この話、以前にもしていたらすみません
私は、以前も、そして前回の記事でもちょっと書きましたが、BLが実は苦手。
(同性愛の描写や、ゲイの人が出てくる作品が苦手、というわけではありません。翻訳もののミステリや風俗小説、青春小説などに出てくるのは気にならない)
そうしてそれは、子どもの頃に読んだ、石森章太郎氏の作品によるものではないか、と自己分析しているのです。
小6か、中1の冬だったと思います。近所の奥さんが、息子が読んでいたものだけど良かったら、と雑誌を十数冊ウチに持ってきました。私は読み物が好きだったので、本をいただくことがたまにあったのです。(別の近所の奥さんに『ジェイン・エア』を、母の友人のまた別の奥さんに赤川次郎氏のミステリーをたくさんもらったことも)
雑誌の大半は『明星』でした。そのころは芸能人にあまり興味がなかったのでそれは1回目を通したら処分したと思います。嬉しかったのは『スクリーン』などの映画誌でした。(洋画に興味を持ちはじめた頃だった)そうして1冊だけ、その中に『プレイボーイ』誌が入っていたのです。
その中に載っていた漫画が、『鳥の眼』という石森章太郎(当時はまだ石ノ森、ではなかった)氏の作品でした。美人女性探偵(?ちょっと探偵にも謎がある)が主人公の『WHО』というシリーズの一編でした。ミステリーです。
野鳥を撮るのが専門のカメラマンが、ビルから転落死する。週刊誌は、彼が言い残した言葉を“鳥になった”と書き、ノイローゼによる自殺、と決めつけるが、それに納得できない婚約者が、探偵のところに依頼を持ち込む。
最後の言葉を実際に聞いた人は、“トリオめ”と言っていたように聞こえた、という。トリオ、3人組のアイドルグループと、死んだカメラマンはトラブルを抱えていたらしい、というのだ。
アイドルグループの3人のうち2人は、同性愛の関係で、それを写真を撮っていて偶然目撃したカメラマンが、潔癖な性格からそのことを公表するつもりだったのではないか、と当初探偵は推理する。
けれど、アイドルの1人は、“自分たちの関係はファンの間では公然の秘密であり、いまさら公表されても困らない。そんなことで殺人を犯すわけない”と一笑にふす。しかしやがて、ダイイング・メッセージが“鳥になった”でも“トリオめ”でもなく、“鳥の眼”だったのではないかと探偵が気づいたことから、事件は意外な結末に……。
というストーリーだったと記憶しています。今も忘れられない作品です。ミステリータッチの漫画に触れたことがあまりなく新鮮だったし、ストーリーも面白かったのです。
けれど、アイドル2人の、男性同士のキスシーンは、当時の私にはショックなものでした。
もっとも、アイドルの描き方は石森さんの年代のせいでしょうか、グループサウンズのメンバーに近かったのですが、それでも青年たちの容姿は平均以上です。絵柄的には少しも汚くない。むしろ、石森氏描くところの美少年、美青年というのはデリケートかつセクシーなので、なかなか美しいシーンだった、と思います。
でも、違和感というかひっかかりというか、不思議な感情が閃き、それがプチ・トラウマになったのかなぁ、と自己分析しております。
ちなみに、この作品マイナーだと見えて、検索しても私には探し出せませんでした。
でも短編ミステリーとしてはとても心に残る、好きな作品で、苦く切ない結末をもう一度読み返したい、とも思っています。