真夜中のカップらーめん

作家・政治史研究家、瀧澤中の雑感、新刊情報など。

麻生さん、あなたもか

2008-11-06 23:11:01 | Weblog
たとえば。
マンションで町会費を集めたとする。
不景気になったので、今まで集めた町会費から一世帯に一律○万円、配ることにした。はて、と、住民は疑問を抱く。なんだかおかしい。おかしいと思う理由は以下の通り。

理由その1。
配るぐらいなら、町会費を安くしてくれ。
理由その2。
いずれ、配った分のお金は、町会費を高くして回収するという。ならば今のままでいいから、将来も町会費を上げないでくれ。
理由その3。
町会の役員手当てはそのままで、町会役員は一人も辞めない。町会をスリム化すれば、今回配るお金くらい出るのではないか、等々。

国家規模の経済を矮小化するつもりはない。
減税よりも現ナマを配る方が経済効果が大きいことは、なぜかマスコミは報道しないが確かな事実だ。
それでも私には納得いかないことがある。

第1に、「国民に配る配る」というが、元々国民の金ではないか。私たちの金を私たちに戻すのに、何だか、恩きせがましい。

第2に、景気が悪いのは、簡単に言えば国民が金をつかわないからだが、つかわない大きな理由の一つに「将来への不安」がある。
配る予定の2兆円で、穴凹だらけの年金制度を整備すれば、回り道のようで実は確実な景気回復策になるのではないか。
あるいは、緊急的な教育、たとえばグローバル化を見据えて英語教育などの充実にこの金を使ったら、将来の糧になるではないか。「米百俵」の精神はもう本当の「昔話」になってしまったのか。

第3に、今回配った金は、「徹底した行財政改革ののちに増税」して補うというが、「徹底した行財政改革」の具体案が見えてこない。
国会議員の歳費カットなんてバカげた案を出してきても、騙されてはいけない。だいいち、国会議員の歳費をカットしたら、官僚の思うままではないか。
たとえば参議院を廃止して、議員定数を半分にし、そのかわり衆議院の立法能力、政策立案能力を高めるのに金をつかってはどうか。そのくらいの覚悟を議員は見せるべきだ。

なんと言うことはない、国民から集めた金を国民にほんの少し戻して、しかも戻した分を数年後の国民からまたむしり取る、マッチポンプみたいな政策ではないか。

中小零細企業向け融資のための30兆円や、雇用保険料引き下げと、この「一世帯6万円」政策は本質において異なる。だから、政府与党の経済政策すべてがおかしいのではなく、へんなお恵み政策がおかしいのである。

私たちは、政府からお金をもらうことを期待すべきではない。政府は小遣いをくれる親ではないし、給料を支払ってくれる社長でもない。
政府は、われわれ国民の僕(しもべ)であり、国民が政治を委託している機関にすぎない。

そこで、結論。
①政府は、もっと有効に金をつかうべし。
自信をもって、国民の将来への不安を無くす政策に思い切って投資せよ。使い方は国民任せ、というのは、責任放棄である。

②配るなら、配る前に「徹底した行財政改革」をやれ。
すぐにできないのなら、無用の長物・参議院の廃止と、地方分権の推進で中央省庁の半減、せめてこれくらいのことは約束すべし。

③「米百俵」の精神をもう一度。
誰か、「今は苦しいけれど、こういう国家にします。だから我慢して下さい」と言える政治家はいないのか。しょせん、政権を維持、あるいは政権を奪取したい、それだけの考えなのか。

与党は野党のしり馬に乗るような、金配り政策をすべきではない。
麻生さん、あなたもか。

国民は、物乞いではない。