尾瀬・燧裏林道~赤田代~ヨッピ吊橋~鳩待峠 ((4)のつづき)
深い森がずっと続きます。こんな道なら、ずっと歩き続けていても苦になりません。
ブナの樹が多いのは、燧裏林道の特徴のひとつです。東北の山に登ると、ブナを見られるところは多いですが、この地のブナは何といっても背の高い木が多いのです。
燧裏林道では、ひとつひとつの樹に驚くと言っても言い過ぎではありません。
幹の大きく曲がったダケカンバがあります。ぐるっと曲がった部分に、濃緑のコケが生えています。曲がり方が、伊豆の天城山で見た「ヘビブナ」に似ています。小さな(ベビー)ブナではなく、ヘビのように曲がっているので、この名前が付いています。
天城山のヘビブナ(2017年4月)
ダケカンバは柔軟で、雪崩に遭っても生き残ることができるという話を、富士山の六合目で聞いたことを思い出します。その場所は、やがてダケカンバだけの森になるだろうとのことでした。
ノメリ田代から40分ほどで天神田代です。とても小さな湿原がありました。傾斜もしていませんでした。
ここからは、渋沢(しぼさわ)温泉小屋の跡まで登山道が通じていました。2009年に発行された『ヤマケイアルペンガイド3 尾瀬』(花畑日尚著・山と渓谷社)では、このコースが紹介されています。
「~ ここにはみごとなブナ林が続いている。 ~」
とあるのを読むだけで興味が湧きますが、今は歩くことはできません。壊れた道標には、「通行禁止」と貼り付けられていました。
草が生い茂っています。これでは通行禁止でなくても歩けません。道は、自然に還りつつあるようでした。5年前に同じ場所に来た時より、その度合いは進んでいるように見えました。
(写真:2020年7月中旬) (つづく)