「もう終わりにしたいと願ってたどり着いたのに、そこにはいつも、新しい旅のはじまりが準備されているのだ」
三浦しをんの傑作、『まほろ駅前多田便利軒』の一節には、深い人生の味わいを感じる。
人は永遠に満つる事なく、旅を続ける動物なのだろう。
正直言って、三浦さんとは世代の差以上に決定的な嗜好の差を感じて、敬遠するところがあった。
しかし、物語の名手である事は間違いない。
淡々とした語り口で、現代の人間像や街の風景を描いている。
そこに、はっとする人生の深淵が覗く。
「この人一体幾つ何だろう?」
まだ若いのに、恐ろしく人生経験の豊かで、達観した大人の女性を想像する。
まっ、ご本人はあまり素顔を見せたがらないようだ。
このまほろ駅前シリーズを書き上げ、三浦しをんが言ったのは、「成仏した」という驚くべき言葉である。
ここに、私は共感を覚えた。
自分の愛する街を、あらゆる人の故郷にして、どこかで見かけるような人物を主役にして、その中で自分の思想を盛り込むなんて、そんな芸当が自分に出来たら。
そして、その作品が目覚しい賞賛を浴びたとしたら、私も本当に「成仏」したい。
読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️
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