湯種 3
オーストリアのレシピはこの後、次のように語られています。
「小麦粉450、イースト7g、砂糖50g、卵1個、卵黄1個、牛乳120ml、ヨーグルト40gを混ぜます。この中にまだ暖かい湯種を少しずつ入れて煉っていきます。」
注目すべきは、水を使わない点です。
デンプンを煮詰めてアミロースの中に入った水(物理的な分子間力によって水分がアミロースの中に取り込まれた状態)を煉ることで物理的に追い出すことができるのでしょうか。
日本のレシピ3つは77-90%の水を添加しています。この量はパンとしては極めて常識的な水の量です。しかし、オーストリアのレシピは、ヨーグルト(40g)を水として換算したとしても56%の水しか使っていません。卵(80g)を全て水として加えてやっと74%になります。つまり小麦粉の中に入った水はかなりの割合で離水すると判断してレシピの中に水を加えていないように見えるのですが。
アミロースの中に入り込んだ水を力ずくでもなんでも煉ることで追い出すことができれば、パンの老化を、「低アミロース小麦粉※を加えることで」かわすことは必要でなくなります。
※ 国産小麦粉の中でグルテン量が多く低アミロースな小麦粉にはユメチカラ、春よ恋、キタノカオリなどがあります。これらの小麦粉を加えるともちもち感があり、噛み応えがあるパンに仕上がります。
お話をもとに戻して、レシピに帰ると。この後、小麦粉を入れてその中にwater rouxを少しずつ入れていきます。温かいルーを入れていくので、アミラーゼの活性は高まります。
煮ることでデンプン粒から大量に飛び出したアミロースとデキストリンは急速に麦芽糖に分解されます。
煉り終わったドウは2時間後、小麦粉の中のグルコース等の単糖類はイーストによって消費されてしまいまが、その後2時間余りの間に迎える緩やかな、それでいて高いイーストによるガス発生が続くはずです。(2回目のガス産生は麦芽糖によるものです。去年7-8月のパン-ブログの中に詳細に述べておきました)ここで、湯種法で得られる自然な甘味は十分に獲得できます。
上で述べたアイデアの確かさあるいは不完全さは、実際にドウを捏ねてイーストを作用させパンを作ることで確固たるものに変わるはずです。早速パンを作ってみることにしましょう。
続く
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