真夜中のカップらーめん

作家・政治史研究家、瀧澤中の雑感、新刊情報など。

靖国神社参拝と、議論のありかた

2010-08-16 16:59:59 | Weblog
菅総理は、靖国神社には参拝せず、千鳥ケ淵戦没者墓苑には行った。
靖国神社に参拝しなかった理由は、
「靖国神社には、A級戦犯が合祀されている」
からだという。

では、A級戦犯が合祀されていなければお参りするのであろうか。

東京裁判の違法性は、純粋な法的問題としてすでに多くの識者が指摘している。
茶番に近い裁判の是非はここでは論じないが、
日本人は敗戦ショックで占領軍の言いなりになって、
この裁判を受け入れ、自分たちでは戦争の総括、責任を明らかにしなかった。

もちろん占領下でGHQに反抗はできなかったであろう。
しかしその後、講和条約が結ばれて占領が解かれても、戦争の総括はしなかった。

結果、東京裁判が唯一の戦争解釈となり、法廷の座席数の関係で絞られた20余名のA級戦犯のみに責任を押し付け、それが今日まで続いている。

私は政治史を勉強する者として、「戦前の指導者たちはすべて正しかった」、などとは言えない。
たとえば東條英機は自身の「敗戦に対する責任」をはっきり認識していた。
だが、戦争それ自体が正しかったのかどうかという点は、もっと議論しなければいけない。

原爆投下や、日本人居留民惨殺など、許してはならない外国人の犯罪が、
「すべて日本が悪い」
の一言で、罪を消されて良いのか。

私たちは何を間違え、どの部分は仕方がなく、どの部分は正しかったのか、それを明らかにする責任がある。

その上で、靖国神社に参拝しようが、しまいが、それは自由であろう。

民主党政権は、とにかく言葉が足りない。
「開かれた政治」と口では言い、韓国へのお詫びや朝鮮学校に対する手当の検討など、すべて密室で行われている。

鳩山前首相は「抑止力の観点から、米軍基地は必要」と、
自説を180度転換したにも関わらず、
一体、どこの国のどんなことに対する抑止なのか、まったく説明しない。

靖国参拝も、記者の不勉強もあるのだろうが、A級戦犯に対する名誉が法的に回復していることについてどう考えているのか、言及がなかった。

民主党政権は、結局、この国の議論のレベルを上げる意図はまったくなく、自民党政権よりもひどい独りよがり、自分だけの正義をふりかざす、浅はかな政権なのではないか。
「国民は、黙って言うことを聞いていろ!」
と、私には感じられる。

いや、それは言い過ぎかもしれない。
おそらく、政治技術はあっても、深い歴史的見識などは持ち合わせていないから、そもそも議論にならないのであろう。

それは、程度の差こそあれ、他党もまた同じかもしれない。
もちろん、国民も。
私たちは戦後、同じ教育を受けてきたのだから。