よい香りのする皿 価格:¥ 1,785(税込) 発売日:2008-07-25 |
この本を図書館で見かけて、きっと面白いだろう、と思って借りてきた。
平松洋子さんの本は、『おいしい日常』を持っているけれど、そちらもこの本も、思わず読み手も書かれている料理が食べたくなるような、美味しいものに対する愛情にあふれた文章でいっぱいなのだ。
たとえば、こんな文章。
“ゆっくり起きた日曜の朝、トーストをこんがり焼く。きつね色の四角のまんなかにバターのかたまりをのせると、黄色い底辺がゆるゆると崩れはじめる。待ってました!角をなくしてとろけてゆくから、思わず頬をゆるめてバターナイフを握り、ぐーっと引き伸ばす。すると、まろやかな風味がきつね色の香味にからみ、かりかりの表面に沁みこむ。ポットの中からアールグレイの香り。たまらない。”
あーっ、バタートースト食べたい!って気になる。かとおもうと、こんな文章もある。
“何も食べていないのに、ひと皿の料理に助けられることがある。空腹だけれど、豊かな気持ちに満たされるのだ。唐突に思い浮かぶ。(そうだ、うちに帰ったら、あれを食べよう)すると、にわかに体温が上がる。《中略》早くうちに帰りたい、おいしいものが待っているから。それは、自分だけで夢想する快楽のひとときだ。それがなんと贅沢なことかと気づいたのは、じゅうぶんおとなになったのちである。ひそかな贅沢はあんがい手近なところにあると知ったのだった。いやそれどころか、この自分の掌中にあったとは――。”
わかるわかる!って呟いてしまう。ああ、あれを食べよう、ってわくわくした気持ち。
そして掌のなかの贅沢、掌のなかの幸せ……。いいなぁ、って思う。
レシピも、作ってみたいと思うもの、色々ありました。
綺麗な色合いと意外な組み合わせが気になった『春菊とプチトマトのおつゆ』、お酒に合いそう、『じゃがいもの甘辛』、衝撃の(?)『ゴーヤしりしりヨーグルト』!
まだ掌中の贅沢には程遠い私ですが、すっかりおいしい気持ちになった本だった。