「思春期特発性側弯症 - 早期発見 → 装具効果の維持 → 手術なしで健康な人生を送るために」においてノルウエーでの装具療法20年のデータをしめしました。
ある意味、装具療法は「強いる」という面があるがゆえに、両親にとっても、そしてお子さん自身も、納得し、積極的に取り組むという気持ちには簡単にはいかない、というのも事実として存在します。
日本のようにムシムシと蒸し暑い湿度の高い気候で、かつ、公立小中学校の冷房化率は50%未満です。
装着しているだけでも苦しいのに、まして一日の大半を過ごす教室には冷房もないとしたら、......そしてさらに、もしその子が装具を装着していることを周囲に知られたくないと思っていたとしたら、そのような蒸し暑い教室での装着は諦めてしまうでしょう。
思春期特発性側弯症治療における環境の課題は幾つか存在しますが、その主たるものは次のふたつでしょう
1. カミングアウトする? できる?
2. 冷房のない教室という日本の学校環境
心理面と環境面という、このふたつをどう乗り越えられるか、ということがご両親が直面する最初の壁となります。
心理面については、インターネット検索から、患者さん自身のブログ・お母さんのブログを探して、ぜひとも読み通してみて欲しいと思います。
参考までに、その中から幾つかのサイトのURLを下記に示しました。
・ほのぼの日記 (どんな苦境でも笑い飛ばす力に勇気をもらえます)
・アラブで子育て (ほのぼの日記を付けていた子のお母さんのブログです)
・特発性側弯症・娘の記録 (親娘二人三脚で側弯症と向き合ってきたお母さんのブログ。ぜひとも読み通して下さい)
・おとなの側弯 (リンク集もありますので、参考にして下さい)
・大人の側わん症患者の日記 (こちらのリンク集も参考にされて下さい)
この病気には治療法=装具療法は存在します。 しかし残念ながら、約10%~20%ほどの人には装具療法も効果を持たない、ということも医学データ上の事実として存在します。
装具療法は、実際にそれを身につける子どもにとっては、かなりの苦行とも言えるものになります。心理的負担が増し、さらには物理的苦痛も味わうことになります。
これを乗り越える為に
もし医学が示すデータが患者さんとその両親にとって、
装具療法を受け入れる支えになることを願ってやみません。
医学データとは、例えば
ノルウエーの装具療法患者の20年フォローでも報告されていたように、装具療法には一定の治療効果があることが示されています。
ここでは、日本の大阪医科大学の医学報告を例として、その実績を示します。
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Hiroshi Kuroki et al : Predictive factors of Osaka Medical College (OMC)brace treatment in patients with adolescent idiopathic scoliosis :SCOLIOSIS 2015
(思春期特発性側弯症患者における大阪医科大学式装具-OMCブレースの治療効果要因)
Patients were instructed to wear the brace for a minimum of 20 hours per day at the beginning of brace treatment. When skeletal maturity was noted, that is, all of the following three criteria were fulfilled; a Risser stage of 4, at least 2 years passed since the onset of menstruation (for
girls), two consecutive visits over a time period of at least 1 year with no more than a 1-cm increase in height, the brace weaning started and the time in brace was slowly reduced during 1 year. Finally the brace wearing was stopped at 1 year post skeletal maturity.
患者には装具開始から1年間は 20時間/日 の装着を指導。次の3要件が満たされることを確認する。 リッサーサインが4であること・初潮から少なくとも2年は経過していること・少なくとも1年間に連続2回の定期検査で身長が1cm以上伸びていること。これらをもって骨成熟の確認として、少しづつ装着時間を減らしていき、骨成熟完了後の1年後に装具卒業とした。
→注意:上記はaugust03の拙訳ですので、実際の指導・指示は「専門医」に従ってください。
そしてこの2015年の報告では装具装着時間と成功との関係について下表データが示されています。
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一日20時間装着の指導に対して、50%以上の患者の成功率は88.2%、50%以下の患者の場合は42.8%
→注意:ここで示された 50%という数値を指導20時間に対する50%、つまり10時間以上と解釈しています。
ここで10時間以上の成功率 88.2% という数値は、米国・カナダでの多施設臨床試験で示されたデータと非常に
近似していることに注目して下さい。
同じくOMCブレースを用いた報告が宮崎大学よりも2015年に発表されており、その成績は上記報告と同じく、一日20時間装着に対して、50%以上の時間で装着していた患者の成功率は50%以下の場合とは大きく異なることが示されています。
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Hiroshi Kuroki et al : Efficacy of the Osaka Medical College (OMC) brace in the treatment of adolescent idiopathic scoliosis following Scoliosis Research Society brace studies criteria :SCOLIOSIS 2015
(SRS装具研究指針に基づいた思春期特発性側弯症への大阪医科大学式装具OMCブレース)の有効性)
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そして、この医学論文で非常に興味深かったのが、次の一文です。
In our previous study, there was statistical difference between 7–12 hours and 13–18 hours a day but no statistical difference between 13–18 hours and 19–24 hours a day So, at least 13 hours in brace a day is basically supposed to be mandatory to halt progression of curves.
我々の過去の研究において、装着時間が7~12時間/日と 13~18時間/日 では 成功率に大きな差が見られた。しかし13~18時間/日と19~24時間/日との間には差は見られなかった。
このことから、装具療法での成功には 最低でも13時間の装着が必要と考える。
ここで示されたデータが、やはり米国・カナダでの多施設臨床試験結果と近似していることに注目願います。
病気に立ち向かうために
患者さんやそのお母さん方がどうやって闘ってきたかを知ることは
必ず 皆さんのこころの支えになるでしょう
病気に立ち向かうために
医学データが何を示しているか、という「事実」を知ることは
きっと、皆さんの励みになると信じています
august03
ある意味、装具療法は「強いる」という面があるがゆえに、両親にとっても、そしてお子さん自身も、納得し、積極的に取り組むという気持ちには簡単にはいかない、というのも事実として存在します。
日本のようにムシムシと蒸し暑い湿度の高い気候で、かつ、公立小中学校の冷房化率は50%未満です。
装着しているだけでも苦しいのに、まして一日の大半を過ごす教室には冷房もないとしたら、......そしてさらに、もしその子が装具を装着していることを周囲に知られたくないと思っていたとしたら、そのような蒸し暑い教室での装着は諦めてしまうでしょう。
思春期特発性側弯症治療における環境の課題は幾つか存在しますが、その主たるものは次のふたつでしょう
1. カミングアウトする? できる?
2. 冷房のない教室という日本の学校環境
心理面と環境面という、このふたつをどう乗り越えられるか、ということがご両親が直面する最初の壁となります。
心理面については、インターネット検索から、患者さん自身のブログ・お母さんのブログを探して、ぜひとも読み通してみて欲しいと思います。
参考までに、その中から幾つかのサイトのURLを下記に示しました。
・ほのぼの日記 (どんな苦境でも笑い飛ばす力に勇気をもらえます)
・アラブで子育て (ほのぼの日記を付けていた子のお母さんのブログです)
・特発性側弯症・娘の記録 (親娘二人三脚で側弯症と向き合ってきたお母さんのブログ。ぜひとも読み通して下さい)
・おとなの側弯 (リンク集もありますので、参考にして下さい)
・大人の側わん症患者の日記 (こちらのリンク集も参考にされて下さい)
この病気には治療法=装具療法は存在します。 しかし残念ながら、約10%~20%ほどの人には装具療法も効果を持たない、ということも医学データ上の事実として存在します。
装具療法は、実際にそれを身につける子どもにとっては、かなりの苦行とも言えるものになります。心理的負担が増し、さらには物理的苦痛も味わうことになります。
これを乗り越える為に
もし医学が示すデータが患者さんとその両親にとって、
装具療法を受け入れる支えになることを願ってやみません。
医学データとは、例えば
ノルウエーの装具療法患者の20年フォローでも報告されていたように、装具療法には一定の治療効果があることが示されています。
ここでは、日本の大阪医科大学の医学報告を例として、その実績を示します。
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Hiroshi Kuroki et al : Predictive factors of Osaka Medical College (OMC)brace treatment in patients with adolescent idiopathic scoliosis :SCOLIOSIS 2015
(思春期特発性側弯症患者における大阪医科大学式装具-OMCブレースの治療効果要因)
Patients were instructed to wear the brace for a minimum of 20 hours per day at the beginning of brace treatment. When skeletal maturity was noted, that is, all of the following three criteria were fulfilled; a Risser stage of 4, at least 2 years passed since the onset of menstruation (for
girls), two consecutive visits over a time period of at least 1 year with no more than a 1-cm increase in height, the brace weaning started and the time in brace was slowly reduced during 1 year. Finally the brace wearing was stopped at 1 year post skeletal maturity.
患者には装具開始から1年間は 20時間/日 の装着を指導。次の3要件が満たされることを確認する。 リッサーサインが4であること・初潮から少なくとも2年は経過していること・少なくとも1年間に連続2回の定期検査で身長が1cm以上伸びていること。これらをもって骨成熟の確認として、少しづつ装着時間を減らしていき、骨成熟完了後の1年後に装具卒業とした。
→注意:上記はaugust03の拙訳ですので、実際の指導・指示は「専門医」に従ってください。
そしてこの2015年の報告では装具装着時間と成功との関係について下表データが示されています。
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一日20時間装着の指導に対して、50%以上の患者の成功率は88.2%、50%以下の患者の場合は42.8%
→注意:ここで示された 50%という数値を指導20時間に対する50%、つまり10時間以上と解釈しています。
ここで10時間以上の成功率 88.2% という数値は、米国・カナダでの多施設臨床試験で示されたデータと非常に
近似していることに注目して下さい。
同じくOMCブレースを用いた報告が宮崎大学よりも2015年に発表されており、その成績は上記報告と同じく、一日20時間装着に対して、50%以上の時間で装着していた患者の成功率は50%以下の場合とは大きく異なることが示されています。
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Hiroshi Kuroki et al : Efficacy of the Osaka Medical College (OMC) brace in the treatment of adolescent idiopathic scoliosis following Scoliosis Research Society brace studies criteria :SCOLIOSIS 2015
(SRS装具研究指針に基づいた思春期特発性側弯症への大阪医科大学式装具OMCブレース)の有効性)
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そして、この医学論文で非常に興味深かったのが、次の一文です。
In our previous study, there was statistical difference between 7–12 hours and 13–18 hours a day but no statistical difference between 13–18 hours and 19–24 hours a day So, at least 13 hours in brace a day is basically supposed to be mandatory to halt progression of curves.
我々の過去の研究において、装着時間が7~12時間/日と 13~18時間/日 では 成功率に大きな差が見られた。しかし13~18時間/日と19~24時間/日との間には差は見られなかった。
このことから、装具療法での成功には 最低でも13時間の装着が必要と考える。
ここで示されたデータが、やはり米国・カナダでの多施設臨床試験結果と近似していることに注目願います。
病気に立ち向かうために
患者さんやそのお母さん方がどうやって闘ってきたかを知ることは
必ず 皆さんのこころの支えになるでしょう
病気に立ち向かうために
医学データが何を示しているか、という「事実」を知ることは
きっと、皆さんの励みになると信じています
august03