白馬岳(2,932m) ((2)のつづき)
白馬大池から、長野と新潟の県境を登って行きます。登山道は、県境の稜線ではなく、少しだけ新潟県寄りにつけられています。
雲が出て遠くの方は見えません。足もとの砂の色は白い雲の色とほとんど同じです。白馬乗鞍岳の噴石はここまでは届いていないようです。
途中の、2,766mの小蓮華山は、新潟県の最高峰です。頂上には大きな鉄剣がありました。
北の方になだらかな雪倉岳が大きいです。積雪の多い北アルプスらしい名前ですが、北アルプスで漢字の「雪」が付く山は、他に見当たりませんでした。『日本山名事典』(三省堂)をひくと、乗鞍岳の乗鞍23峰の一つという、雪山岳(ゆきやまだけ:2,880m)がありましたが、地形図には出てきていません。
雪倉岳の麓には昔鉱山がひらかれていたといいます。その名残りで、鉱山事務所跡や精錬所の跡を通る、「鉱山道」という登山道もあります。
「~ 二時間ののぼりで蓮華銀山にやって来たが、監督の人が大変親切に私たちを迎えてくれた。今採掘している坑道に私を案内してから鉱石の見本を見せ、この鉱石の質をどう思うか、鉱脈は深く掘っていけそうかどうか私の意見を話してくれと言った。この蓮華鉱山のほかに二つの鉱山がもっと北よりの谷間に開かれていて、これらの鉱石の採掘総額は約三十五万ポンドである。精錬の結果約三パーセントの銀が取れるという話だが、私には正しいかどうか分らない。 ~」
(『日本アルプス 登山と探検』ウォルター・ウェストン著・岡村精一訳(平凡社))
ウェストンは、明治27年に白馬岳へ登りました。本では、白馬岳のことは「大蓮華」と表されています。彼は鉱物の専門家ではなかったと思いますが、いきなり「採掘総額は約三十五万ポンドである。」という数字がでてくるのが面白いです。
北アルプスには、モリブデンを採掘していた大東鉱山もありました。雪倉岳の蓮華鉱山よりさらに奥深い場所にあります。その場所、高天原(たかまがはら)へは、どのルートから登っても1日で辿り着くのは難しいと思います。
白馬岳のふもとの小谷村では、2016年から地蔵鉱山で金が採掘されています。
小蓮華岳からさらに進むと三国境です。名前の通り、長野県・新潟県・富山県の境で、日本で三番目に標高の高い三県境です。北アルプスにある三県境は、三俣蓮華岳の頂上とここだけです。ただし、登山道は実際の三県境より少しだけ西側にずれています。
白馬岳の頂上は、三国境からおよそ1時間でした。
(登頂:2013年9月下旬) (つづく)