没落した士族の息子雄吾は、父の後妻の連れ子季乃と兄妹のように育つ。
父親は亡くなり、穏やかで貞淑な義母と美しく素直に成長した妹。
「兄様」と慕う妹が眩しい。
彼は家を出て西南戦争に加わった。
結果は惨憺たる負け戦、傷ついた心を癒す為に戻った家には誰もいない。
東京に出た雄吾は妹が時めく大蔵官僚の思い人になっている事を知り、衝撃を受ける。
「金が欲しい」
強烈な憎しみが金銭欲を生む事はよくある。
雄吾は西郷札をかき集める。
雄吾の役に立ちたいと懸命になる季乃、そこから陰湿な嫉妬を燃やす夫。
西南の役、西郷札を背景に登場人物はまことに現代的な愛と憎しみの中で、苦悩する。
ラストシーンは秀逸である。
具体的な事は一切触れられず、夜明けに旅立つ雄吾と季乃の姿が描かれる。
叙情性のある絵のようなラストだ。
読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️
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