海と空

天は高く、海は深し

ヘーゲル『哲学入門』第三章 宗教論 第八十節[「祈り」と典礼]

2023年03月09日 | 宗教一般
 
ヘーゲル『哲学入門』第三章 宗教論 第八十節[「祈り」と典礼]

§80

Der Gottesdienst (※1)ist die bestimmte Beschäftigung des Gedankens und der Empfindung mit Gott, wodurch das Individuum seine Einigkeit mit demselben zu bewirken und sich das Bewusstsein und die Versicherung dieser Einigkeit zu geben strebt, welche Übereinstimmung seines Willens mit dem göttlichen Willen (※2 )es durch die Gesinnung und Handlungsweise seines wirklichen Lebens beweisen soll.(※3)



第八十節[「祈り」と典礼]

「祈り」とは、思考と感情をもって神に仕えるための仕事である。「祈り」によって、個人は神と自己との一体性をもたらし、この一体化の意識と確信を自身に与えようとする。神の意思と個人の意思とのこのような合致は、個人の現実の生活における精神と行為の様式によって実証されなければならない。

※1
Der Gottesdienst 
原義は「神に雇われし者」くらいの意か。
「祈り」と訳した。教会などの他者との公同の場においては「典礼」「礼拝」「祭祀」「ミサ」などと訳せる。「礼拝(典礼)とは、思考と感情をもって、神に仕えるために定められた儀式である」

※2
dem göttlichen Willen 神の意思
神の意思の探究は、哲学研究の目的の一つでもある。

※3
ヘーゲル自身はルター主義者をもって任じていた。彼の哲学がプロテスタンティズムを母胎としているのは疑いのないところである。ここからキリスト者の使命  die Bestimmung、die Mission が出てくる。

五つのソラ - 夕暮れのフクロウ https://is.gd/oDz9pv
 

「第一教程(下級) 法、義務、宗教論」はここで終わり、次の「第二教程(中級) 精神の現象学と論理学」へと進む。
 
 
 
 
 
 
 
 
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ヘーゲル『哲学入門』第三章 宗教論 第七十九節[恵みと和解]

2023年03月02日 | 宗教一般

 

ヘーゲル『哲学入門』第三章 宗教論 第七十九節[恵みと和解]

§79

Aber die Freiheit des einzelnen Wesens ist zugleich (※1)an sich (※2)eine Gleichheit des Wesens mit sich selbst, oder sie ist an sich gött­licher Natur. Diese Erkenntnis, dass die menschliche Natur der göttlichen Natur nicht wahrhaft ein Fremdes ist, vergewissert den Menschen der göttlichen Gnade  (※3)und lässt ihn dieselbe er­greifen, wodurch die Versöhnung  Gottes(※4) mit der Welt oder das Entschwinden ihrer Entfremdung von Gott zu Stande kommt.(※5)

 

第七十九節

しかし、同時に個人の存在の自由は、本来は自己自身と存在との同一性にあり、あるいは、個人の存在の自由は本来は神的な性質のものである。人間の本性と神の本性は本当は疎遠なものではないのだというこうした認識は、人間に神の 恵み を保証するものであり、そうして人間に恵みを捉えさせることによって、世界と神との和解  が実現し、あるいは、人間の神からの離反が解消するに至る。

 


※1
前節§78で人間が自己を普遍から分離させる自由をもつこと、神から離反する自由をもつ点において、人間の本来性が悪であることが説明されたが、本節の§79においては、同時に人間の個別が本来的に普遍と同質であることが説明される。「人間は神の子である」とも言われるのはこのことである。しかし悟性は、人間の個別と普遍を両立しえぬものとしてしか理解しない。

§ 280b[概念から存在への移行] - 夕暮れのフクロウ https://is.gd/j9SLmx

※2
an sich    
潜在的に、本来的に、即自

※3
Gnade
慈悲、哀れみ、 慈心、 仁恵、恩寵、 恩恵、 祝福、 恵み、 至福、仕合わせ

※4
Versöhnung
和解、仲直り、和睦、宥和、償い、慰め

※5
恵みを確信させるのは人間性と神性が無縁なものではないという認識である。この神の恵みを捉えることにおいて、人間と神との和解、宥和を実現する。ここにキリスト教の核心が説明されている。ヘーゲル哲学は神学でもある。

 

ヘーゲル『哲学入門』第三章 宗教論 第七十九節[恵みと和解] - 夕暮れのフクロウ https://is.gd/KqFH65

 

 

 

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