Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

1965年製Fender Super Reverb

2016-01-01 15:15:01 | AMPLIFIERS

今年一発目の大物は65年製のフェンダースーパーリバーブブラックフェイス。ヘッドルームが40Wと比較的小さいが強烈な音量を誇るためPAシステムが無い時代からブルースマン達から重宝されたアンプ。フェンダー伝統のクリーントーンの中にツイードから引き継ぐナチュラルなクランチが小音量から味わえます。ツイードベースマンからマーシャルに流れて行った10×4のヨーロピアンサウンドがアンプリファイドブルースの定番になっていきました。アタックに素早く反応しシングルコイルやハムバッカーを選ばず歌い上げてしまうのがリードギタリストを虜にしていったというのも納得。キャビネットの大きさの割には中軽量でコンボアンプの基準ツインリバーブより運搬はかなり楽なのもポイントが高い。

この個体はシャーシのシリアルナンバーは65年製ですが出力トランスなどのデイトを確認すると66年前期で市場に出荷されたのは66年ということが推測されます。基板の電解コンデンサーなどは交換されていますがそれ以外の基板はオリジナルを保った感じです。いかにもオリジナルの風合いのアルニコCTSスピーカーは実は74年製。デイトが同じなので一度にすべて交換されたようです。63年ころまでのツイード期はジャンセンを使い続けていたフェンダーですが64年以降、ジャンセン、オックスフォード、CTS等多数のメーカーを時期によって使い分けていきます70年代になるとユタ、ローラなども加わりより複雑に。キャビネットはパイン材単板のフィンガージョイントでバッフル板はMDF。現在はフェンダーアンプキャビネットのほとんどがオールMDFなのでパイン材単板というのもこの時代のトーンに影響を与えているかもしれません。

サウンドはダークなディストーションを持っていたツイード期からぐっとモダンに煌びやかになってエレクトリックギターの理想のトーンに変化していったのがこのブラックフェイス。そのためモデルによってのトーンの違いが大きくなりジャンルによっての使い分けがはっきりしていった時期です。アルバートコリンズやアルバートキング、フレディキング等のシングルノートでたたみかけるブルースギタリストにはうってつけのディストーションをもっていたのがこのスーパーリバーブ。オーバードライブペダルにも相性がいいのがツインリバーブとは違うところ。この音量と歪のバランスが良かったのがレイボーンの愛機、15インチ一発のヴァイブロバーブ。これはレイボーン人気と販売量も少なかったため大変なプレミアム価格になってしまいましたがどちらもヘッドルーム40Wというのがオイシイところのようです。

レオフェンダーお得意の小口径スピーカーを複数で使うこのスーパーリバーブは中高域のレスポンスのいい10インチを大きなキャビネットで低音を稼ぎ結果的にフラットで鳴らすというコンセプト。なので同じ40Wの12×2のプロリバーブとはまたトーンが違います。このプロリバーブはJBLなので比較対象にはなり辛いですがツインリバーブライクの澄み切ったクリーンとザクッとしたスーパーリバーブのトーンは対照的。しかしこのころのブラックフェイスはギターやジャンルを意外と選ばないアンプが多いのに気づきます。チャンプやデラックスリバーブもツイード期より倍の音量を誇り、バンドマスターやベースマンもギターで使用できるトーンをもっていて4,5年の短い生産期間でしたがその後のアンプの指針がこのブラックフェイス期に見ることが出来ます。

しかし、50年以上も前のアンプですからどのくらい劣化しているのかは使用してみないとわかりません。そこが難しいところですが、最高なトーンの後に火や煙を吹いたりするのがビンテージアンプ。


Fender Japan Sidekick 30R Tube No2

2015-11-07 23:17:07 | AMPLIFIERS

このアンプの新しいオーナーが自慢の335を持って現れました。ハムバッキングPUがチューブを経由しないリズムチャンネルでも十分な真空管の質感です。根本の音のクォリティがかなり高いサイドキックチューブですがオリジナルのスピーカーケーブルがどうしても非力な感じです。ケーブルはアウトプットの基板から直接出ているのでスイッチクラフトのジャックを増設し超定番のベルデン9497でスピーカーまでのケーブルを作りました。コンボアンプのSPケーブルは短いので影響は少ないですがここが重要なポイントです。接点がタイトになることはライブやスタジオワークでの酷使された内部環境には絶対的な安心感になります。一般の方はアンプの裏なんかは見ないですがギタリストはコンボアンプの電源ケーブルを収納するのに必ずバックパネル部分を使うのでそこでの見た目も大変重要です。

ベルデン9497はこのあたりのチューンナップには必ず登場するアイテムですがコストパフォーマンスはひじょうに高い代物です。オーディオ的なハイやローエンドではなくギターアンプ特有のダイナミクスやディストーションの許容範囲が大きい感じが定番の証かもしれません。黒とオレンジというエマージェンシー的なインパクトも。

この個体自体があまり弾いていなかったような感じですから真空管も新しい状態。どのように馴染んでくるか楽しみなアンプです。


Fender Japan Sidekick Tube 30R

2015-11-04 22:55:05 | AMPLIFIERS

持ち運びがスムースで音量もそれなりにあるアンプはギタリストの理想です。プレイする音楽によりますがここ最近はもっぱらフェンダージャパンのFAT3。小型キャビネットなのにしっかり12インチスピーカーとスプリングリバーブでオールチューブサーキット。30年前のアンプなので入手しにくいのが問題ですが同じバンドのギタリスト用にと探していたらこのFAT3とほとんど同じ大きさのキャビネットのアンプがこの「サイドキックチューブ30R」。

30Wのミディアム出力のトランジスタアンプですがリードチャンネルには12AX7経由のプリチューブサーキット付。当時のカタログをサイトで調べても1986~87年くらいの短い時期のアンプ。この時期はUSAフェンダーブランドのトランジスタアンプを日本で再現するという大きなテーマがありました。また、実践的な30w~50wクラスはツインリバーブの音量が根底にあるように思える位のスケールがありフェンダーアンプという歴史を継承する心意気が伝わるクォリティが感じられます。製造は日本のエルク製。パワー部がトランジスタでも変にクリップしないのでキャビネットの割にはかなりの音量を出力します。スプリングリバーブも本格的な響き。オールトランジスタのリズムチャンネルでもキンキンしない太いクリーンが実はオーバードライブペダルとの相性がよくなります。チューブプリを経由するリードチャンネルはリバーブがキャンセルされ懐かしのブギーを彷彿させる3ヴォリュームコントロールに成り代わりドライブトーンを演出。トラッドフェンダーというよりブギーのマークシリーズを狙った質感があるのはこの時期特有です。今にして思えば懐かしい線の細めな80年代の歪。ドライブを下げてクランチ的に使うとクリーンでも常に12AX7を経由して自然なコンプレッションがキープされます。ヴォリュームを上げて多少オーバーロードさせてもトランジスタ特有の割れる感じは無く、しっとりするのは12インチスピーカーをチョイスしてあることが大きいでしょう。このキャビネット容量だと普通10インチですがギリギリ12インチを収めたのが全体の音質に影響を与えているのは明白です。またこの時期はミュージックマンのアンプに代表されるようにプリチューブ、パワートランジスタというハイブリッド回路が流行始めたとき。現在のハイエンドアンプのように音質を求めてオールチューブ回路&PTPがスタンダードになっていますが、技術的には1950年代と同じなレトロな仕様で何も発展していません。真っ先にハイブリッド設計をしたのがレオフェンダーでしたから基本的に半世紀以上進化していないのがギターアンプの世界です。

90年代にはアンプ製造が次第にアジア各国に移っていきますから純粋なメイドインジャパンのアンプ製造も意外と短い期間ということになります。この時期本家USAフェンダーからも新商品がリリースされていてビンテージリイッシュが発売される少し前の混沌としていた時期でしたがフェンダーブランドのコンパクトトランジスタアンプを日本で製造し世界へというような重要な時期でもありました。

日本が誇るトランジスタアンプの代表格JCとは全く別でダークな60年代のブラックフェイス時期のトーンを世襲しています。最近の小型ハイエンドアンプはヘッドルームを小さくして真空管の歪をより効率的に出力させるデザインですが生バンドでは音量が全く足りません。この時代はまだ高性能なドライブペダルが少なかったこともあり歪がアンプの付加価値として重要だったことも裏付けます。クリーン設定だと50wクラスの音量が味わえ空間系エフェクターとの相性も問題なし。現在では小型トランジスタアンプがアジアメイドの家電のような作りに成り代わってしまっていますがこのアンプはまだ日本の町工場の匂いを感じ取れます。

90年代に入るとワザとらしいヴィンテージリイシュのUSA・Fenderがスタンダードになっていきましたが、80年代のフェンダージャパンアンプのほうがよりヴィンテージの風合いがあり機能的だったことが今になって確認されたのが面白いですね。


Fender Japan FAT3

2015-07-15 14:27:34 | AMPLIFIERS

ピーターソンに引き続き80~90年代を掘り下げる第2弾。フェンダージャパンで80年代の後半から90年代初頭の短い時期に作られた唯一のフルチューブアンプ「FAT3」。同時期に50WのFAT5、12WのFAT1とバリエーションがありこのFAT3は30Wバージョン。80年代からのフェンダーUSAのアンプは市場のニーズとは大きくかけ離れたモデルばかりになり低迷が続きました。古き伝統のフェンダーチューブアンプの根本を見直すことが出来ず、USAメイドに拘り、パーツの全てが自社生産という非効率な形態から脱却出来ずに運搬も困難な重量と大出力の巨大コンボアンプを定番にしていました。次第にレオフェンダーが作ったミュージックマンブランドやピーヴィーのようなローコストで新しいチューブアンプにシェアを奪われる結果になっていきます。

当時のフェンダージャパンの設立経緯やUSAフェンダーとの関係はいろいろな話があるのでここでは省きますが、トランジスタアンプや新しいチューブアンプの開発は本家USAフェンダーでは不可能な状態。そこで短期間で開発するため日本の技術が必要になったのは必然でした。フェンダージャパンのブランドを保有する神田商会は製造工場を持たないので国内の専門のアンプ製造メーカーが設計、製造することに。当時のフェンダージャパンではローコストのトランジスタアンプの開発がメインでしたがあくまでも古き良き真空管アンプの質感を維持したいUSAフェンダーとのギャップも垣間見れるモデルも多くありました。そんな中、オールチューブで軽く持ち運びが出来るコンパクトさ、トーンはツインリバーブ、歪はマーシャルなんていう無理なコンセプトを具体化したのがこのFATシリーズでした。現在だと当たり前の条件のようですがデジタル機器が出始めたハードもソフトも混沌とした時代には難しいアンプのようです。フェンダーUSAがビンテージリイシュを出す前なのでビンテージトーンの要望も確かに高かったのは覚えています。

USAフェンダーの12インチ一発のモデルより一回り小ぶりで出力パワーは2倍以上。アキュトロニクスのスプリングリバーブ搭載でエミネンスにオーダーした特別仕様の12インチスピーカーと6V6×2のフルチューブユニット。トーンはブラックフェイス期に近いタイトなクリーントーンにダイオードクリップを用いない純粋なプリ管をオーバーロードさせる2チャンネル仕様で歪のトーンに関しては有名ヘビーメタルギタリストが監修しています。リアルマーシャルではないですがチャンドラー・チューブドライブに近い粘りのある歪はジャズフュージョンにも対応できるトーンです。シンプルですがシングルコイルからハムバッカーまで調整可能な幅広いトーンレンジは現在のハイエンドアンプに近い感覚。空間系のエフェクトが熱くなり始めた時代なのでセンド、リターンもしっかり装備。

しかし、このスペックを作るためには安くはいきません。このFAT3でさえ8万円強という定価がついていました。実際弾いてみると素晴らしいのに派手さは無くコマーシャル的にも寂しいので製造時期も短く打ち切り、90年代中盤に在庫を叩き売りです。このFATシリーズを最後にラインを動かす日本でのギターアンプ製造は終焉し台湾、韓国へシフトしていきました。

この写真のFAT3をよく見るとロゴもなければノブやスピーカーも違います。このアンプはFATシリーズの開発者から直接譲り受けたプロトタイプで大変レアなモデル。製造前の最終段階に近い試作機なので製造は80年代中盤、スピーカーは70年代のオックスフォード。プルゲインも無ければブライトSWもありません。

ここでは書けませんが当時のUSAフェンダーとの関係や開発秘話など大変生々しいお話をお聞きしました。同時期に出ていた有名なトランジスタアンプシリーズの設計も全てこの方のようです。ということはそのあたりのカタログに書かれていたアメリカのアンプデザイナーが手掛けたというのもかなり怪しい話ですが30年以上前なので時効でしょうね。


PETERSON   P100G

2015-06-08 10:55:00 | AMPLIFIERS

知っている人だけニヤッとするアンプ、イギリスメイドのピーターソンP100G。製造は80年代後半から90年代中盤までと実に短い期間しか作られなかった代物。今ではハイエンドアンプの代名詞的なカテゴリーのビンテージモディファイとPTP等とは全く別のところにハイエンドがあった90年頃に一瞬現れたアンプ。

80年代はチューブアンプの海外2大メーカーとその周辺の小中規模メーカーの吸収や合併でブランドはあるが実物は全く別だったり、50~60年代に設計されたチューブアンプが当時の音楽とミスマッチを起こし始め、多様なエフェクターがリリースされたりと実に混沌とした時期。老舗メーカーもビンテージリイッシュシリーズの開始や小型トランジスタアンプの開発、新時代の高品質ベースアンプの専門メーカーまで出てきて非常に楽しい時代でした。日本ではバブル経済の恩恵もあって輸入代理店も数多く出現とバンドブーム、デジタル機器の登場、CDの売り上げもピークで浮足立っていた割には当時、機材の判別が出来る知識もさほどなく今にして思えば残念な時代でした。そんな隠れた名機を掘り下げる第1弾がこのピーターソンP100G。

今ではあまり見ることのできない無垢マホガニーキャビネットは今見ると多少オジサン臭さがありますが、当時の小型ハイエンドの代名詞ブギーのハードウッドキャビネットの流れで豪華な質感。普通のギターアンプに使用されるスピーカーの5倍もする価格のエレクトロボイス搭載、独立2chのチェンネルスイッチング、アキュトロニクス製のスプリングリバーブと贅沢三昧。重量16kgと大きさの割には重く、余裕の100W出力。密閉キャビのようですがバスレフタイプ、アンプ部とスピーカーをマホガニー単板で仕切り振動の影響を遮断するという凝った作り。センドリターンやプリアウトもあって機能的には十分でこのモデルは生産終了に近い時期のモノ。

さて、サウンドは癖も無くいたって普通。外部エフェクトを効率よく反映させるためフラットなセッティング。ここがいまだにジャズギタリストからの人気が強い要因でしょう。オーバードライブチャンネルはコンプの効いた懐かしい歪で歪んでもクリーンなアタック感が見え隠れするのはレンジの広いエレクトロボイスが要因かも。歪最小でクランチもつくれますが太いクランチを望むならセレッションがベストチョイスでしょう。クリーンチャンネルもマスターボリューム付なのでゲインを上げるとミッドにコンプ感がついてきますが歪ません。フルアコ系やフロントPUの甘いトーンとアタックは絶品です。普通だとジャンルを選んでしまうスタイルですが最近のペダルを駆使するとかなり広くカバーできそうです。

しかし、当時20万円オーバーのハイエンドアンプも既に25年以上経過しているのでトラブルもあります。ガリ、音切れなどの接触不良があるらしくこの個体も問題ないと思いきやスタジオでそれなりの音量だと音切れを起こしました。専門の職人へメンテに出し戻ってきたら絶好調。経年変化の中で素人メンテナンスされていた形跡がありクリーニングでほとんど回避されます。フェーダー用の接点復活剤を必要以上に吹き付けた形跡がありそれに埃がまた吸着してしまうという悪循環が生まれます。基板洗浄とハンダのチェックで終了。チューブアンプのようなメンテは必要ありませんがトランジスタアンプはダメになった時点で音が出なくなるというはっきりした症状があって明確。特に大きい振動にさらされる小型コンボアンプは劣化とともにパーツの接触不良は避けては通れないものです。このピーターソンアンプの売りの一つの独立2chをフットペダルで切り替え機構ですがこのアンプにはフットペダルはついていません。なのでプラグをさしたチャンネルが純粋に使用できてリバーブが常にonになるように改造をしてもらい全ての機能が試せるようになりました。頑丈なキャビネットですがこの容量と10インチスピーカーということでツインのような低音は出ませんがローミッドが明瞭なタイトな音。このあたりは小音量でも生バンドのアンサンブルに埋もれたりはしません。10インチなのに潰れない低音はエレクトロボイスの影響が大きいでしょう。現代の小型で高出力のランチボックスやエレアコ用アンプとは違いよりアコースティックでエレクトリックギターの再生用としてのチューニングがしっかりされています。このサイズで樹脂キャビネット、アジアンメイドで5万円を切れる売価設定が出来るでしょうか。

海外サイトによるとこのピーターソンアンプはイギリスのELVICエレクトロニクスという電子機器製造会社で製造されたらしくアンプ製造の中心人物は「ピートタレット」という人。会社は同族経営で現在はアンプの製造は無く、オーディオ機器、電子機械修理などを継続しているようです。後にも先にもこの時期にこの機種しか作らなかった幻のアンプということになりますね。

構造上、空間系のペダルには抜群の相性があると思いますが歪系のペダルだと勝手が違います。チューブアンプのプリ管に歪を流し込む使い方だと鳴り切りません。ペダル側のドライブを12時位まで上げて歪量はギターのボリュームで調整、ペダルオフでボリュームカーブが変化するのでクリーン時とペダル使用時でのボリュームが2通り出来るのでコントロールが難しくなります。当時はこのピーターソン2台をラックマウントエフェクターで鳴らすのがハイエンド使用方法。ギターのボリュームはフルテンで音量はフットペダルで調整。アンプはナチュラルなPA的な解釈で作るのが流行っていてモダンなジャズ・フュージョン、スタジオ系のギタリストはみんなステレオでした。物量投入の80年代を象徴するスタイル。

しかし、25年前のアンプと最新のデジタルオーバードライブが意外とバッチリなのが面白い。