読書の森

五木寛之『風に吹かれて』前編



1932年、戦前に生まれた五木寛之は未だに青春の面影を遺した風貌をしている。
氏にとって青春とは激しい痛みと輝きの時代であって、それを求め続ける旅人という印象を与える。

『風に吹かれて』は昭和40年代に上梓された氏の代表的エッセイである。
宝石の様な思い出のエピソードが散りばめられた作品だ。

実は私は五木寛之がハンサムだった事も含めて、「女性の事で苦労してない。だから作品中に女性の陰影が書けていない」と小生意気に思っていた。

しかし、氏は幼少期に非常に過酷な運命に直面し、それが氏の女性観の根幹を成している事を知った。



当時の南朝鮮で父親は校長を勤めていた。
父親の転勤で、氏は5回転校した。
周りに日本人はいない。特権階級であると共にかなり孤独な毎日だったらしい。

やがて敗戦。日本人は追われる身になった。
氏は、公けに出来ないほど無残な母親の死を目の当たりにした。

まだ若かった母親の死体を父親はリヤカーで運びボロボロと泣いたそうである。

敗戦後、180度変わった世で教職を続けた父親は元の権威ある父ではなかった。
授業中にやけ酒を飲み、胸をやられて亡くなったのである。

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