詩篇第百三十三篇
都のぼりの歌。ダビデの。
見よ、何と善く、何と楽しいことか。
兄弟たちが仲良く共に座っている。
頭に注がれるかぐわしき油が、
髭に流れ、アロンの髭に滴り、
彼の着物の袖口にまで流れ滴る。
ヘルモン山の露が、
シオンの山々に滴り流れるように。
まことに、そこで主は祝福を永遠の命さえも約束せられた。
詩篇第百三十三篇註解 兄弟姉妹たちの宴
すべての詩篇の中で、いや聖書全巻の中でも、もっとも貴重な一篇といえる。ここに人類の理想があり夢が尽きるといってもよいかもしれない。兄弟姉妹たちが仲良く食卓を囲んで語らっている。その楽しさは体験し記憶されているだろう。
人間がただ人間であるということだけで、楽しく食卓を共に囲み、歓談と談笑にふける。そこには宗教の差別も、人種の差別もない。
こうした姿がいつの日か地上に実現される日の来ることを私たちはどれほどに恋い願ったことだろう。しかし、そうした日の訪れはいつことになるか、果たして人類は、罪と涙と共にその日の到来を待ち焦がれることになるだけなのだろうか。それとも、主はそこで永遠の命と祝福を約束されたのだから、それを信じて待つべきか。
たとえ、私たちの幾世代においては地上での実現は難しくとも、天上においてはそうした楽しき食卓は叶えられるにちがいない。
アロンとはモーゼの兄で、主の命によって油注がれて初代の祭司職に任ぜられた。モーゼたちの兄弟に対する主の祝福と見ることもできるが、必ずしも限定的にではなく、一般的な象徴と解してよいと思う。
エルサレムへの巡礼の折などに歌われたらしい。