五、「教会とわたしたち」(354)
4.近代の教会の夜明け ―宗教改革とその後―近代から現代へ
いま、宗教改革に至る歴史を終了する。しかしこの後、現代までの歴史は、来年2017年にはルターのヴィッテンベルク城教会の扉に九五ヶ条の提題が掲げられ宗教改革の大旋風(1517年)が巻き起こされて五百周年を迎える。その歴史を覚えながら、われわれはこの稿において近代から現代へと進む。スイス・ツヴィングリの時代のカトリックの信仰を固守した、いわゆる森林五州の一つ、ルツェルン州古都ルツェルン近郊のスールシーでカトリック信仰をもつ両親の元に1928年に生まれたハンス・キュンク氏の著「キリスト教思想の形成者たち」などを参考にしながら聖書の使徒パウロから始まった歴史を辿ることにする。(ここまで前回)
「パウロから始まった」といっても、その名のつく手紙という形で聖書に残され十三通は、宣教目的によって書かれたものであって、歴史的目的を持って書かれたものでない。しかし、わたしどものこの稿で採用されないが、ハンス・キュンク氏のその書き出しは、「最初のキリスト教著作家であり神学者であったユダヤ人パウロは、キリキヤ(今日のトルコ)の町タルソスの生まれである。」という書き方で始まる。まさに歴史書としての考察であり、聖書は、使徒言行録9章11節から採られた。聖書にはその種の時代考証的な部分がかなり含まれているので、適切な編集作業を伴わせるなら、そのまま初代教会の歴史書の価値を有するとするのが大方の研究者の評価である。さて、初代教会の(つづく)