「 お前のやってることは、あの坂口と一緒だよ!」
麻也の目が大きく見開かれ、何とも言えない色をたたえているのを見て、間違っているのは自分ではないかと諒は思った。なのに
「処女をつまみ食いしてポイ捨てかよ。まぁ俺は同性愛での童貞だったけど、それとも俺に突っ込んでみたかった? 」
「違うよ、そんなんじゃない… 」
「 浮気みたいなことも嫌だけど、あんたがそんな奴だと思わなかった。 いや、坂口の方がマシかもな、あんたにマンションだのポルシェだの買ってやったんだからな。」
麻也は諒にバレるのが嫌だというのを口実に、冬弥にも鈴音にもプレゼントのひとつも買ってやらない冷たいヤツという噂も諒は嫌だった。
「それとも、この一連のことはあんたと坂口のプレイってわけ? 俺とセックスの後もふとした時もぼーっと何か物思いにふけってさ、ツアーの頃のセックス依存症も坂口が忘れられなかったからだろ。よっぽど坂口とのセックスが良かったんだろうね」
「 違う!」
「何が違うのかな、可愛いMA-YAちゃん」
「 やめろよ…」
「もうこれで終わりだよ、俺もうあんたの事 信じられねーもん。なんにも知らないアマチュアバンドの俺を引っ掛けるなんて簡単だったろうね 。 心に傷があるなんて、処女を捧げたオヤジのことが忘れられないだけじゃ…」
「違う!」
「 んまあ、麻也ちゃん安心して。俺はバンドの方は辞めないからバンドは東京ドームに一番近いところで付けてるからね 」
諒はリビングを出ようとした。
すると、背後で勢いよくベランダに面した大きな窓が開く音がした 。
振り向くと…
勢いよく麻也が飛び出していく…
麻也の黒くふわふわの長い髪がたなびく。
真っ青になって、諒も後を追う 。
見れば黒のスーツ姿の麻也がこの5階のバルコニーを乗り越えようとしていた…