Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

タラゴン

2023年06月14日 | ハーブ

この絵には気になるところが何カ所かあります。上から順に述べることにします。

絵の上の文字はいつ誰が書いたものなのか不明ですが、Doracoとはギリシャ語のdrakon (ドラゴン) から派生した言葉です。このことから想像できるように、このタラゴンもかつてはギリシャやローマ帝国内で料理に使われたハーブの一つのようです。ギリシャからローマに引き継がれたタラゴンは他のハーブやスパイスと同じように少しの時間を経て再び西ヨーロッパに戻ったのです。

 

ゲラルドが書いた ”Herbal” よりも前の、1562年に出版された、WILLIAM TURNERの, “Herball”, (1508? – 1568/13? 牧師、博物学者) がイングランドで最初にタラゴンに言及した植物誌だと思われます。ターナーはその中で 『タラゴンは、ハーブガーデンに比較的新しく入ったもので、初めて栽培されたのはチューダー朝の王室の庭園だけでした。』と述べています。そのことからタラゴンがイングランドに入って来たのは1500年代だろう思われます。

 

二つ目に気になるのは絵に描かれたタラゴンの葉です。絵のタラゴンは少し長さが短いようです。しかも小さなドラゴンの舌を思わせる切れ目のある葉がこの絵には見あたりません。

 

三つ目は花です。フレンチタラゴンが花を付けることは殆どありません。

 

四つ目は根です。ドラゴンの尾を想像させる、くねくねとした根が地面を這っていません。細い根があるのはゲラルドが言う通りなのですが。タラゴンは竹のように根茎を延ばしてその先に新しい芽を付けます。竹の根は地面の中に潜って目には付きませんがタラゴンのそれはしっかりと地面の上を這うのです。

 

サタンの化身であるドラゴンはご覧のように曲がりくねった尾に先の割れた舌を持っています。又、タラゴンの属名であるアルテミシアは、ギリシャの女神アルテミス (月の) に由来しているのでタラゴンの葉を月に例えているとの説もあります。     

    

この植物にはDoracoの特徴が何処にもない。この絵はタラゴンではないことになります。さてと、困ったことになりました。

 

                                     つづく