圭子の死因は毒物による中毒死だった。
おおよその死亡推定時刻は、正確なところはわからないが彼女が駅に着いてから発見される迄の早朝5時頃だと思われる。
終戦後の混乱期とは言え、純朴な村人が平和に暮らすその地方の警察署にとって、天地がひっくり返る程の大事件だった。
ましてや、村一番の旧家の若夫人の変死事件である。詳しい死因調査をする人材もないし、ましてやその地で科学的分析など出来る筈が無かった。
参考人として、夫の昭雄と娘の希子が呼ばれた。
昭雄が蒼白な顔色をしていたのと対照的に、希子はかなり興奮して紅潮した頬がかえって痛々しく見えた。
母を失った現実を彼女はしっかりと把握出来なくて、感情の起伏が極端に激しい混乱状態にあった。