BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説22-1「ディスティニーアンダーグラウンド」

2020-02-11 16:56:46 | ★ディスティニー22章
「麻也さんがあのアイドル…鈴音ちゃんと結婚するって本当ですか?」
 …って、ライブ本番前にそれはないだろうよ…古いつきあいとはいえの誰にもそんなこと言われる筋合いはない…
 
 …諒がソファの上で目を覚ますと、つけっ放しのテレビには、いつも録画している美術の番組が流れっぱなしになっていた。
(…俺…)
 そう、もう武道館は終わっていた。
 それは満身創痍になりながらのツアーの終わりでもあった。
 そして…飛び出していった麻也をソファで待っているうちに、自分は寝てしまったらしい。
(麻也さん…真樹んとこでも泊まってんのかな…) 
 まさか、鈴音や冬弥なんかのガキたちとなんか…
 もうそんなこと考えたくなかった。
 そうなるとテレビに八つ当たりだ。 
「テレビでなんかしゃべってないでテメエの女房なんとかしろよ」
画面の中で絵の感想を語っているのは、諒にずっとつきまとっている女優・関村響子の夫の脚本家だった。諒の種なら貰いうけてもいいと、年下女房可愛さで諒に渋々言ってきた男… 
(今日も一次会には来てたよな…) 
 
 鈴音ちゃん、2枚目のシングルも駄目だったみたい。
 ドラマも上手くいかないみたいだから、パニックみたいよ…
 事務所が焦らせすぎっていわれてるけどね…
 でも、学園ドラマで冬弥と共演して、そっちでつきあってるとも聞いたけど…
(…麻也さんの噂、多過ぎ…)
 
 一人でいると、色んなことを思い出す。
「うちの兄貴…麻也ね、今度のライブに連れてきていいかな? 」
あの時、どうして真樹に、「いいよ」と言ったのだろうと、最近の諒はずっと後悔している。
 ノーと言っていたら今頃は、大翔と、晴美と、平凡な暮らしをしていただろうか。
 いや、その2人とも出会うことはなかったのだ…

 いくら事務所をクビになった兄が見に来てくれると言っても、誰か業界の人を紹介してくれるかも、くらいにしか思っていなかった。
 それが…
 あんな美しくて厳しくて、素敵な人だったなんて…
 その日から諒の「許されない恋」は始まった。
(いくら業界にいたとはいっても、ロックだったら男同士なんて経験ないだろうし…)
 年も上で、プロのバンドの経験者のクセに、初めての「悪魔のキス」を受ける時のウブそうだったこと…
 あの可愛らしさに…ますます溺れていくのを抑えられなくなった。
 それが…
(2000人斬りのMA-YAだったなんて、思ってもみなかった…)
 それで、やっぱり自分がわからなくなって、狂ったように女を求めた。
 一番気が合ったのは晴美だったが、5股がばれて、それどころか、諒がバンドをやっていることを友達から聞きつけ、こっそりライブにも来ていたのだ。
「諒ほどの人が、他にも女の人ができるのは、頭では理解できる。でも、許せない。もう別れたい。」