Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

PRS SE Bernie Marsden チューンナップ1

2017-11-06 22:38:27 | GUITARS

少し放置気味なPRS・SEバーニーマースデンモデルですがパーツもそろったところなので組み立てを始めます。オリジナルパーツを外してみても木工の精度はかなり高いですね。なんとなくディープジョイントがわかるネックポケットやキャビティにも導電塗料がちゃんと塗られています。毎回なのですがアジアンSEはセンチサイズのパーツを使っているのでボリュームポットの穴をCTSにする場合大きく広げないとならなく、ひと手間加わります。純正のバーブリッジはアルミ製の軽量タイプでビンテージトーンを狙っているようですね。ブリッジスクリューは本家PRS程の精度はありませんがかなりタイト。PUキャビティから見えるタイガーストライプのべニアは薄いですがその下にしっかりとしたメイプルがマホガニーの上にラミネートされているのがわかります。品のある太めのワイドファットネックと245スケールは現行のリアルレスポールモディファイのきっかけのモデル。現在は既にバーニーマースデンモデルの生産は完了していますが同じ仕様はSE245に受け継がれています。

好みもありますが10万円以下のビギナーからスタンダードクラスまでのクォリティではダントツのSE。ルックスに重点をおいたり、ビンテージを意識しすぎたり、きいたことのない材料でコストダウンをしているギター等もありますがそんな中では素材、価格、スタイルも王道を行く存在のSE。レギュラークラスのカスタム、マッカーティー等の価格設定が現実的ではないのでSEが安く感じるのかもしれませんが80年代の国産ハイエンドギターと比べても確実に上をいっている感があります。

本家ギブソンではメンフィス工場の売却や負債の増大、音響メーカーの買収等迷走を繰り返しているようです。M&Aを繰り返すアメリカ的経営方が我々ギターマニアの聖域メーカーまで怪しくさせているようで予断を許せません。我々からするとアメリカといえばギブソン、フェンダーとなるくらいの聖なる象徴ですがビジネス的にはアップルなんかとは比べ物にならないくらい小さいのでしょう。驚く値段のハイエンドモデルは日本のマニア向けで本国や欧州のギタリストはみんなアジア製でいい音を出しています。「メイドインUSA」にほかならぬイメージを持っている日本のギターマニア向けの限定的な商品群がヒストリックやマスタービルド、プライベートストック等のハイエンドモデルなのでしょう。

とはいっても本家のビンテージに限りないコンプレックスを持って再現していたジャパンメイドも技術が成熟したのが80年から90年代のごくわずかでそのままアジアに生産がシフトしていき、今ではいろいろな業界で詐称疑惑の問題になっていてもしょうがない気がします。しかし、今のアメリカを見るとメイドイUSAにこだわるのはギターくらいなのでしょうね。USAメイドのiphoneや車は逆に胡散臭い気が。先進国での生産とは職人の工房的生産で価格は言い値で不安定、アジアや東欧生産が高品質で低価格、品質安定でトラッドなんていう時代に確実に突入しています。


Teisco スペクトラム5 やっと完成

2017-09-20 20:17:04 | GUITARS

スペクトラム5の配線スイッチ改造を試みてほぼ一カ月。チューンナップをしながらそのギターの本質が次第にわかってきました。普通はピックアップからのケーブルをポットやスイッチでまとめるのですがこのスペクトラム5はスライドスイッチにすべてが集中していてそれが最大の難所。オリジナルにあった独特の小さなトランスを撤去し3ピックアップをフルに使えるようにレイアウトしたのが問題の始まりです。複雑なスライドスイッチは代替パーツが無いのでスピーディーにハンダ付けをしないとすぐポストが熱で不安定になります。このギター専用のスイッチなのでコストは意外とかかっているかもしれません。ポストの穴も小さく、3本の結線があったりなので細い単線を使いますがかなり難航。

ワイヤリングのレイアウトは6個あるシングルコイルをそれぞれペアでまとめて通常のPUのようにセッティング。5個のスライドSWはフロントPU、センターPU、リアPUを単独で出力、全部をシリーズ配線、リアPUとフロントPUのミックスシリーズの5パターン、それぞれ隣のスイッチを同時に押すとハーフトーンとストラトとテレキャスターが融合したハイスペックなスイッチになりました。最初に250kΩのポットに配線しましたが膜が張ったボケたストラトサウンドになったのでボリューム、トーンともに500kΩに交換。するとブライトでクリスピーなビザール臭を残した質感になります。ポットの抵抗変更は地味なチューンですが効果絶大です。しかし、トーンが全く反応しない状況になりポット不良と思いきや正常。そこでピックアップの直流抵抗を測ると0.07kΩと通常のピックアップの100分の一という値。要するに強い磁力のマグネットにコイルの巻き数はチョットだけという仕様。専門サイトではテスコのこのPUは400ターンと書かれているのもあり、フェンダーの20分の1程のターン数。この当時の日本での製造過程ではこれでターン数や巻形状でのトーンのバラつきを最小限にして強いフェライトマグネットと小さなトランスで出力を安定させる狙いだったのでしょう。

その極限にまで少ないターン数のPUの弊害でトーンに使用するコンデンサーの値では機能しなかったのかもしれません。100倍の2.2~4.7あたりの電解コンデンサーだとしっかりトーンポットとして動きます。しかし、電解コンデンサーはカッコいいコンデンサーがありません。ルックス良くても大きすぎたりトーンが今一つだったりでしたが実際にセレクトしたのはどこでも手に入るニチコンの2.2ufの電解コンデンサー。3.3uf以上だとゲインも下がってしまうので2.2ufが芯も残ったままマイルドでちょうどいい感じです。難点はこの電解コンデンサーだとトーンが最後に急激に効いてくるので微調整が難しくBカーブでもほとんど同じ効き具合。ポットの抵抗値がまだミスマッチなのかは今後の課題です。このギターには特にトーンを絞ることはまれなのですが正常に機能することが大前提です。また、ギターに美味しいトーンポット用コンデンサーは外見や価格が全くと言っていいほど音質と一致しません。ビンテージもいいですが最近のギター用に作られたチョット高額な洒落たコンデンサーはボラれ感満載ですが安定度合いもありトーンもいいので好きですね。

時代を感じるオリジナルスペクトラム5の個性の一つのステレオアウトは今回廃止しました。今回の5wayスライドスイッチでは全てオフではアースが浮いている状態なので新しいスイッチでon-off仕様に変更し接触不良も改善。配線材はおなじみのWEのビンテージ単線でハンダはアルミット。

元ネタは60年代フェンダーなのでしょうが独特のオリジナルなアプローチとこのモデルだけの特殊ピックアップ構造からテスコの強い意気込みが感じられます。ストラトキャスターのようですが一歩手前の刺さるトレブル感が太く感じられ新しい雰囲気。しかし、60年代当時このモデルを出した後にテスコが衰退していったということで起死回生を狙うより最後のご褒美的なギターがこれだったのでしょう。


Teisco スペクトラム5 ネックメンテナンス

2017-08-24 10:29:04 | GUITARS

以前に軽くメンテナンスしたのですが今回はキッチリとフレット調整します。スペクトラム5のネックポケットにシムを仕込み低いアクションに設定するとどうしてもこの手のギターのフレット処理が悪いのに気づきます。特に10フレットより高い側の乱れが目立ち、製造されてからちょうど20年目に入るのでメンテするにはいい機会です。また、フレットサイドはネック痩せしていないのにサラッと削っただけなので指に引っかかります。フレットエッジを少しまろやかにするだけで雰囲気がガラッと変化します。またビザールによくあるゼロフレットも経年変化で溝ができてチョーキングのたびにキンキンと溝から弦が外れるノイズが出ます。ゼロフレットは他のフレットよりも高くジャンボなので溝が無くなるまで研磨できますがやり過ぎるとナット部分でのビビりを発生させますのでほどほどに。

ネックは意外とタフに作られています。3ピースメイプルに硬いローズ指板でネックの重量もあります。弦を外しても状態があまり変化しない程頑丈ですね。この97年リイッシュのスペクトラム5は60年代後半、本家テスコを吸収したカワイ楽器が製造で当時のオリジナルよりガッチリと作られている感じもします。60年代オリジナルのテスコ製スペクトラム5を弾いたことはありませんが他の当時のオリジナルテスコと比べると重厚な感じです。カワイ楽器は2000年に入ってからはギター生産から撤退しているようなので現在の復刻スペクトラム5はアジア製造の可能性がありますね。

いろんな意味で他のギターパーツの流用が無く新たに型を起こしてパーツを作った可能性もあるので意外とコスト高のギターです。パーツを外したボディも軽いカスカスのラワンというより重量があるマホガニーに近い雰囲気で鳴りも明るくサスティーンも豊富。あの独特の板バネでサスティ―を減少させていますがダイレクトなブリッジだとヘビーな音がしそうな雰囲気がありますね。


スペクトラム5 配線リニューアル

2017-08-21 20:34:45 | GUITARS

最近またテスコ・スペクトラム5を嗜んでおりますがこの60年代を忠実に再現した90年代のリイッシュの音が何とも欲求不満になります。せっかくシングルPUがたくさんついているのに使える音はたったの1つ。60年代はこの突飛なレイアウトが斬新だったのでしょうが現在ではどうにもこうにも。全てのPUから一度にシリーズ配線で音が出てもびっくりするだけです。最近出たショップオリジナルで復刻されたスペクトラム5はそこのPU配線を単独ポジションで出せるようになっているようです。しかし、全部のPUからのフェイズやローカットのようなビザール臭もしっかり残しています。

どうせ禁断の配線改造するならストラトとテレキャスターのPUレイアウトが一度に出せる夢の配線は無いかといつもお世話になっているO店長に相談したら可能とのこと。スペクトラム5にしか搭載されていないこのピアノスライドスイッチがそれを解決してくれ究極のアナログモデリングスイッチャ―に変貌。それぞれのPUスイッチを2個同時に押すとハーフトーン、すべてのPUからのパラレル、テレキャスターライクのフロント&リアのパラレルミックスもボタン一つ。全く使用しないモノ・ステレオSWはスルーしてもいいのですがせっかくなので全てのPUのON-OFFスイッチに。写真はないですが仮の配線でのチェックで完璧に音が出ました。やったことのない配線で音がでるとうれしいものです。しかし、このマジック5wayスイッチは後にも先にもこれしかないので大事に配線作業しないといけません。代替パーツの存在も無しなので作業は慎重に。スタンダードの配線改造はオリジナルトーンにプラスアルファの作業ですがこのスペクトラム5はオリジナルパーツを用いての通常のエレクトリックギターのトーンに戻すという逆パターンの改造です。

しかし、このような改造はビザールマニアから言わせると邪道でしょうね。使える音が1個か無いかがこの手の神髄。昭和のビザール文化を台無しにするのかと怒られそうです。もちろんこれはこれで味わい深く個性的なのですがオールラウンドに使えないギターは結局手放してしまうしかないので思い切って手を入れます。

配線、組込後のお話はまたの機会に。


Teisco ビザール設定

2017-08-14 09:56:50 | GUITARS

ビザールギター特有のトゥワンギーなトーンは4~6弦の弦高を低くセットすると良さは倍増します。しかし、この年代のギターは低いアクションの概念が無くアコースティックギターに準じた弾き心地を狙うのと同時に弦とフレットのバズノイズでクレームが来るのを防ぐのもあったのでしょう。ネックポケットの深さと仕込み角度が一致していないのでブリッジを一番低くしても12フレット上で5mm以上になってしまいます。この大味なセッティングの為、細く低いフレットの処理は当然よろしくありません。厚めのシムでネック角度調整で回避しますが同時に10フレットあたりから上の部分の擦り合わせが必要になります。6弦の12F上で1.1mmまで下げるとトレモロアームの板バネに共鳴し独特な鳴り方をしてきます。1、2弦でのハイフレットのチョーキングを多用するなら低音弦より少しだけ弦高が必要になりますがそこは微調整の範囲で。

このあたりのサーフミュージックに特化したデザインはどうしてもリアピックアップのトレブルが命なのでフロントピックアップはどうしてもオマケのような存在です。フロントピックアップの一番いい鳴り方の24フレットポジションになかなかPUを配置してくれません。デザイン上の理由が一番のようなところが感じ取れますがナチュラルなフロントピックトーンは二の次でリアピックアップとのフェイズ、ミックスをするためのサブPUの立ち位置。このスペクトラム5のフロントPUも低音側はギリギリいい感じですが高音側はセンター寄りな中途半端なハーモニクスになってしまっています。しかし、そこはオリジナルトーンということで。

スイッチの配線レイアウトそのままに配線材やポット関係のチューンをしたくなりますね。より実践的に使えるような改造もいいですがそれよりオリジナルの個性のほうが上をいくオリジナルテスコ最後の入魂のデザイン。板バネのリバーブ感とチューニングの正確さは恐れ入ります。

最近、また復刻された新バージョンもいいですね。ストラトのようなピュアなPUサウンド、ブリッジもモダンに改良されて至れり尽くせり。最新のリイッシュにオリジナルの配線レイアウトを持ってきてもお話にならないでしょう。全てのピックアップからハムバッカーで音を出されても困りますし。