次にご紹介する料理書は、“ANCIENT COOKERY. A.D. 1381” という料理書からです。この料理書はザ・フォルム・オブ・クーリィを編纂する際のメモ書、あるいは下書き、差し替えの類であると言われています。ここから次のレシピを取り上げました。
41.ローズ
薔薇の花を用意して水でよく洗い、その後モルタルの中で潰す。その後アーモンドを用意して混ぜて煮る。シャポンの肉又はメンドリの肉を用意して小さく裂く。それをモルタルの中でよく潰す。それを薔薇の中に入れて肉とミルクをよく混ぜる。肉を濃くする。その後それを火にかけてボイルする。そこへ砂糖、サフランを入れてよく色を付け薔薇の葉と花を前に並べてサーヴする。
やはりフランスの影響が強く残っていて、タイユヴァンのレシピに似ていますが、イングランドの意地を見せつけるように、このレシピでは生の薔薇の花と葉を使ったものとなっています。
A woodcut from William Caxton's (c. 1422 – c. 1491;印刷業) second edition of The Canterbury Tales printed in 1483
ジェフリー・チョーサー( Geoffrey Chaucer ca. 1343 – 1400/10/25)がこの頃にカンタベリー物語を世俗の言葉である中英語を使って執筆したことから、「国家」意識がわずかながらもイングランドに芽生え始めた時代だったということが窺えます。料理書にもそのことが垣間見えます。