今年一発目の大物は65年製のフェンダースーパーリバーブブラックフェイス。ヘッドルームが40Wと比較的小さいが強烈な音量を誇るためPAシステムが無い時代からブルースマン達から重宝されたアンプ。フェンダー伝統のクリーントーンの中にツイードから引き継ぐナチュラルなクランチが小音量から味わえます。ツイードベースマンからマーシャルに流れて行った10×4のヨーロピアンサウンドがアンプリファイドブルースの定番になっていきました。アタックに素早く反応しシングルコイルやハムバッカーを選ばず歌い上げてしまうのがリードギタリストを虜にしていったというのも納得。キャビネットの大きさの割には中軽量でコンボアンプの基準ツインリバーブより運搬はかなり楽なのもポイントが高い。
この個体はシャーシのシリアルナンバーは65年製ですが出力トランスなどのデイトを確認すると66年前期で市場に出荷されたのは66年ということが推測されます。基板の電解コンデンサーなどは交換されていますがそれ以外の基板はオリジナルを保った感じです。いかにもオリジナルの風合いのアルニコCTSスピーカーは実は74年製。デイトが同じなので一度にすべて交換されたようです。63年ころまでのツイード期はジャンセンを使い続けていたフェンダーですが64年以降、ジャンセン、オックスフォード、CTS等多数のメーカーを時期によって使い分けていきます70年代になるとユタ、ローラなども加わりより複雑に。キャビネットはパイン材単板のフィンガージョイントでバッフル板はMDF。現在はフェンダーアンプキャビネットのほとんどがオールMDFなのでパイン材単板というのもこの時代のトーンに影響を与えているかもしれません。
サウンドはダークなディストーションを持っていたツイード期からぐっとモダンに煌びやかになってエレクトリックギターの理想のトーンに変化していったのがこのブラックフェイス。そのためモデルによってのトーンの違いが大きくなりジャンルによっての使い分けがはっきりしていった時期です。アルバートコリンズやアルバートキング、フレディキング等のシングルノートでたたみかけるブルースギタリストにはうってつけのディストーションをもっていたのがこのスーパーリバーブ。オーバードライブペダルにも相性がいいのがツインリバーブとは違うところ。この音量と歪のバランスが良かったのがレイボーンの愛機、15インチ一発のヴァイブロバーブ。これはレイボーン人気と販売量も少なかったため大変なプレミアム価格になってしまいましたがどちらもヘッドルーム40Wというのがオイシイところのようです。
レオフェンダーお得意の小口径スピーカーを複数で使うこのスーパーリバーブは中高域のレスポンスのいい10インチを大きなキャビネットで低音を稼ぎ結果的にフラットで鳴らすというコンセプト。なので同じ40Wの12×2のプロリバーブとはまたトーンが違います。このプロリバーブはJBLなので比較対象にはなり辛いですがツインリバーブライクの澄み切ったクリーンとザクッとしたスーパーリバーブのトーンは対照的。しかしこのころのブラックフェイスはギターやジャンルを意外と選ばないアンプが多いのに気づきます。チャンプやデラックスリバーブもツイード期より倍の音量を誇り、バンドマスターやベースマンもギターで使用できるトーンをもっていて4,5年の短い生産期間でしたがその後のアンプの指針がこのブラックフェイス期に見ることが出来ます。
しかし、50年以上も前のアンプですからどのくらい劣化しているのかは使用してみないとわかりません。そこが難しいところですが、最高なトーンの後に火や煙を吹いたりするのがビンテージアンプ。