こちらはPUがダンカン59なので一概には言えませんが軽いシャープな印象です。同じDRAGONⅡ搭載のカスタム22も3.4kgとライトウエイトなのでバーニーマースデンモデルと比べると音は明るめのSGライクです。ギターはそれなりの適正重量が必要で特にアンプリファイドでいく場合トーンに与える影響は大きいです。どちらが良いか悪いかではなく、好みのトーン、ディストーション、身体に対する影響等評価は様々。ここが面白いところです。

からだにやさしいのですが最近のライトウエイトレスポールにあまりいい印象が無いということはマホガニー&メープルのギターはそこそこの重量が必要だということかもしれません。昔所有していた80年代のカスタムは4.7kg以上ありましたがサウンドは抜群に良かった記憶が。ギターは手放さないことが一番です。後悔先に立たず。


PRS SE Bernie Marsden チューンナップ3

2017-12-04 11:34:53 | GUITARS

PREバーニーマースデンモデルのチューンナップ第3弾はパーツ選定の巻。なかなか組み立てが進まないのはアジア規格とUSA規格の違いが原因。形状違いをマッチさせるためにボディやパーツ加工の下準備が重要になってきます。径を広げたりが大半なのですが。

一時期ビンテージコンデンサーにハマった時期がありコンデンサーチェッカーを自作していろいろと嗜みました。ビンテージ故のメリット、デメリットが音としてはっきりと確認出来ましたがこのおかげで楽しみも半減した記憶があります。そんなコンデンサーチェッカーを再度引っ張り出し現行モノのアタリを探したらまた新たな発見です。決まりはありませんがPUはハムバッカーなので定番の値の0.022μF。レスポールをモディファイしたモデルなのでビンテージライクとも思いましたが、選んだPUがドラゴンⅡなので現行のモダンアプローチでいきます。フロントPUのトーンを絞ってもゲインやアタックが下がらずメローになるトーンでは今のところデンマークメイドのオイルペーパーの「JANSEN」がナンバー1。トーン、ルックス共に最高ですが何せ高額。シングルPUもハムバッカーPUもこれを搭載することで完結しますが今回は別なアイテムも探ってみます。最近はビンテージコンデンサーのトーンを復刻させたレプリカやギター用に特化した新モデルも多く出ていてどれも気になります。アタリハズレの多いビンテージに手をだすよりも断然オススメ。音が良くてリーズナブルでビンテージマスタードをリイッシュしたSOZOブランドも最高です。迷ったときはオレンジドロップといわれるくらい有名なのがこのポリプロフィレンフィルム。この分野でのハシリのアイテムですが、写真はビンテージ。現行品と比べても遜色はありません。そんな中で見つけたのがフランス製の黒いヤツ。Solenブランド、Fastアルミニウムメタライズドポリプロピレンフィルム。耐圧は1000Vなので真空管アンプなんかにベストなアイテムですがハムバッカーに使うと最高です。トーンを絞っても逆にゲインが増すような質感。アタックと粘りでシングルノートに存在感を与えます。価格も手ごろで大きさもポットの上にハマるちょうどいいサイズなのでバーニーマースデンモデルにはこれで。

配線材は単線の現行ベルデン8530やUSA Remington Industriesで。トグルスイッチはスイッチクラフト。ボディーに直接マウントなので取り付けネジの長いショートタイプが無難ですが昔からのタイトなスイッチングのロングタイプでいきます。純正のネジだと距離が足りないのでディープトグルナットを使います。ディープトグルナットはワッシャー部分が上部にせり出すので純正インチノブだと径が大きくスイッチが入りきらずセンターポジションに落ちてしまう弊害があります。外周の径が幾分細いセンチサイズノブがギリギリな感じです。指に痛いですがノブ無しトグルSWなら問題ないですが。ロングタイプの接点プレートは厚いワンピースなので固めの質感が味わえ、ショートタイプの接点は薄い接点プレートを2枚重ねなのでソフトなスイッチングができます。こればっかりは好みですけどね。

ヴォリューム・トーンのスピードノブは純正のモダンなアンバーをやめてエンボス文字のビンテージタイプ。機能的にはストラトノブに続くベストな形状がスピードノブだと思いますがこのデザインは素晴らしいですね。レトロなのかモダンなのか。ギブソンスタイルのギターにしかマッチングしない汎用性ゼロのスタイル。ポットはCTSのカスタム500k・Aカーブとスイッチクラフトのミルスペックジャックはいつものパターンです。


PRS SE Bernie Marsden チューンナップ2

2017-11-15 11:55:20 | GUITARS

PRS SEバーニーマースデンモデルの組み立てです。いつものことながらSEの純正ポットはセンチ規格なのでインチCTSポット用に穴を広げます。棒ヤスリで軽く摩る程度で丁度いいくらいなのでやり過ぎに注意。気分的に削ったところにサンディングシーラーを塗ってコンディションの変化を防ぎます。ピックアップはEMGも視野に入れましたがやはりPRSの代表的アイテム、ドラゴンⅡのコンビネーションで。ビンテージなPUもいいですがトラッドな風味もありつつシングルノートでガッツのあるヤツではやはりこれですね。ファットでディストーションに照準を合わせたようなトーンでもヴォリュームコントロールでザラついたクリーンにもなります。純正のエスカッションにも寸法はバッチリでジャストフィット。

現行はわかりませんがSEシリーズのナットのエッジ処理は何故か施されていませんので左手に妙なひっかかる違和感を感じられます。USAのラインのように両サイドのエッジを丸く加工して滑らかに。ついでにフレットサイドの角のバリもとります。この辺りの処理はこのクラスではトップなのですが流石にザラつく箇所はいくつかありますね。

ギブソンやフェンダーのように歴史が生んだビンテージがある巨大メーカーは新しいモデルをリリースしてもなかなか賛同するギタリストは多くありません。奇抜なモデルも出せば全て当たった50~60年代と違い今は難しい時代です。ハイエンドモデルは昔の焼き直しにレリックを加えるかシグネイチャーのスタイルかの老舗メーカーは最新モデルを生み出せないジレンマに悩まされます。次第に販売数が低下して会社自体M&Aにさらされジリ貧化と復活を繰り返すのが今までの流れ。小規模な工房系のハイエンドメーカーの品質は素晴らしいですが販売価格と安定性に疑問が出る場合が多い。そのあたりでPRSは規模、品質、安定性が優れていますが完全なオリジナリティという点では老舗メーカーが生み出したスタイルのいいとこ取りな雰囲気も。しかし、そのビンテージやトラッドの風合いが現行のオリジナルモデルでも味わえるというのがこのメーカーの強みかもしれません。また、創業者がいまだに在籍しているのがブレない所以かも。フェンダーやギブソン等のビックメーカーはアジア製ビギナークラスと本国性ハイエンドとのクオリティの差が大き過ぎます。これだと程よい売れ筋の中級機種が無いため結局販売量の低下を生み出してしまいます。PRSは初級、中級をこのSEでラインナップしているようで販売量もあり毎年新たなバージョンも安定的にリリースしていますし品質も安定。しかし、PRSも中級機種がありません。ギターメーカーはハイエンドとビギナークラス2本立てというのが一般的ですが、それは市場をよく見ていない証拠で衰退するパターンなのかもしれません。巨大なメーカーになればなるほど商品群のバリエーションがシビアになってきます。その設定を間違えるとブランド消滅というのがよく聞く話です。