Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

ダマスクローズ 66

2020年06月08日 | ダマスクローズをさがして — Ⅱ

パフュームといえば、美しい横顔と薔薇の香を愛でるようなうっとりとした表情の女性のポートレートを思い出します。北インド、ムガル帝国の第4代皇帝 Jahangir(ジャハーンギール、1569/8/31 – 1627/10/28 )の妃 Noor Jahan(ヌール・ジャハーン、1577/5/31 – 1645/12/17 )です。才色兼備の女性で、健康の優れない彼に代わって事実上の皇帝として政務に携わりました。

                  

                   Noor Jahan(ヌール・ジャハーン)  

         

                Jahangir(ジャハーンギール)

二人が手にしているのはそれぞれ、薔薇香水と薔薇の花。

 

ジャハーンギールは、『itr(イター:花から作るエッセンシャルオイル)を作り出したのは私が統治していた時代だ。妻ヌール・ジャハーンの母のアスマット・ベグムが作りだした。』と自伝トゥーズキ・ジャハーンギーリー(Tuzuk-e-Jahangiri)の中に書いています。

アスマット・ベグムがローズウォーターを作ろうと、瓶からローズウォーターを容器の中に注ぎ入れた時、表面に脂が浮いていたのを見つけました。一滴とって手の平で擦ると一度にたくさんの赤いバラのつぼみが咲いたような強い香りがしました。。彼女は沢山のローズウォーターを作るときにそれを少しずつ集めたのです。

他にこれよりも優れた香りはありませんでした。消えた心を回復させ、枯れた魂を取り戻してくれる香りがしました。

その発明への報酬として、ジャハーンギールは一連の真珠をアスマット・ベグムに贈り、彼女を激励しました。 これ以降、itrs※1 を使うことが王室で流行し、季節に応じて異なるitrs が使用されるようになりました。贅沢を競い合い、徐々に香水を使うことがライフスタイルとなっていったのです。 後期のムガル人は itrs をよく使用し、ハーレムカスケード、タンク、噴水に流れ込み、実際にそれらを浴びたと言われています。

ムガル時代には多くの香水が普及し、人々の間でも非常に人気が高まりました。次のようなものがあげられます。

 

肌を新鮮に保つために使った麝香(猫)、ジャスミン、ローズウォーターで作った香水。

Santukは肌を新鮮に保つために使用され、Argaja は夏に肌を涼しく保つために使用されました。

アロエウッド (aloewood)※2、チャンダン(chandan、サンダルウッド、白檀)※3、ラダン(ladan)※4、乳香(loban)※5、デュップ(dhup)、ニオイスミレ(banafsha)※6、チャリラ(chharila)、ローズウォーターを加えて作ったお香ルーアフザ(Ruh-Afz)※7。

龍涎香からの特別なプロセスによって準備されたお香グルカマ(Gulkama)。

ラダン、沈香、その他の成分を含んだ香りの石鹸(Opatna)。

沈香から作ったアビルマヤ(Abirmaya)。沈香でできた線香ブフール(Bukhur)とファティラ(Fatila)。沈香でできた石鹸バルジャット(Barjat)。シャンダン(サンダルウッド)から調製された石鹸Abir-Iksir。シャンダンで作られた液体石鹸ガスル(Ghasul)。

 

※1 itr(イター) https://littleindia.com/the-essence-of-life/ から

Itr gulab (イターガラブ; itr は香水、gulub は薔薇の意) 又は rooh-e-gulub(ルーガラブ;水蒸気蒸留で得たローズオイル)はムガル時代に発明された薔薇香水で、サンダルウッドオイルに花のエキスを溶かしたものを指します。itrはアラビア語で香水の意。又、itr はペルシャ語でローズオイルのことです。

2000年以上の歴史があり、インドではitrを使うことが今では生活の一部ブル・ファズル(Abu'l Fazl、1551/1/14 – 1602/8/12、ムガル帝国の宰相)がペルシャ語で『アクバル王は金と銀の香炉で線香と一緒にアタールを毎日使っていた。』とアクバル王の伝記の中に書き残しています。

itr の発見については諸説あります。アクバル王の伝記の中では、『ヌール・ジャハーンが思い付いた』と取り上げられています。彼女は浴槽の中に押しつぶした薔薇の花を入れるのが好きで、その時itrの中で一番高価で優雅な香りの Rooh Gulab を発見したのです。伝説によると、彼女が入浴したしたとき、一晩中冷やされていた水の上に油性の層を見つけ、これが有名なローズ香水を生み出すきっかけになったというのです。

又、ペルシャ人の母親が発見したとする人もいれば、17世紀に香水を発見したのは、タイフ ( Taif、サウジアラビア西部、マッカ州の都市) やローズイターの有名な中心地であるペルシャの普通の女性だとする人もいます。

ペルシャの香水についてはインドのお話が終わってからしようと思います。まだしばらくインドのお話は続きます。

    

※2 Lignum aloes(別名、沈香、Aloeswood, Agarwood, Ud, Aloes)  http://docsolomons.com/wp/about-lignum-aloes-aloeswood/

インドでは Gujarat, Achin and Dhanasari(グジャラート、アチン、ダナサリ)の沈香を利用しました。

  

※3 サンダルウッド https://jp.123rf.com/visual/search/50273551 文章はWikiから引用させていただきました。

サンダルウッド(ビャクダン、白檀、Santalum album)はビャクダン科の半寄生の熱帯性常緑樹。原産地はインド。インドでは古くはサンスクリットでチャンダナとよばれ仏典『観仏三昧海経』では牛頭山(西ガーツ山脈のマラヤ山(摩羅耶山 秣刺耶山))に生える牛頭栴檀(ゴーシールシャ・チャンダナ gośīrṣa-candana)として有名でした。栽培され、紀元前5世紀頃にはすでに高貴な香木として使われていました。蒸留して得たサンダルウッドオイルの主成分サンタロールには、殺菌作用、利尿作用の薬効成分があると言われ、薬用にも広く利用されます。また、気分の薬として胸のつかえをとり、爽快感を与えます。

   

※4 ladan ラダン https://blog.goo.ne.jp/takemotohana/e/8e86b607389c5a418eb792421e3acf43

キスツス・ラダニフェル Cistus ladanifer ( 別名rockrose, labdanum, common gum cistusハンニチバナ)。地中海西部沿岸地域原産の常緑低潅木、英名:Gum Rock-rose、葡名:Esteva、

 

葉と茎の腺毛からラブダナム(Labdanum)と呼ばれる芳香のある含油樹脂が採れ、香水の揮発保留剤として利用します。ラダニフェル( Ladanifer)は“ゴム樹脂を有する”の意で、香油中の蒸気圧、即ち揮発性を均一化するため(粘りを出すために)に使用します。