代替医療関連から、アメリカ国立補完統合衛生センター
(NCCIH : National Center for complementary and Integretive Health)について調べてみました。
偽装すること、いかにももっともらしく誤魔かすか、黒でも白であると見せるためのロジック etc
マスコミを賑わす政治劇が進行中ですが、あそこで展開されている手法は、これまでにも
何度も見聞きしていることですね。
病気に対する「治療」をめぐっても同様の手法が展開されるのがつねです。
ただ、病気の場合 もっとひどいと感じるのは、
病気の本人、そして両親・家族にとっては「それで治るなら」という思いがとても強く
そして、その思いは、.....第三者から見たときの冷静な考えとは、次元が異なる。ということ
下記にお示しするのは、すでに皆さんもお気づきの事柄だと思いますが、幾つかの実例も
交えながら、あらためてここに記してみました。
1.政治家を宣伝に利用する
(あるいは政治家自らが、「それ」を良しと判断して宣伝に積極的に参与する)
これは某整体のホームページに掲載されていた写真のコピーです。
どういう経緯で、整体のポームページに登場することになったのかはわかりませんが、
この写真を見て、この整体を信用して通うことを決めたご両親もいたと思います。
医学的事実に基づいての行動だったのでしょうか?
過去数千年にわたって「治せた」ことのなかった特発性側弯症をこの施術師が治したことを
すばらしいと認めたのであったなら、 医師であり政治家であり、かつ大臣だったのですから、
どうしてノーベル医学賞を推薦しなかったのか不思議でなりません。
あるいは、どこかの医科大学の教授に推薦することもできた立場なのに
宣伝に利用されただけとは.....
政治家が動く構図、というものがあるとき。 典型的なパターンと言えます。
2. 有名人による宣伝 あるいは「それ」を信じてその治療に命を捧げるパターン
アップルの創業者スティーブ・ジョブズが膵臓癌の治療に民間療法を信じて数年という時間を費やし、最終的には
手術をしたけれどすでに手遅れだった。という話は多くのかたが見聞きされていると思います。
国内でも同様の事例が後を絶ちません。 病気がガンの場合は、海外国内をとわず数多くのエピソードを私たちは見聞き
することができます。
側弯症の例では、ウサイン・ボルトが本人の意思とはまったく関係なく、側弯体操を頑張ればボルトのように側弯症を
克服できる、という美談・努力物語に利用されている。という構図もあります。
「それ」と直接関係あろうがなかろうが、そういうことの説明は抜きでも、人間の持つ「物語」に感化されるという
習性に利用できるのなら、有名人はとことん利用する。という手法です。
......よもや、側弯体操の宣伝に自分が利用されているとはウサイン・ボルト自身は知る由もありませんが。
3.医師(医学博士などのメディカルドクター)の登場
民間療法が「医師」と繋がる、というパターンは枚挙にいとまがないほどつねに存在します。
このStep by stepでも先に取り上げた「民間療法施術による赤ちゃんの死亡:国内事例 2014年6月」の場合も
新潟の医師が、この事件の被告人と共同著者という形で、本を出版し、彼女の施術の「医学的裏付け」に協力していた。
という事実がありました。
医学的には何の根拠もありませんが、ここに「医師」が登場することで、この「医師」が述べたことが
一般市民からみれば「医学的根拠」ということに見えてしまう。という構図です。
側弯体操の場合も、都内の某A医師が登場し、積極的に参与することで、民間療法の推進者となっているわけですが、
このような「医師(メディカルドクター)」が民間療法あるいは標準医療として認められていない治療方法に登場して
医療事故や事件を引き起こしてきていることも、これまでも多くの新聞が報道してきているものです。
4.マスコミの無責任な放送・報道や書籍による影響
このようにタイトルに記してみるだけでも、多くの皆さんは、ひとつふたつの事例を思い出すことができると思います。
日本は表現の自由が守られた民主国家ですから、インターネットはもちろんのこと、数多くの書籍や、テレビなどで
新しい治療法や、「〇〇〇はこれで治る」的な情報を見聞きすることは日常茶飯事です。
おそらくマスコミに責任を問うこともできないでしょうし、止めることはなおさらできないことでしょう。
放送前には厳重な内部での検証がなされた上で公開されていると思います。
でも、それが「正しい」とどこまで言えるのか? それを鵜呑みにしていい内容なのか? ということを
よく考え、選択する知識・知恵を持つべきは私たち自身の責任になると思います。
医療においても「賢い消費者になる」という意識を持ち、勉強することが私たちには求められているのだと思います。
5.「米国では認められている、欧米では認められている」という言葉に弱い日本人気質の利用
次の文章は某健康サイトからのコピーです
「このところ米国では、急速に代替医療(Altenative Medicine)への関心が高まっています。
背景には、長期にわたる西洋医学による診断・治療が医療費の高騰を招き、
一方で医薬品の副作用の問題や、西洋医療が慢性病にはあまり効かない場合もあることが考えられます。
また、米国では国立補完代替医療センター(NCCAM)が中心となり、最先端の研究に取り組んでいます。」
「日本の代替医療の現状ですが、効果が明確になっていない都合上、保険の適用ができない体制になっています。
一方、米国では代替医療が効果ある医療として認められており、多くの代替医療に保険が適用されています。」
この文章を読むと、どうしても欧米信仰の思いがある私たち日本人には、「そうか、そうだ」という感情が
湧き上がってきます。無批判にこの内容を信じてしまいます。
英語が苦手な多くの日本人は、あえて 国立補完代替医療センター(NCCAM)をグーグルで調べてみようとは
なかなかできません。 ひとつには、欧米信仰のある私たちは調べてみるまでもなく、すでに上の文章を
信用してしまっているからでもあります。
そこで、グーグルで 国立補完代替医療センター(NCCAM)を検索してみました。
検索結果の上から順番に内容を見ていきましょう。
・ウィキペディア「アメリカ国立補完統合衛生センター」より引用
補完的健康アプローチ(補完医療・代替医療)の研究を行う政府機関。旧称は国立補完代替医療センター。
代替医療局の発足当初、研究対象は「Alternative Medicine」(代替医療)と呼ばれ、通常医療
(現代医学、西洋医学)にはない新たな予防法・治療法の開発が期待されていた。組織は拡大し、
莫大な研究費が投じられてきた。しかし実施された病気の予防・治療を目的とした臨床試験の
ほとんどは思わしい結果ではなく、国民やメディアから税金の無駄遣いとして厳しい批判を受けた。
・PDF「NIH に国立補完代替医療センターを設立 安全で有効な補完代替医療」
当該PDF発行元は不明。「『適切な代替医療』 鈴木信孝編著 日本医療情報出版」より引用した文章。
(略) 1999 年にNIHで大幅な予算増となったのはこのNCCAM と前立腺がんに対するもののみであるそうです。
また、2000 年にはNCCAM の予算はさらに増大し6840 万ドル(約82 億円)となっています。
これらのことから、アメリカにおける代替医療の取り組み方が尋常でないことが十分うかがえます。
NCCAM は実際の臨床が行われている施設ではありませんが、NIHのなかにはクリニカルセンターがあり、
そこで各種研究プロジェクトと直結される形で最先端の臨床が行われており、アメリカ合衆国全土から
患者が来院しています。
→→時間軸からすると、最初にしめした某ホームページの記載内容と同系列のもの。
・米国統合医療ノート
どなたかが書き続けてこられた「医療情報」ブログのようです。最新記事は2016年6月の
マルチビタミンについてで、その後の更新はありませんでした。
NCCAMについては、2010年6月の記事としてその組織と活動内容が紹介されていました。
・PDF がんの補完代替医療診療手引き (2012年2月)「がんの代替医療の科学的検証に関する研究」班作成
これは米国のNCCIHに関するものではなく、国内のがん患者における代替医療利用の実態調査ならびに
がん患者に対して、医師がどのように対応すべきかを記した医師向けの手引きでした。
これを読んで感じたのは、このStep by stepのなかでも、これまで特発性側弯症の治療はどこか「がん治療」に
似ていることを記載してきたのですが、ここにもその例が現れていました。
がん患者の45%(1382 / 3100名)が、1種類以上の補完代替医療を利用している
補完代替医療の利用にあたって、平均して月に5万7千円を出費している
利用する主な目的は、がんの進行抑制(67%)、治療(45%)となっている
補完代替医療を利用している患者の57%は、十分な情報を得ていない
補完代替医療を利用している患者の61%は、主治医に相談していない
さらに、補完代替医療を利用していない場合でも、その利用を考えたり興味を持ったりしている患者は多く、
既に利用している人と興味を持っている人を合わせると、患者の80%以上が該当することも確認されています
なぜ、患者に補完代替医療の利用について確認をしなければならないのか
(それは)患者から補完代替医療の利用について積極的に打ち明けてくれることは少ない
医師に相談しない主な理由は、
「医師が尋ねてくれなかった(56%)」
「医師に言う必要がないと 思った(27%)」
「医師は理解してくれないと思った(19%)」など
なお頭ごなしに否定をしたり無視したりしても問題の解決には至りません。
逆に、患者は主治医に黙って補完代替医療を利用してしまう結果につながりかねません
・「米国立補完代替医療センター(NCCAM)、プロバイオティクスの研究を本格化」2013年9月記載
これは某健康食品会社のホームページのようです。
曰くは、「消費者の関心の高まりから、傘下の米国立補完代替医療センター(NCCAM)が
効用の検証に乗り出している。」
「ブリッグス博士は、「米食品医薬品局(FDA)ではプロバイオティクス商品の健康への有効性の表示を
まだ認めていません。しかし、すでに急性や抗生物質の副作用による下痢、アトピー性皮膚炎などの
症状緩和作用が科学的に立証されています」と付け加えている。
「NCCAMでは研究資金を投入し、最優先課題としてプロバイオティクスの有効性の立証に力を注いでいる。
具体的には、幼児の下痢、過敏性腸症候群、肝性脳症、耐抗生物質性細菌に対する効果、
子ども向け摂取法とヨーグルトドリンクの利用効果といったテーマで研究を進めていくとしている。」
→→→ 実際に NCCAM 現在のNCIHHのホームページから「プロバイオティクス Probiotics」の項目をみて見ました。
ここで述べられているのは次のとおりでした。
Although some probiotics have shown promise in research studies,
strong scientific evidence to support specific uses of probiotics
for most health conditions is lacking.
The U.S. Food and Drug Administration (FDA) has not approved any probiotics
for preventing or treating any health problem. Some experts have cautioned
that the rapid growth in marketing and use of probiotics may have outpaced
scientific research for many of their proposed uses and benefits.
要約しますと、効能効果はまだ証明されていない。 FDAは、プロバイオティクスが健康を増進させたり
健康を害することを防止する効果があるとは認めていない。
しっかりとした研究が行われていないのに、急激に消費市場が拡大していくことに警鐘を鳴らしている科学者もいる。
さらに副作用についても記載されており
・健康人が食する場合はとくに問題はないだろうが、重篤な副作用が発生することがありうる。
On the other hand, there have been reports linking probiotics to severe side effects,
such as dangerous infections, in people with serious underlying medical problems.
The people who are most at risk of severe side effects include critically ill patients,
those who have had surgery, very sick infants, and people with weakened immune systems
→→→ つまり、米国の政府機関のひとつである NCCIHは、補完代替医療を調査・研究する機関であること。
それは現在も継続して行われていることは、事実として確認できたと思います。
ただし、上記ふたつの企業あるいは団体が述べているような、米国政府機関が代替医療を研究している。
ということと代替医療が効果があると認めた。ということとは全く異なることが、
NCCAMの英語ホームページを読むことで分かります。
→→→ 例えば、NCCIHが「カイロプラクティック」の有効性に関するランダマイズ(くじ引き)臨床試験結果を
Youtubeで報告しているのですがその内容は、慢性腰痛に対するカイロプラクティック施術の
2年後の結果は、通常医療と差がない、というものでした。
・Chiroplactic Studies
臨床試験は、カイロプラクター vs 理学療法士 vs 痛み止め・患者向け説明書 という3つの「治療法」を
実施し、その患者さんを2年間フォローしたものでした。
もちろん「差」がない、という試験結果は カイロプラクティックが効かないということを証明したもの
ではありません。
上記表で示されているのは、カイロプラクティックも、理学療法も、痛み止めも、その「治療」を実施した
直後から「効果」は次第に減少してゆき、ほぼ4カ月後から2年後までには「同じ状態」に戻った。
ということが報告されているわけですから、その「施術なり、治療」をそのまま継続すれば
患者さんにとっては「治療効果」が継続していくことになるかもしれません。
「慢性腰痛」というものは、皆さんもご存知のようにレントゲン撮影でも、CT検査でも MRI検査でも
病因が明確に抽出できない「痛み」です。
「慢性腰痛」に対するこの臨床試験データから言えるであろうことは、
①米国の政府機関のひとつである NCCIHアメリカ国立補完統合衛生センターは、
補完代替医療を調査・研究する機関である
②調査・研究する機関が存在していることをもって、米国政府が「民間療法も含めた全ての代替医療」を
認可し、推奨しているわけではない。
③国内では、米国にこの機関があることをもって、米国政府が特定の〇〇〇療法を認めているかのように
宣伝に利用する企業、団体、個人がいるが、それは正しいとは言えない。
④「海外にデータがある」「海外では認められている」という言説をそのまま鵜呑みにしてはいけない。
インターネットを見ていますと、しばしば目にするのが「schroth体操は側弯症治療に効果がある」というような
宣伝あるいは、医療関係者による言説ですが、彼らの言説はすべて「海外データがある」「海外の実績がある」
というものばかりです。
病気を治したい一心の患者さん、そして親御さんにとっては、その言葉は本当にこころに染み渡るものだと
思います。
私に言えること、そして言いたいことは、
・貴方の、あなたのお子さんの思春期特発性側弯症の治療を任せられる主治医を探してください
・その先生と、じっくりと話し合ってください
ということです。
どうすることが自分の為になるのか、どうすることがお子さんの為になることなのか、
先生と よく 話し合ってみて欲しいのです。
この病気は、一度、二度 通院して終わるものではなく
同様に、一か月、二か月、側弯整体に通って体操することで終わるものではなく
骨成熟が完了するまでの 2年、3年、4年
そして、その後 大人になってからの定期検査も含めて
長い年月、まさに自分の身体と一生つきあっていく性質のものです
長い年月を 一緒に話し合ってくれる 先生を 探してください
それが、必ずや あなたの あなたのお子さんを守る 最大の手段になるはずです
初回記載: 2018年3月13日
august03