198円でパックいっぱいのせぶろいわし。
つめたい水で頭と中骨、ハラワタを掻き出して、
透明なふたつの刺身に裂く。
ざるに置いて軽く水気を切って、身をくるりと丸めて
ひとつひとつ平たい皿に並べる。
ふぃんふぃんは匂いを嗅ぎつけて刺身になるまで待てない。
流しに立つ私の肩に飛び乗って、手元を覗き込む。
5キロ近い重みを右肩に感じて、
しかもじとっとよだれを垂らしそうな目線が
あつくるしく重苦しく
人間さまより先にお猫さまに差し上げる。
軽く包丁で食べやすく切って猫鉢に盛る。
ようやく肩から降りていただける。
歯がないのに歯茎でこう言うのは噛む。
日頃のとろみ食がウソのよう。
雨の中、息子はカウンセリングに行っている。
仕事場近くの駅からバイクで帰ってくる。
きっとずぶ濡れでキレそうになって帰るに違いない。
連れてゆけばよかった。
テーブルには交通センターからのおそらく交通違反金支払い用紙が
息子宛てに届いている。
不機嫌の倍化が予測される。
今日は肉料理でない。
蕗も灰汁を抜いて皮をむいて油揚げといりこで炊いてある。
息子の好みじゃない。
不機嫌さが増さないかしらん?
私は職場の健康診断で前年と同じく、最低血圧が100を越えていた。
やばいなぁ~
息子好みの料理を一緒に食べてはいけないのだろう。
急日頃忙しくて食生活が適当なのもいけない。きっと。
反省もあるのか
休日には、素朴で少し手間のいる料理が作りたくなる。
予想どおり、天気が気に入らないと
びしょ濡れで不機嫌指数頭沸騰で帰ってきた。
沸かしてある風呂を勧める。
昼を4時頃食べたから夕食はずっと後でと言い放って風呂へ。
上がると眠気がきたらしい。
せぶろとムスビだけ軽く食べて早めに寝るという。
息子が食べるとは言っていない野菜の煮物も小鉢でさりげなく運んで
最近、好んで食べるからしめんたい入りのむすびをあつあつご飯で作ってやる。
早くもふぃんふぃんは息子のせぶろを狙っている。
しかたなく猫と分け合って
食欲がないと言った割りにちゃんと食べる。
生意気にもせぶろは新鮮だとノタマウ。
瀬戸内海に住んでいるおかげで確かに新鮮な物が口にできる。
見たくもないだろう違反金納付書を眺めている。
15キロから20キロ速度オーバー。
罰金7800円也。
誰でも気分の悪い違反金だけど、思ったほど落ち込まない。
いつの間にか帰ってきた時の不機嫌さも消えている。
食後に、ほうじ茶をすすって
近所の知的障害者施設で製造販売しているクッキーをつまんで
『猫の顔はなぜ真面目くさっているか?』
なんてたわいない話をする。
毎週カウンセリングがいいのかな?
息子のおちつきに安堵する。
本当に眠かったらしい薬を飲んで二階へ上がっていった。
めずらしく平穏な休日の夜。
おまけに
明日も休みだと思うとなんて気分が軽いんだろう
ふっふっふ