西吾妻山(2,035m)
「~ 一口に吾妻山と呼んでも、これほど茫漠としてつかみどころのない山もあるまい。福島と山形の両県にまたがる大きな山群で、人はよく吾妻山に行ってきたというが、それは大ていこの山群のほんの一部に過ぎない。
この山群には一頭地を抜いた代表的な峰がない。それでいて、東北では貴重な千九百米以上の高さを持つ峰が、十座近くも群がっている。しかもそれらの峰がいずれもずんぐりした形で、顕著な目じるしがないので、遠くからこの山群を望んで、どれがどの峰かにわかに識別しがたいほどである。 ~」(深田久弥『日本百名山』(新潮社版))
吾妻山は、たしかに「顕著な目じるしがない」山ですが、「大きな山群」であるがゆえ、飯豊や蔵王など他の東北の山々からもよく分かります。その中では、西吾妻山が最高峰で、連峰唯一の2,000m峰ですが、最も高いこと以外にははっきりした特徴のない山だったと思います。
金曜日の夜行バスで、新宿から山形へ向かいました。到着しても眠く、待合室の椅子で居眠りし、米沢行きの始発電車に遅れてしまいました。
若女平登山口から急な坂を歩き始めました。半分くらい紅葉の進んだブナが終わり、針葉樹の森に変わる頃、雪が出てきました。
西吾妻小屋のまわりは水墨画のような景色が広がっています。遠くの飯豊連峰の稜線は、真っ白です。
雪が斑点模様にある小さな丘のような場所が西吾妻山の頂上でした。標識以外は何もなく、眺望もありません。大菩薩嶺に似ていましたが、もっとあっけない頂上だと思いました。
下山は、北望台からリフトとロープウェイを乗り継いで、楽に帰ることにしました。天狗岩を過ぎて、薄く雪の積もった岩を慎重に下ると木道に出ました。ずっと曇っていた空がようやく晴れてきました。山に高原をそのまま足したような吾妻山の広さを、少しだけ見ることができました。
帰りは、白布温泉「中屋別館不動閣」のお風呂に入浴しました。天元台ロープウェイの乗り場から歩いて行ける距離です。ここには「オリンピック風呂」があり、1964年東京五輪の開催を記念して命名されたそうです。聖火リレーが山形県を通過する時、山形県庁で点火式が行われ、その際の聖火台が白布温泉から石を切り出して制作されたとのことでした。
点火式のあった旧・山形県庁は1916年築のクラシックな建物で、重要文化財です。
浴場はとても長細く、端に立つと、こんなに長細い浴槽は見たことがないと思うくらいでした。温泉はかけ流しです。ロビーの古風な内装も印象的で、ソファーには真っ白な布がかけられていました。ここでいただいた生ビールが美味しかったのはいうまでもありません。帰りに湯飲み茶わんを頂きました。今度はぜひ宿泊してみたいと思います。
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【若女平登山口から西吾妻山へ】
若女平登山口10:00→西吾妻小屋13:35→西吾妻山13:51→天元台リフト乗り場15:35
※危ないところはありませんが、長い間急な登りが続きます。西吾妻山からの帰りでは、天気が良ければ広々とした素晴らしい眺望が味わえるはずです。
(体力●●●○○ 技術●●●○○) (登頂:2013年10月中旬)