面白山(1,264m)
深田久弥は、『日本百名山』で雪を纏った火打山のことを、
「~ ところが火打だけは完璧に白かった。こんなに一点の黒もなく真白になる山は、私の知る限り加賀の白山と火打以外にはない。 ~」(『日本百名山』(新潮社版)) と激賞しました。
最も白い山のひとつが加賀の白山であるとして、最も面白い山はどこかと聞かれれば、その名の通り「面白山」です、と答えるのも面白いと思います。
『日本山名事典』(三省堂)をひくと、「面白山」という名前の山はただ1座、宮城県と山形県の県境にありました(ほかに、「面白峰」という810mの山が福島県喜多方市にあると出ました。)。
面白山は字の通りなかなかいい山でした。歩き始めからクリやブナの森。ブナに似ているけれど、幹模様のはっきりした樹があると思ったら、「こしあぶら」という札が付いていました。「材質が柔らかくきれいなので、コケシやオタカポッポの材として使用される」とのこと。
ちょうど脱皮しようとしているセミを見ました。いつもセミは、鳴き声は聞こえてもどこにいるかは探そうともしないのですが、今日はすごいタイミングのものを見つけました。
途中の「三沢山」で展望が開けました。
山頂には、「面白山大権現」という大きな石碑があって、石碑よりずっと小さいお地蔵さまが佇んでいました。南には厳つく盛り上がった大東岳。こんなに暑い日ですが、谷筋にはわずかに雪が残っています。そして、北側の山々は、どれがどの山かはどうでもいいと思うほどの深い原生林で埋め尽くされていました。
帰りは稜線をたどって「長左衛門平」まで歩き、そこからブナの森を下ると沢沿いの道に出ました。簡単な渡渉もあって、東北の山に来た感じがします。最後は岩盤の渓谷と滝を対岸から眺め、JR仙山線の面白山高原駅に出て、一日の行程が終わりました。
この駅には「スノーパーク面白山」というスキー場がありますが、残念ながら休業中です。冬になるとスキー場への道路は通行止めになるため、鉄道でしか行けないスキー場であるといいます。2人乗りリフトの搬器を覆い隠すように木の枝が伸び、長い間使われていないと分かります。
面白山高原駅を出るとすぐトンネルで、入口は山形市、反対側の出口は仙台市です。「仙山トンネル」は、昭和12年に開通した5,361mのトンネルです。開通当時は日本第3位の長さでした。
それでも、線路はできるだけ登れるところまで登っています。その方がトンネルの長さは少しでも短くできるからです。
また、トンネルは山形側からも仙台側からも登りになっていて、トンネルの中に最高地点があるといいます。水平に掘った方が簡単ではないかと思いますが、地形上の理由があるのでしょうか?
(登頂:2018年6月上旬)
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【面白山】
天童高原キャンプ場10:00→(西尾根コース)→三沢山11:57~12:07→面白山13:01~13:31→長左衛門平15:21→面白山高原駅17:12
※東北ならではの、鮮やかなブナの新緑を手軽に楽しめる、交通至便なコースです。
帰りは長左衛門平を経由すると、沢沿いの道もあって楽しいです。
だいたい分かりやすい道でしたが、崩れかかっているところが一部あったように思います。
(体力●●●○○ 技術●●●○○)