http://www.srs.org/stacy_lewis/about.php
(意訳by august03)
ステーシルイス、プロゴルファーでありLPGAのスター。でも、このあなたの隣家族の末娘のような、どこにでもいるようなブロンドヘアー、ブルーアイの少女は、プロゴルファーの中ではとても異質な女性であることを皆さんはご存知でしたか? アマチュア時代を通じてゴルフの世界で偉業遂げた、その陰でスポーツ選手としてはマイナス要素であるはずの脊椎側弯症という病気に打ち勝ってきたのです。
学校での側弯症スクリーニングで、それは彼女の11歳のときでしたが、脊椎側弯症と診断されました。その後、7年半という長期間にわたり、一日18時間以上も、例えば、寝ている時間さえも彼女は装具を装着していました。唯一、ゴルフをするときだけ装具を外す、という生活を続けていました。骨の成長が止まれば、装具を外すことができる。ただそれだけを楽しみとして、彼女と装具との生活は続きました。そして、18歳になり彼女は装具を外したのでした。
しかし、不幸にも、彼女の側弯症は、装具を外したのちも進行を続け、これ以上の進行を止める為には、もう手術以外に方法がない状態にまでカーブが進行してしまったのです。それは、アーカンソー大学のゴルフ奨学生を獲得した、まさにその直後での診断結果でした。もし手術をしてしまった場合、ゴルフがまたできるかどうかは全くわかりませんでした。
彼女の手術では、医師は前方固定法という手術法を選択し、1本の金属ロッドと5本のスクリューを用いて最小の固定範囲で、ゴルフをする上でのスイングを行う脊椎可動を温存した手術を実施することとし、そして手術は成功しました。
(Stacy's Homepage)
手術後3か月は装具で体幹を補助し、6か月のリハビリとしてのゴルフレッスンを行い、そして2004年にアーカンソー大学のゴルフチームにカムバックしたのです。2008年に大学を卒業するまでの間に、NCAAで12度優勝し、また学生として参加したLPGA NWアーカンソー大会においても「優勝」したのでした。2008年夏にプロに転向し、LPGAでの活躍を含め、様々な試合で歴史を塗り替えるような活躍を見せ、2011年のナンバーワンワールドプレイヤーに選ばれたのでした。
彼女の活躍は現在も続いています。金属デバイスの入っている脊椎に対する慎重なケアと日常のストレッチを、決して怠ることはありません。いまは、プロゴルファーであるとともに、側弯症学会のスポークスマンとして、側弯症の子供たちを励まし続けています。側弯症だからといって、立ち止まることはない、前進しなさい、と。
/////////////////////////////////////////////
august03よりのコメント:
・脊椎固定術には、大きく分類して2種類あります。多くの場合は、後方固定が行われます。脊髄神経を含め、馬尾神経の保護というリスク回避が必須ですが、大動脈が周囲にはなく、2本の金属ロッドを必要な部位(長い部位にでも)に挿入し、多数の金属スクリューで「しっかり」と脊椎骨に固定することが可能です。脊椎変形に対する矯正操作も比較的容易であり、術前に比べて、術後の矯正具合は目を見張るものがあります。一方、後方固定の場合は、(後方固定術としてのメリットもあるわけですが)、ステイシーのレントゲン写真を見ていただきますとおわかりになられるように、術前と比較して、術後の変形矯正はそれほど大きいわけではありません。上位胸椎の曲がりには何も手を加えられていません。おそらく医師は、ゴルフスイングのときの体の動きを計算に入れて、前後屈と回旋の動きの制限を最小限度にしようと考えたのかと思います。このレントゲン写真からは、胸腰椎部のT11?からL1かL2の椎体のみを固定しているようですので、胸椎部と腰椎部での回旋は....股関節部も含めて、かなり大きく温存されたように思われます。
・彼女の不幸であったことは、骨成長後もカーブの進行が進むタイプの側弯症であったこと。
・彼女の幸いは、彼女のスポーツの特性をよく理解した医師が、ゴルフという動きをできるだけ制限しない手術法を実施してくれたこと。(そういう手術テクニックを持った医師がいてくれたこと)
.....つまり、何が言いたいかと言いますと、ステイシーの例は、「とても特別」であり、国内のすべての患者さんに適応可能というものではない、ということです。
世間によくあるパターンとして、マスコミ等で何かの話題が取り上げられると、それを見た患者さんやご家族が、その方法をうちの子にもして欲しい、私にもして欲しいと担当医師にお願いしたり、あるいはその要望を受けてくれる医師を探すためのドクターショッピングが、ときに起こりがちなのですが、それが全て成功するわけではなく、またそれが全て「正しい」わけではない。ということです。 例えば、近眼を治すのに、外科的に角膜にメスを入れて、光の入角度を変えるというような手術法が存在します。その手法をできる医師も国内には大勢おられます。その手術をしたことで、メガネもコンタクトも不要になったという患者さんも大勢おられることでしょう。と、同時に、この手術によって、想像もしていなかったような、障害を得てしまった患者さんも大勢います。マスコミが医学を話題として取り上げるとき、そこには、視聴率を稼ぐという彼らのビジネスの宿命が影に存在しています。その手法を紹介することで、患者を救う、という意図がどれだけあるものか??
医学、医療、医療技術にはメリツトがあれば、デメリットあるいはディスアドバンテージとか、不具合・不良が必ず存在します。 100%はありません。ご自分(ご家族の、お子さんの)の症状がどういうものであり、どういう治療方法があるのか、それはご自分の症状に適応なのか、それとも不適当なのか、どういうメリットがあるのか、どういうデメリットや不具合がありえるのか、そういうことをしっかりと先生から聞き、そしてできるだけ自分の頭で「理解できる」ように考えて欲しいと思います。医学、医療の情報を理解するのは難しいものですが、でも、一時の勢いとか、世間の流れとか、他人の言葉とか、そういうもので判断するのではなく、あるいは判断を他人に預けるのではなく、ともかく自分の頭で考えて欲しいのです。そういうことへの手助けとして、このStep by stepがお役に立てれば幸いです。
august03
☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?
(意訳by august03)
ステーシルイス、プロゴルファーでありLPGAのスター。でも、このあなたの隣家族の末娘のような、どこにでもいるようなブロンドヘアー、ブルーアイの少女は、プロゴルファーの中ではとても異質な女性であることを皆さんはご存知でしたか? アマチュア時代を通じてゴルフの世界で偉業遂げた、その陰でスポーツ選手としてはマイナス要素であるはずの脊椎側弯症という病気に打ち勝ってきたのです。
学校での側弯症スクリーニングで、それは彼女の11歳のときでしたが、脊椎側弯症と診断されました。その後、7年半という長期間にわたり、一日18時間以上も、例えば、寝ている時間さえも彼女は装具を装着していました。唯一、ゴルフをするときだけ装具を外す、という生活を続けていました。骨の成長が止まれば、装具を外すことができる。ただそれだけを楽しみとして、彼女と装具との生活は続きました。そして、18歳になり彼女は装具を外したのでした。
しかし、不幸にも、彼女の側弯症は、装具を外したのちも進行を続け、これ以上の進行を止める為には、もう手術以外に方法がない状態にまでカーブが進行してしまったのです。それは、アーカンソー大学のゴルフ奨学生を獲得した、まさにその直後での診断結果でした。もし手術をしてしまった場合、ゴルフがまたできるかどうかは全くわかりませんでした。
彼女の手術では、医師は前方固定法という手術法を選択し、1本の金属ロッドと5本のスクリューを用いて最小の固定範囲で、ゴルフをする上でのスイングを行う脊椎可動を温存した手術を実施することとし、そして手術は成功しました。
(Stacy's Homepage)
手術後3か月は装具で体幹を補助し、6か月のリハビリとしてのゴルフレッスンを行い、そして2004年にアーカンソー大学のゴルフチームにカムバックしたのです。2008年に大学を卒業するまでの間に、NCAAで12度優勝し、また学生として参加したLPGA NWアーカンソー大会においても「優勝」したのでした。2008年夏にプロに転向し、LPGAでの活躍を含め、様々な試合で歴史を塗り替えるような活躍を見せ、2011年のナンバーワンワールドプレイヤーに選ばれたのでした。
彼女の活躍は現在も続いています。金属デバイスの入っている脊椎に対する慎重なケアと日常のストレッチを、決して怠ることはありません。いまは、プロゴルファーであるとともに、側弯症学会のスポークスマンとして、側弯症の子供たちを励まし続けています。側弯症だからといって、立ち止まることはない、前進しなさい、と。
/////////////////////////////////////////////
august03よりのコメント:
・脊椎固定術には、大きく分類して2種類あります。多くの場合は、後方固定が行われます。脊髄神経を含め、馬尾神経の保護というリスク回避が必須ですが、大動脈が周囲にはなく、2本の金属ロッドを必要な部位(長い部位にでも)に挿入し、多数の金属スクリューで「しっかり」と脊椎骨に固定することが可能です。脊椎変形に対する矯正操作も比較的容易であり、術前に比べて、術後の矯正具合は目を見張るものがあります。一方、後方固定の場合は、(後方固定術としてのメリットもあるわけですが)、ステイシーのレントゲン写真を見ていただきますとおわかりになられるように、術前と比較して、術後の変形矯正はそれほど大きいわけではありません。上位胸椎の曲がりには何も手を加えられていません。おそらく医師は、ゴルフスイングのときの体の動きを計算に入れて、前後屈と回旋の動きの制限を最小限度にしようと考えたのかと思います。このレントゲン写真からは、胸腰椎部のT11?からL1かL2の椎体のみを固定しているようですので、胸椎部と腰椎部での回旋は....股関節部も含めて、かなり大きく温存されたように思われます。
・彼女の不幸であったことは、骨成長後もカーブの進行が進むタイプの側弯症であったこと。
・彼女の幸いは、彼女のスポーツの特性をよく理解した医師が、ゴルフという動きをできるだけ制限しない手術法を実施してくれたこと。(そういう手術テクニックを持った医師がいてくれたこと)
.....つまり、何が言いたいかと言いますと、ステイシーの例は、「とても特別」であり、国内のすべての患者さんに適応可能というものではない、ということです。
世間によくあるパターンとして、マスコミ等で何かの話題が取り上げられると、それを見た患者さんやご家族が、その方法をうちの子にもして欲しい、私にもして欲しいと担当医師にお願いしたり、あるいはその要望を受けてくれる医師を探すためのドクターショッピングが、ときに起こりがちなのですが、それが全て成功するわけではなく、またそれが全て「正しい」わけではない。ということです。 例えば、近眼を治すのに、外科的に角膜にメスを入れて、光の入角度を変えるというような手術法が存在します。その手法をできる医師も国内には大勢おられます。その手術をしたことで、メガネもコンタクトも不要になったという患者さんも大勢おられることでしょう。と、同時に、この手術によって、想像もしていなかったような、障害を得てしまった患者さんも大勢います。マスコミが医学を話題として取り上げるとき、そこには、視聴率を稼ぐという彼らのビジネスの宿命が影に存在しています。その手法を紹介することで、患者を救う、という意図がどれだけあるものか??
医学、医療、医療技術にはメリツトがあれば、デメリットあるいはディスアドバンテージとか、不具合・不良が必ず存在します。 100%はありません。ご自分(ご家族の、お子さんの)の症状がどういうものであり、どういう治療方法があるのか、それはご自分の症状に適応なのか、それとも不適当なのか、どういうメリットがあるのか、どういうデメリットや不具合がありえるのか、そういうことをしっかりと先生から聞き、そしてできるだけ自分の頭で「理解できる」ように考えて欲しいと思います。医学、医療の情報を理解するのは難しいものですが、でも、一時の勢いとか、世間の流れとか、他人の言葉とか、そういうもので判断するのではなく、あるいは判断を他人に預けるのではなく、ともかく自分の頭で考えて欲しいのです。そういうことへの手助けとして、このStep by stepがお役に立てれば幸いです。
august03
☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?