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聖霊佐倉市民病院/南先生が書かれた論文をご紹介します。
要約:
脊柱側弯症の治療はX線上のCobb角と年齢により、決められる。
概して、Cobb角25度未満は経過観察のみとされ、25度以上で 5度以上の進行が
みられる場合、唯一の保存療法である装具療法が適応となる。
Cobb角45度以上は手術適応となる。手術療法では、...Pedicle screwを応用した
術式...により、矯正率が著しく向上している。10歳以下の側弯症では
Growing Rodによる非固定手術が選択される。
以下は、論文からの抜粋と、一部には、わかりやすいように説明を加えて
みました。原文は「...」で示し、内容部分は要約しました。
「通常脊柱側弯症は自覚症状に乏しく、本人がその変形を自覚しないまま
進行するため、側弯変形が増悪する思春期の成長期にあっては早期発見、
早期治療が重要となる」
小学校、中学校で側弯に対する集団検診が行われている地域と行われていない
地域が現に存在します。国内発生率に地域差はありませんから、検査が実施
されていない地域では、その発見が遅れる可能性は否定できません。
お母さんがたは、お子さんが通っている学校で、側弯検診が実施されているか
どうかにも、どうか注意を払って下さい。
....日本の医療行政の貧困はどんどんと進んでいることの、ひとつの現れでしょう
「脊柱側弯症が身体に及ぼす影響については、背部隆起などの外見上の
変形およびその進行、心肺機能の低下、痛み、心因性ストレスなどの
問題があげられる」
「治療の目的としては、思春期から成人期までは体幹の変形の改善、
進行の防止、あるいは精神的な問題としての心因性ストレスに主眼」
側弯症は不治の病ではありません。必要があれば、手術による治療が可能です。
思春期の、特に女の子に多い病気という面からも、精神的支えになってあげること
それがとても大切ですね。
<脊柱側弯症分類>
機能性側弯 (様々な原因による一時的な側弯状態。原因を除くことで改善)
原因/要因は
* 若年性腰椎椎間板ヘルニアなどによる疼痛性側弯
* 脚長不等、姿勢異常、あるいはヒステリーなどの精神反応に伴う側弯
構築性側弯 (病気としての真の側弯症)
* 特発性 (原因はいまだに明らかでない)
* 先天性
* 神経.筋性
* 神経繊維腫症性
* 間葉系異常
* これら以外にも極めて多くの系統疾患の一症状
<特発性側弯症の発症時期による説明>
* 乳幼児期側弯症 0歳~3歳
通常生後六ヶ月以内に側弯変形の進行がみられる。高度変形可能性高い
* 学童期側弯症 4~9歳
男女比ほぼ同等。(身長がのびる)成長余力が大きいため進行性。
resolving typeもある。
(進行しないタイプもある、という意味と思われます)
* 思春期側弯症
もっとも多数を占める。女子に多い。成長著しい時期に側弯変形が進行する
<特発性側弯症の自然経過>
「特発性側弯症は骨成長終了まで進行を続け、成長終了後は進行しないと
されていたが、長期経過の報告にて、成長終了後の進行についても
明らかにされるようになった」
Lonsteinの研究より
* 19度以下のカーブの進行
Risser sign 0~I の場合 22%
Risser sign II~IV の場合 1.6%
* 20~29度のカーブの進行
Risser sign 0~I の場合 68%
Risser sign II~IV の場合 23%
* 初診時10歳以下で20度以上の場合は、100%(全例)の進行
12歳以下で20度以上の場合は、 61%が進行
15歳以上で19度以下の場合は、 4%が進行
weinsteinの平均40年の研究
* 骨成熟終了後 68%(の患者で) 5度以上の進行あり
Ascaniの33年の研究
* 40度未満の患者では進行可能性低い
* 成人で50度以上は、年1~2度の進行
「すなわち、20歳以降はX線上では毎年経過観察しても,年1~2度の変化
では誤差範囲であり、その進行は明らかではないが、5年~10年経過では
進行が顕著となる」
この長期経過観察の研究から予測されることは、
若年で発症した患者は高度変形に進行する可能性が高いこと。逆に高校生ほどの
発症で19度以下であれば、進行することなく、そのままの状態である可能性が
高い、ということ。
成長期終了時期で、矯正結果として40度以下に抑えることができていれば
それ以降の進行の心配はあまりないこと。逆に、50度以上であれば、それ以降も
進行し続ける可能性が高いこと....手術治療の必要性が高い、ということになると
思います。
<脊柱側弯症に対する治療>
「脊柱側弯症の治療はX線上のCobb角と年齢により、決められる。
概して、Cobb角25度未満は経過観察のみとされ、
25度以上で 5度以上の進行がみられ、骨成熟未熟の場合、
治療の対象となる。」
「Cobb角45度以上は手術適応であり、
40度以上50度未満は(手術するかどうか)グレイゾーン」
「Roweは37文献2論文からの各種治療成績の多変量解析を行った結果
治療の成功率の指標は....」
電気刺激法 0.39 最低
自然経過(治療せずにそのまま) 0.49
装具治療 1日8時間 0.60
装具治療 1日16時間 0.62
装具治療 1日23時間 0.93 最高
「保存療法としては、従来、装具療法、体操療法、電気刺激法が広く
行われてきたが、現在では装具療法が唯一の保存療法とされている」
整体で体操のようなことをしているところもあるようですが、治療効果が
まったくないのでしょう、数値対象にさえなっていません。
<装具療法>
1956年 Blountにより報告されたミルウォーキー装具が装具療法発展に寄与
その後
* Boston ブレース (腋下のunder arm ブレース)
* 大阪医大式OMC装具(パッドとパッドを使用して圧迫力やcounter force)
* New York大学装具 (内面の要所にパッドを挿入固定して圧迫)
* 千葉大式装具 (装具自体の形状で矯正)
* 夜間のみ使用する装具 .... Charleston ブレース
Providence ブレース
Cheneau ブレース
「....側弯の増悪を防ぐ維持効果として有用」
「装具療法の治療成績の向上のためには、装具による患者への心理的負担を
考慮しつつ、治療者側のよりよい装具の開発と徹底した指導と情熱、
患者と家族側の装具療法に対する意欲を促すことが大切」
装具をつけ続けるのはたいへんだと思います。
でも、装具療法は装着時間と治療成績が比例しているのですから、どうか
あきらめないで、お子さんに装具装着を励まして下さい。
<術後の管理>
「従来はギプス固定や硬性装具を行っていたが、インプラントの改善により
術後の外固定はすべて省略することが可能となった」
「術後5日で起立歩行開始、2週までに退院、退院後は学生は通学可とするが
体育授業は3ヶ月は見学、1年間は柔軟体操、過度の前屈後屈捻転運動や
器械体操は中止とする
2週間で退院して、学校にすぐ復帰できるんですね。
夏休み、冬休みに手術をされる患者さんが多いようですが、進行性の場合は
何ヶ月も待つことなく、手術のタイミングをはかられてはいかがでしょう。
/////////////////////////////////////////////////////////////
読売 医療ルネサンスより
「早めの装具 悪化を防ぐ」
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060216ik01.htm
////////////////////////////////////////////////////////////////////
<特発性脊柱側弯症>
分類 : 乳幼児期 (3才以下)
学童期 (3才~思春期頃)
思春期 (思春期以降)
1. 思春期側弯症が80%を占める
2. 原因不明である
3. 脊柱側弯による体幹の変形
4. 脊柱の回旋に伴いhumpが生じる (回旋しながら側弯する)
*rib hump=前屈位での右側隆起
5. 成長期の特発性側弯症の進行悪化を続けるものは十数%
6. 女子では初潮後3年目に入るまでは急速悪化時期にある為、特に注意が必要
7. Cobb角25度以上が装具療法の適用基準
8. 30度以上に悪化させないことを目標とする
9. 50度以上、胸郭変形の著しい症例は手術適応となる
10.側弯の進行が停止するまでの期間、側弯の矯正位を保持し、悪化を防止する事
11.装具からの離脱の時期は、側弯進行の停止を確認し(高校卒業頃)に行う
12.離脱後も1~2年の経過観察が必要
<手術療法>
1. Harrington法
2. Dwyer法
3. Cotre-Dubousett法
要約:
脊柱側弯症の治療はX線上のCobb角と年齢により、決められる。
概して、Cobb角25度未満は経過観察のみとされ、25度以上で 5度以上の進行が
みられる場合、唯一の保存療法である装具療法が適応となる。
Cobb角45度以上は手術適応となる。手術療法では、...Pedicle screwを応用した
術式...により、矯正率が著しく向上している。10歳以下の側弯症では
Growing Rodによる非固定手術が選択される。
以下は、論文からの抜粋と、一部には、わかりやすいように説明を加えて
みました。原文は「...」で示し、内容部分は要約しました。
「通常脊柱側弯症は自覚症状に乏しく、本人がその変形を自覚しないまま
進行するため、側弯変形が増悪する思春期の成長期にあっては早期発見、
早期治療が重要となる」
小学校、中学校で側弯に対する集団検診が行われている地域と行われていない
地域が現に存在します。国内発生率に地域差はありませんから、検査が実施
されていない地域では、その発見が遅れる可能性は否定できません。
お母さんがたは、お子さんが通っている学校で、側弯検診が実施されているか
どうかにも、どうか注意を払って下さい。
....日本の医療行政の貧困はどんどんと進んでいることの、ひとつの現れでしょう
「脊柱側弯症が身体に及ぼす影響については、背部隆起などの外見上の
変形およびその進行、心肺機能の低下、痛み、心因性ストレスなどの
問題があげられる」
「治療の目的としては、思春期から成人期までは体幹の変形の改善、
進行の防止、あるいは精神的な問題としての心因性ストレスに主眼」
側弯症は不治の病ではありません。必要があれば、手術による治療が可能です。
思春期の、特に女の子に多い病気という面からも、精神的支えになってあげること
それがとても大切ですね。
<脊柱側弯症分類>
機能性側弯 (様々な原因による一時的な側弯状態。原因を除くことで改善)
原因/要因は
* 若年性腰椎椎間板ヘルニアなどによる疼痛性側弯
* 脚長不等、姿勢異常、あるいはヒステリーなどの精神反応に伴う側弯
構築性側弯 (病気としての真の側弯症)
* 特発性 (原因はいまだに明らかでない)
* 先天性
* 神経.筋性
* 神経繊維腫症性
* 間葉系異常
* これら以外にも極めて多くの系統疾患の一症状
<特発性側弯症の発症時期による説明>
* 乳幼児期側弯症 0歳~3歳
通常生後六ヶ月以内に側弯変形の進行がみられる。高度変形可能性高い
* 学童期側弯症 4~9歳
男女比ほぼ同等。(身長がのびる)成長余力が大きいため進行性。
resolving typeもある。
(進行しないタイプもある、という意味と思われます)
* 思春期側弯症
もっとも多数を占める。女子に多い。成長著しい時期に側弯変形が進行する
<特発性側弯症の自然経過>
「特発性側弯症は骨成長終了まで進行を続け、成長終了後は進行しないと
されていたが、長期経過の報告にて、成長終了後の進行についても
明らかにされるようになった」
Lonsteinの研究より
* 19度以下のカーブの進行
Risser sign 0~I の場合 22%
Risser sign II~IV の場合 1.6%
* 20~29度のカーブの進行
Risser sign 0~I の場合 68%
Risser sign II~IV の場合 23%
* 初診時10歳以下で20度以上の場合は、100%(全例)の進行
12歳以下で20度以上の場合は、 61%が進行
15歳以上で19度以下の場合は、 4%が進行
weinsteinの平均40年の研究
* 骨成熟終了後 68%(の患者で) 5度以上の進行あり
Ascaniの33年の研究
* 40度未満の患者では進行可能性低い
* 成人で50度以上は、年1~2度の進行
「すなわち、20歳以降はX線上では毎年経過観察しても,年1~2度の変化
では誤差範囲であり、その進行は明らかではないが、5年~10年経過では
進行が顕著となる」
この長期経過観察の研究から予測されることは、
若年で発症した患者は高度変形に進行する可能性が高いこと。逆に高校生ほどの
発症で19度以下であれば、進行することなく、そのままの状態である可能性が
高い、ということ。
成長期終了時期で、矯正結果として40度以下に抑えることができていれば
それ以降の進行の心配はあまりないこと。逆に、50度以上であれば、それ以降も
進行し続ける可能性が高いこと....手術治療の必要性が高い、ということになると
思います。
<脊柱側弯症に対する治療>
「脊柱側弯症の治療はX線上のCobb角と年齢により、決められる。
概して、Cobb角25度未満は経過観察のみとされ、
25度以上で 5度以上の進行がみられ、骨成熟未熟の場合、
治療の対象となる。」
「Cobb角45度以上は手術適応であり、
40度以上50度未満は(手術するかどうか)グレイゾーン」
「Roweは37文献2論文からの各種治療成績の多変量解析を行った結果
治療の成功率の指標は....」
電気刺激法 0.39 最低
自然経過(治療せずにそのまま) 0.49
装具治療 1日8時間 0.60
装具治療 1日16時間 0.62
装具治療 1日23時間 0.93 最高
「保存療法としては、従来、装具療法、体操療法、電気刺激法が広く
行われてきたが、現在では装具療法が唯一の保存療法とされている」
整体で体操のようなことをしているところもあるようですが、治療効果が
まったくないのでしょう、数値対象にさえなっていません。
<装具療法>
1956年 Blountにより報告されたミルウォーキー装具が装具療法発展に寄与
その後
* Boston ブレース (腋下のunder arm ブレース)
* 大阪医大式OMC装具(パッドとパッドを使用して圧迫力やcounter force)
* New York大学装具 (内面の要所にパッドを挿入固定して圧迫)
* 千葉大式装具 (装具自体の形状で矯正)
* 夜間のみ使用する装具 .... Charleston ブレース
Providence ブレース
Cheneau ブレース
「....側弯の増悪を防ぐ維持効果として有用」
「装具療法の治療成績の向上のためには、装具による患者への心理的負担を
考慮しつつ、治療者側のよりよい装具の開発と徹底した指導と情熱、
患者と家族側の装具療法に対する意欲を促すことが大切」
装具をつけ続けるのはたいへんだと思います。
でも、装具療法は装着時間と治療成績が比例しているのですから、どうか
あきらめないで、お子さんに装具装着を励まして下さい。
<術後の管理>
「従来はギプス固定や硬性装具を行っていたが、インプラントの改善により
術後の外固定はすべて省略することが可能となった」
「術後5日で起立歩行開始、2週までに退院、退院後は学生は通学可とするが
体育授業は3ヶ月は見学、1年間は柔軟体操、過度の前屈後屈捻転運動や
器械体操は中止とする
2週間で退院して、学校にすぐ復帰できるんですね。
夏休み、冬休みに手術をされる患者さんが多いようですが、進行性の場合は
何ヶ月も待つことなく、手術のタイミングをはかられてはいかがでしょう。
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読売 医療ルネサンスより
「早めの装具 悪化を防ぐ」
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060216ik01.htm
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<特発性脊柱側弯症>
分類 : 乳幼児期 (3才以下)
学童期 (3才~思春期頃)
思春期 (思春期以降)
1. 思春期側弯症が80%を占める
2. 原因不明である
3. 脊柱側弯による体幹の変形
4. 脊柱の回旋に伴いhumpが生じる (回旋しながら側弯する)
*rib hump=前屈位での右側隆起
5. 成長期の特発性側弯症の進行悪化を続けるものは十数%
6. 女子では初潮後3年目に入るまでは急速悪化時期にある為、特に注意が必要
7. Cobb角25度以上が装具療法の適用基準
8. 30度以上に悪化させないことを目標とする
9. 50度以上、胸郭変形の著しい症例は手術適応となる
10.側弯の進行が停止するまでの期間、側弯の矯正位を保持し、悪化を防止する事
11.装具からの離脱の時期は、側弯進行の停止を確認し(高校卒業頃)に行う
12.離脱後も1~2年の経過観察が必要
<手術療法>
1. Harrington法
2. Dwyer法
3. Cotre-Dubousett法
文中の内容で質問があります。
Lonsteinの研究のところに、Risser signとありますが
これはどういう意味でしょうか?
知らないことが沢山あってこのHPで勉強させてもらっています。
よろしくお願いします。