真夜中のカップらーめん

作家・政治史研究家、瀧澤中の雑感、新刊情報など。

中国人船長を処分保留で釈放

2010-09-24 18:06:59 | Weblog
A君は、お父さんがお金持ちで、しかも暴力団の組長。
A君は、試験でカンニングをした。
先生はA君に居残りを命じて、職員室で事情を聴いていた。

と。帰りが遅いのでA君の父親が学校に電話をしてきた。

カンニングをした事情を聞いている、と知った父親は、
「すぐにウチの息子を帰さないと、学校の生徒を組事務所に監禁するぞ!」
「学校への寄付は今後一切しないぞ!」
「給食の食材を搬入できなくするぞ!」

ビビった学校は、生徒を家に帰した。
学校の規則はあるのに、それは完全に無視され、なんの処分もせずに。
法があっても、守られない。

相手を見て態度をかえる、こんな学校があったら、先生の権威は失われて、ひどい学校になるだろう。

そういう学校にいま、日本がなろうとしている。

しかし。
政府や相手国から圧力をかけられても、
「法治国家として、法は守らなければならない!」
と、断固として決断した人物がいた。

もちろん、今の話ではない。
しかし、日本での話である。

明治24年(1891)。
日本訪問中のロシア皇太子を、日本の巡査が刺殺しようとし、大けがを負わせた。
ロシアからは暗に死刑を求めてきたが、当時の刑法では無期懲役が最大で、それでもロシアを恐れる政府は司法に圧力をかけ続けた。

時の大審院院長(現在の最高裁長官)は、児島惟謙。
児島は断固として政治の圧力を排し、被告は無期懲役となった。

これが、まだ近代化も緒に就いたばかりの日本が、世界に「法が政治に屈しない近代国家」を印象付け、不平等条約改正の大きな要因にもなったのである。

もし政治の都合で法の適用が変わるなら、それは法治国家ではない。

たとえば日本の漁業関係者が、日本国内で何らかの違法操業をしたとしよう。
海上保安庁が見つけて、追っかけたとする。
違法操業者は、逃げるために漁船を巡視船にぶつけた。
さあ、司法よ。
この漁船に刑罰を与えられるか!
弱い日本国内の漁船なら、巡視船にぶつけても刑を与えるのか!

まあ、母親から月々1,500万円ももらっていて、それを申告しなくても総理大臣なら訴追されないのだから、強い者に弱く、弱い者に強いのは、仕方が無いのかもしれない。

ロシア皇太子刺殺未遂の際、「ロシアが攻めてくる!」と、日本中が大騒ぎになった。なんと、学校は謹慎すると称して休校になり、ある村では、刺殺未遂犯の姓名を子に付けることを禁止する動きまであった。

それでも、児島惟謙は、ひるまなかった。
彼は、自分の職務に忠実であろうとした。
最後は、政治も渋々ながら児島の意見を受け入れざるをえなかった。

いま、国民のどれだけの人が、
「無理を通せば、道理が引っ込む」
と考えているのかわからない。
しかし、事実上の1部輸出制限や、無関係で無実の日本人を逮捕監禁した中国に、怒りを感じている国民は多いのではないか。

それでも政府は、この決断をした。

法を無視した以上、国家の運営にあたる資格は無い。

菅内閣の退陣を、求めたい。

・・・この文を書き終えた時、官房長官が、
「釈放の判断をしたのは地検だ」
と言った、との報道が出た。

事実なら、この地検は日本に必要ない。ぜひ中国で中国の覇権拡大のため、がんばって仕事をしてほしい。

法律家なのに、国家の主権を理解していない。
そして、今さえ良ければ、中国がもっと居丈高になることなど知ったことではない、日本の将来より、自分の出世に響くことが大事なのだろう。

そしてもし、何らかの圧力を政府がかけていたのなら、
菅内閣は退陣だけでは済まない。

もう少し状況を見ていきたい。

怯(ひる)むなかれ

2010-09-20 01:18:33 | Weblog
たとえば。

庭先に、お爺さんが建てて、しばらく使っていなかった小屋があった。
小屋の近くには柿の木があって、美味しい柿の実がなる。

その柿の実が盗まれるので、警察に巡回をお願いしていた。

ある日、隣の家の男が、勝手に庭に入り込んで柿の実を取ろうとしていた。

「おい、なにをしてるんだ」

警官が声を掛けると、男は、警官に突進してきたので、捕まえた。

すると、隣の家の人々が、

「あの小屋はおれたちのもので、柿の木もおれたちのものだ!
なんで自分の家の庭で自分の柿の木から実をとるのがいけないんだ!」

と、逆切れして、男の釈放と、今後は近所づきあいをしない、と脅してきた。

これが、尖閣をめぐる騒ぎである。

国際的に、尖閣が日本領であることははっきりしている。
1895年、無人島であり、当時の清国(中国)も領有していないことを確認し、そして日本領とした。
戦後もアメリカが施政下に置いていた時期を除いて、日本が領土として保有している。

中国や台湾は、尖閣がアメリカの施政下にあった時には何も言わず、その後も、尖閣周辺の海底に有望な資源があるという国連の調査結果が出るまで領有は主張していなかった。

なにをか言わんや、である。

中国は民間交流から首脳会談、閣僚級の交渉などを拒否してきたと騒いでいるが、おそらくもっと日本人が驚く手段に出るだろう(たとえば経済的な制裁など)。

なぜなら、尖閣はうまくいけば、資源と領海を手に入れるチャンスだからである。

靖国神社参拝の騒ぎの時には、問題は単に歴史や思想であり、日本に圧力を掛けるための手段にすぎなかった。

が、尖閣は違う。
将来の資源確保と、中国海軍が太平洋に出ていくための足がかりであり、もっと言えば、いざという時に日本のシーレーンを妨害できる格好の場所だからである。

相手が弱いとなれば、脅して脅して脅し通して、好条件の譲歩を引きずり出すのが中国の外交である。フィリピンやベトナムとの間で、中国がどんなえげつないやり方で岩礁などを手に入れたか、調べればすぐにわかる。

日本は島国だから、国境は都市からはるかに離れている。
為に、領土・領海・領空の侵犯にあまり敏感ではない。
そして、国際的に見ても明らかな日本領であるにも関わらず、
「話し合いで解決しよう」
という空気が流れる。

話し合いは、相手にも相応の権利がある場合に、
「それでは、どのあたりを落とし所にしましょうか?」
という時だけ有効である。

どうして私たちは、法的にも歴史的にも、明らかに自分の家の庭先であるにもかかわらず、その場所を、たとえ一部分でも隣家に譲らなければいけないのか?

いま怯めば、庭先からやがて軒先に迫り、外出する時にはいちいち隣家(中国)の許可を得なければならなくなる。
そして中国の気に入らないことを日本がやれば、庭先から門を封鎖して、買い物にも行かれなくすることも可能だ(シーレーンの妨害など)。

中国に、侵略の困難さを教えなければ、必ずその日は来る。

融和政策を繰り返して、ヒトラーに侵略のうまみを教え、第二次大戦を引き起こさせた愚を繰り返してはいけない。

しかしながら。
いまこそ防衛体制の強化と、日米同盟の出番だと思うのだが、現政権からはどちらも聴こえてこない。

かつて吉田茂は、自分の政策や人事を通すため、用事もないのにGHQへ出かけ、帰ってきてからおもむろに政策や人事を発表したことがある。

周囲が勝手に、「吉田の言うことは、占領軍の意向だ」と解釈するのを知っていたからである。

たとえ世間話でも、首相がオバマ大統領と電話会談を連日行っている、というアナウンスは、効果がある。
どうしてそんな簡単なことも、この政権はできないのか。

そういえば、現内閣を見て、外交手腕のあるベテラン大臣は見当たらない。
しかし今は、私たちはこのメンバーに託すより仕方ないのだ。

菅内閣よ、怯むなかれ。

いま、一歩後退したら、取り返すのに百倍の力が必要になる。

民主党代表選挙に思う

2010-09-04 00:24:59 | Weblog
昭和50年(1975)から51年(1976)にかけて、アメリカ大統領選挙は、実に面白い現象を見せていた。

まず、ジミー・カーター。

この、民主党の中でも完全に泡沫だった無名候補は、やがて大旋風を巻き起こすが、それはあちこちに書かれているので、今回は触れない。

私が注目したいのは、共和党の大統領候補。
ジェラルド・フォード。当時、現職大統領だった。

「私はフォードですが、リンカーンのように働きます」(どちらもアメリカの自動車の名前)。

こんなウィットに富んだスピーチをするわりに、フォードはあまり人気がなく、共和党の大統領候補としての指名が危うかった。

スタッフは奇策を編み出す。
本人は選挙期間中、選挙戦をせず、大統領としての公務に励む、というのである。

奇策は当たって、共和党の大統領候補指名争いに勝った。
理由は簡単。

テレビは公共放送の義務として、大統領の政務について常に報道しなければならない。
「真面目に働くフォード」、が、毎日テレビに映る。
そんなフォードの姿は、選挙のお願いで絶叫するよりも、党員に好感を与えた。

さて。

菅総理はしきりに公務に励んでいる。誰かの入れ知恵だろうが、悪くない作戦だ。
利益団体や国会議員を訪ねて歩く小沢氏よりも、好感は間違いなくアップする。
が、参考までに書いておくと、大統領本選挙では、フォードはカーターに敗れている。

小沢氏と菅氏、どちらが勝った方が日本に良いのか。
いま、首相官邸のホームページに行くと、「新成長戦略」を読むことができる。

これは今年の6月に閣議決定しているから、菅氏も小沢氏も二人ともかかわっている。

で、中身だが、5頁モノの「ポイント」と、92頁からなる本文があって、実にうまくできている。

1点だけ。

私は旧来から、日本の法人税が異常に高いことに危機感を持っていた。

この「新成長戦略」、5頁モノの「ポイント」で、「税率の主要国並みへの段階的引き下げ」が書かれている。

しかし。

92頁ある「本文」の中では、「法人実効税率を主要国並みに引き下げる」の後に、

「課税ベースの拡大を含め財源確保に留意」

と、文章が続く。

何のことはない、
「税率を下げた分、課税ベースの拡大で、取ってやるぞ!」
と言っているのだ。

「20兆円はムダをあぶりだす!」
と言っていた民主党政権だが、無理だとわかって今度は増税路線へ。
これが、小沢・菅両氏を含めた、民主党の経済政策の根幹部分である。

長くなるからこの辺にしておくが、それでも「子ども手当満額支給」とか言っている小沢氏に、あきれている国民は少なくない。

どちらが勝っても、民主党政権自体は続くのだろう。

「欲しいものを何でも与えるのに十分な大きさの政府とは、持っているものを全て取り上げてしまうのに十分な大きさの政府でもある」
ジェラルド・フォード。