あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

たそがれどき、かわたれどき。

2010-08-19 23:54:59 | 本(純文学・中間小説)

ベンジャミン・バトン  数奇な人生 (角川文庫) ベンジャミン・バトン 数奇な人生 (角川文庫)
価格:¥ 500(税込)
発売日:2009-01-24
私は読書日記を書いているくらいですから、本を読むのはとても好きです。

でも、それで読書家だと誤解されるのですが、私は決して読書量は多くないし、読むスピードはむしろ遅いんです。

なのに欲張りで本を図書館でも借りますし、友達にも借りてしまう。

そうして、図書館のは返却期限がありますのでつい優先してしまい、友達のがなかなか読めない。

あまりにも借りっぱなしなので、最近反省して読んでる最中です。

この本は、そんな本の一冊。借りたのは映画化作品の公開時でしたが、読んだのはついこの間。(ご、ごめん……)

ブラピ主演の、不思議な映画の原作。老人で生まれて、成長するたび若返っていく男の、奇妙な人生の物語。

友達にごく短いストーリーだと聞かされていましたし、アイディアストーリーというか、コントのようなショートショートを想像していたのです。

でも読んでいて、すぐ気がつきました。これは怖ろしい物語なんだと。

人間が青春期を過ぎ、若さを失っていくのは寂しいことだと思っていました。そうしてさらに、老いて体も動かなくなり、いつしか記憶さえ曖昧になっていくのは、怖ろしいことだとも。

けれど、それをくるりと裏返し、若返っていっても、やはり残酷な結末が待っているのでした。

夜に入ってゆく時間を『誰そ彼』(たそかれ)、明け方を逆に『彼は誰』(かはたれ)と、昔の人は呼んだそうです。

夜に向かっても、朝に向かっても、結局人間は薄闇の中に消えて行くだけなのか、と思うと、怖ろしく、またもの寂しくなったのでした。

映画はまだ、観ていません。この物語は映画で、どう描かれていたのか、気になりました。

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金も銀も。

2009-04-21 12:19:17 | 本(純文学・中間小説)

LOVE LOVE
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2005-09

ひきつづき『正直書評』の話なのですが。

代表で上の本をあげましたが、(『アラビア夜の種族』という魅力的なタイトルの本に魅かれたけれど、まだ一冊も読んでいない作家なので)書評に取り上げてある本、かなり、読みたくなりました。

本人が“ガクブン読み”と書いている通り、海外文学も多数あげられていて、わー、私海外文学って全く読んでないなーと実感。(とりあげられている本でかろうじて持っていたのは『わたしを離さないで』のみ!)読んでないだけにそれほど興味なかったけど、すっかり洗脳され探したくなりました。

もちろん日本作家のものも。金はもちろん、銀も結構読みたいのありました。

けど、鉄はさすがに読む気がしなかったのはなぜ。

私は読書についてもバカ舌で、あんまりけなされていると“そんなにひどいなら読んでみたい”と思う悪食なのですが。

それだけ書評が的確なんだろうなー。でも、それだけに、けなされた方は怒るわなー。

でもほんとうに、袋とじの表紙にもあるとおり、鉄本もほんとうに誠実に丁寧に読解されているんですけどね。

愛されている本は幸福です。

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月下の門

2009-04-11 23:57:08 | 本(純文学・中間小説)

あ・うん (文春文庫) あ・うん (文春文庫)
価格:¥ 460(税込)
発売日:2003-08
今日、松本清張原作のドラマ、『駅路』を観た。

脚本は、故・向田邦子氏。

もの悲しいストーリーを追いながら、ふと、以前見た雑誌の向田邦子特集で、彼女の自宅の玄関に、“僧は敲く(たたく)月下の門”と書かれた額が飾られていたのを思い出した。

(わざわざ書くまでもないとは思うが、一応書き添えると、“推敲”という言葉の元になった故事の一節)

あれほどのセリフと文章を書く、ほんとうに目を見張るほど、というか、舌を巻くくらいというか、真実巧いひとなのに、推敲をこんなに大切にしているなんて、と、頭が下がったものだ。

彼女の脚本は、ときに人間の中に潜むおそろしさを鮮やかに浮かび上がらせる。台詞の中の刃に切りつけられるように思うほどだ。今回のドラマにも、それはあった。(たとえば、結末近くの、ヒロインの従姉の独白の中に)

実は、上にあげた一見しみじみとした友情物語の中にも、それはあるように思う。

もっとも、この『あ・うん』ドラマの方を観た少女の頃は、それには気づかなかったけれど。

そういえば、今回の『駅路』には佐藤春夫の詩が効果的に使われていたけれど、『あ・うん』ではヴェルレーヌの詩が印象的だった。

あと音楽。『駅路』ではたびたび、バックに『真珠採り』の“耳に残るは君の歌声”が流れていた。切ないメロディーを、悲恋にそわせようと思ったのは誰なのだろう。

今夜は、その旋律が頭から離れないまま眠ることになりそうだ。

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