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重要 特発性側わん症 16年間-無治療患者のアウトカム No.2/5

2007-11-11 15:47:05 | 20年後のアウトカム
当記事のオリジナル作製は2007年11月11日です。データを整理して再公開することを計画していたのですが、なかなか作業が進みませんため、とりあえずもう一度このオリジナルのまま再公開することといたしました。

長期成績に関しても、もう一度データを整理していきたいと考えております。

2018年6月25日
august03


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専門誌 Spine. 2007 Sep 15;32(20):2198-207
タイトル A prospective study of brace treatment versus observation alone
     in adolescent idiopathic scoliosis: a follow-up mean of 16 years
     after maturity.
    思春期側弯症に対する装具療法と無治療(観察のみ)のプロスペクティブ
    比較研究 : 骨成熟後平均16年間の観察

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(概要より)
研究デザイン : (10数年前)スウェーデンにて実施されたSRSブレース研究に参加し
た患者に、その後の長期観察研究に参加してもらった。

目的 : (10数年前の)観察初期時の状態(ベースライン)と、骨成熟後におけるカーブ
進行や手術実施率等を調査する。

背景 : SRSブレース研究において装具療法は経皮的電気刺激治療よりも、また無治
療(観察のみ)よりもはるかに優れていることが示された。一方、側弯症治療におい
て装具療法が有効であることを調査によって示した研究はまだ数が少ない、という
状況が存在する。

方法 : 106患者のうち、Malmo地区の41患者はボストンブレースでの治療を行い、
Goteborg地区の65患者には無治療(観察のみ)をおこなった。この長期研究に対して
87%(92人)が長期観察に参加し、レントゲン撮影やその他レビューを得た。
全てのレントゲン写真は、第三者的検査者によってコブ法でカーブの大きさを計測
した。また、骨成熟後に手術にいたった患者もデータベースより抽出し検討した。

結果 : 平均観察期間は16年間、年齢は32歳であった。比較検証する為に、同じ
カーブサイズの患者を選択して、ふたつのグループの成績を比較した。
装具療法の患者では、装着中に、装着前よりも6度カーブが減少していた。
装具療法終了後のこの10数年に及ぶ長期観察期間中に、ほぼ同じレベルのカーブに
戻っていたが、手術を必要とした患者はいなかった。
無治療(観察のみ)の患者の場合は、初回のSRS研究中に20%(13人)はカーブ進行のた
めに装具治療に移行した。また10%(6人)は手術が必要となった。70%は観察のみが続
けられ、初期から10数年経過した現時点までに6度カーブが進行していた。骨成熟後
の手術例はなかった。
カーブ進行は、初潮前の時期と相関関係があった。

結論 :骨成熟時で、マイルドあるいは小さなカーブの思春期特発性側弯症では、
16年経過後でも、初期カーブよりも悪化するということはなかった。
初期の頃から装具治療をしていた患者では、この16年間で手術を必要とした患者は
いなかった。一方、無治療の患者では10%(6人)が思春期の時期に手術を必要とし
た。骨成熟後に手術を必要とした例はなかった。カーブ進行は、骨成熟前に発生し
ているという相関関係がみられた。

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(august03よりの説明)

* 添付図はこのスウェーデンの研究のものではありませんが、類似の結果を示す
 例として提示しました。

本研究の時間軸及び患者背景説明 :

1985~1989 初回SRS研究 (思春期特発性側弯症患者に対する装具療法効果)
       年齢    10歳~15歳 全員女子
       コブ角度 25度~35度
       側弯症タイプ シングルカーブ (胸椎側弯症と胸腰椎側弯症)
       41患者 装具療法
       65患者 観察のみ(治療は何もせず検査のみ実施)

 装具療法患者のrisser sign 0~2  25人
               3  12人
               4   4人
 初潮を向かえていた人数      24人(58.5%)
 装具療法患者のコブ角    平均31.8度 (26度~38度)
 同上 終了時のコブ角    平均26.4度 (14度~37度)
 同上 開始時年齢      平均13.6歳 (10.3~16.1)
 同上 終了時年齢      平均16.3歳 (14.2~18.6)

 装具開始から終了までに6度以上のカーブ進行  ゼロ
 同上 手術例                 ゼロ

 装具装着時間  22時間~24時間 / 一日を遵守した

 ......この結果からは、装具療法の効果(カーブ進行を抑え込む)の率は
    100%であったことが示されています。
    より正確に言いますと
    シングルカーブタイプ(胸椎側弯症と胸腰椎側弯症)で
    コブ角が26~38度の幅であれば
    そして装具を22時間以上装着していれば、進行を抑え込める率が非常に
    高いということがいえます。
    
    より確実なことは、
    発見時(装具装着開始時)のコブ角がより小さければ小さいほど、
    初潮をすでに向かえているほど
    この確実性は高まることになります。
    特に注目したいのは、開始時の最小が26度であるのに対して
    終了時には14度という改善が見られることです。
    (26度の患者が14度になったかどうかは不明ですが、開始時が小さな角度
    であれば、改善する可能性は示唆できる、と言えます)
    平均という視点でみれば、開始時31.8度が終了時26.4度であり
    5.4度の改善が見られます。

 .......この研究では、最初からダブルカーブの側弯症患者は参加させていません
    これは、ダブルカーブは側弯タイプとしてはもっともカーブ進行のリスク
    が高いためと想像することができます。
    また、シングルカーブでも、40度以上の患者は参加させていません。
    これも、発見時40度以上のカーブはさらに進行する可能性が高いことから
    「研究」に参加させることの倫理的見地から除外したものと想像できます

 発症原因が不明である思春期特発性側弯症を予防する方法はまだわかりません。
 しかし、初潮を向かえる前の時点で、側弯症を発見できれば
 (シングルカーブの側弯症で、カーブが25度ほどで発見できれば)、
 装具療法によって進行を抑え込むことはほぼ確実にできる、ということが示唆
 されています。










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