これが、今年最後の記事になります。
去年は、老猫あや子と一緒に過ごした年の暮れでした。
それが、あの子が今はそばにいないのが、やはりしみじみ淋しいです。
そうして、あや子については、忘れられない、忘れたくない思い出があります。
猫と暮した事のある方は分かるのではないかと思いますが、猫がニコッとすることってありますよね。
猫に馴染みのない方はまさかと思うでしょうが、猫はたしかに犬より表情筋が少ないようですが(だから時々真顔に見える)動物の中では表情が豊かな方だそうです。
そうしてその表情の中に、確かに笑っている、と思える顔もあるのです。
けれど、あや子は晩年、たぶん体調が悪かったのでしょう、寝ているばかりであまりニコッとした表情を見せなくなっていました。
それが、逝く二日前、私が勤め先から帰ったとき、めずらしく顔をあげてこちらをしっかりと見て、ニコッとしたのです。
“ああ、良かった。やっと帰ってきた”そんな表情でした。
猫に死の概念はないでしょうが、定めの刻のようなものが感じられているようなそぶりが、思い返すとありました。
ペットを飼っていらっしゃる方は、動物の体内時間が驚くほど正確なのを御存じでしょう。
あや子もそうで、当たり前の時間に帰ってくるときは迎えに出ないのですが、それより遅いと迎えに出て、その時間が遅くなるにつれ、歓迎の度合いも大きくなったものでした。
夜はみんなが家に帰ってくるもの、という感覚があるらしく、私だけでなく弟が遅くなっても気にしているのが分かりました。
あのときも待っていてくれたのだと、思い出すたびちょっと切なくなります。
あや子がこちらをまっすぐ見て微笑んだのは、それが最後になりました。
皆さまはどんな年の瀬をお過ごしでしょう。それが、幸せなものであるようお祈り申し上げます。
それでは、どうか良いお年をお迎え下さい……。