根子岳(2,207m)
「~ 根子岳と四阿山は一つの火山であったのが、爆発して山頂部がなくなり、外輪山としての根子岳が残ったのだという。大明神沢を流れる水は神川となって千曲川にそそぐ。上田から長野に向かう車窓から、左に千曲川、右に根子岳あたりの山々を見る度、あのウメバチソウは今もあるかしらとなつかしい。 ~」
(田中澄江『花の百名山』(文春文庫))
長野へのメインルートが信越本線から新幹線に変わった後でも、四阿山は車窓から眺めることができます。
地形図を広げると、浅間山の北側の斜面から四阿山と根子岳にかけて、等高線の間隔が広い場所が広がっています。
同じ火山でも、浅間山と四阿山・根子岳は全然違います。「爆発して山頂部がなくなり」、その結果四阿山と根子岳は標高と個性の違う二つの山になりました。浅間山にも四阿山と根子岳にも自然の絶妙さがあります。
天気図を見ると移動性高気圧に覆われています。予報は晴れで、風も弱く、気温も12月にしては高そうです。冬でも遠くの山へ行きたいと思うのはこういう日です。
4年前に、四阿山と根子岳を同じ日に登りました。その時、根子岳からの下りには急坂が一つもありませんでした(急に土砂降りに見舞われたので楽な下山ではなかったです)。根子岳なら雪があっても歩けるだろうと思いました。
朝は寒く、土はカチコチで、モヤシのような色の霜柱を見ました。牧場に動物はいません。
登山道の部分だけ雪があり、両側には積もっていないという景色が続きました。頂上が近くなると、少しだけ雪の面積が増えてきました。
ササ原の穏やかな雰囲気に、大きな露岩の迫力が溶け込んでいます。根子岳より大きな四阿山に向かって少しだけ進んでみると、雪の量が一気に増えた感じがしました。
眺望は抜群でした。後立山連峰が小蓮華岳から始まって蓮華岳へ続き、南下すると槍ヶ岳と穂高連峰、さらには乗鞍岳まで、北アルプスが一直線に続いています(小の付く蓮華岳と付かない蓮華岳は違う場所にあります)。青空の中から山が浮き出てきたように見えます。
御嶽山と乗鞍岳の大きさ、火打山の白さ・雪の多さは、遠くからでもはっきり分かります。
浅間山は、火山灰の灰黒色と雪の白色しかないはずなのに、極彩色の雰囲気になっていました。
富士山は裾野が直線的で、茶碗か杯をひっくり返したようです。もし杯とするなら日本一大きな杯です。志賀高原の麓、渋温泉で買った日本酒の味を思い出します。
頂上からは、長野県で登ったことのある山は、全部見えていたと思います。素晴らしい天気でした。
登山道は雪が積もって岩が隠れ、かえって歩きやすくなっていました。軽アイゼンは念のため持って行ったものの、使う必要はありませんでした。
(登頂:2016年12月初旬)