彼岸花を見ない

いつもの散歩道。
ここはモコが落っこちていた場所。
葛の花びらが散り敷いている。

朝は遅くなった。
夜と昼の長さが等しくなる秋分の日が近い。
彼岸花をまだ見ない。
これから咲くのか？
突然に咲いて驚かす花だから
咲くまで居場所が分からない。
夏盛り近くの総合病院から緩和ケアに移って、
帰りたかった自宅に夫を連れ帰る車窓に続いた彼岸花が忘れられない。

墓参りはした。
小さな缶ビールをまた供えた。
盆の缶がなかったから親戚が参ってくれて処分してくれたか。
夫方の親類縁者と並ぶあの墓はどうも遠い人の物のように感じる。

骨ひとつ小袋に入れて持っていても良かったかとも今思う。
あの時は矢に雲に全部夫の匂い気配のある物から遠ざかりたかった。
居ない事を思い出させるすべてを消したかった。
こういう気持ちになるのは９年の時間経過が成せる技か？

そのうち咲く彼岸花を待っている。
地球内季節時計が狂ってしまわなければそろそろ姿を見せる頃。