「どれだけ抵抗力のあるものでも、7つすべてに対応できるものなどいない。美女たちの波状攻撃を受けて死んでいくがよい」
「踊り回るもの」サマンザはすでに勝利を確信して、サキュバス一族に伝わる官能的な踊りの世界に入り込んでいる。
黒龍拳を使っても、サマンザの髪の化身たちは叩かれても噛みつかれても、馬を操って柳に風と受け流してしまう。しまつの悪いことに美女たちの攻撃は、とびっきりの快感を伴うため青龍は恍惚感に囚われ始めていた。
もはやこれまでと青龍が絶望しかけた時、ボロボロの包帯姿の眠眠が立ち上がった。「やられっぱなしじゃ終わらないぞ。秘剣、夢魔スレイヤー!」
「何! まさか?」
眠眠がオラ〜とかけ声を発し、ドリームカリバーに気合いを込めた。
闇の世界に黄金色の光が満ち始める。肩越しに振りかぶり一気に切り下ろす。黄金の光が七色の虹を切り裂き、サマンザと配下の7人の美女も一巻の終わりと思われた。
光がおさまった空間に、サマンザだけが浮かんでいた。服はボロボロだが、化身たちが盾になって本体の消滅だけは免れたようだった。
「あぶないところであった・・・・・・」
「もう守ってくれる美女たちはいないよ。次の一撃はかわせないぞ」
「ここまでは油断させていたのだ。十八般の第二の武器、弩を意識的に抜いていたことに気づかぬとはおめでたい」サマンザの操る武具の先で、青銅の魔神兵がうごめいている。
弩は機械仕掛けで石や矢を発射する武器だが、夢魔は恐怖を発射することで相手の魂を抜く。夢で死を迎えると、目覚めても自分が死んだと思い込んで昏睡状態になる。「夢魔の弩は、相手を深層心理の奥底にまで突き落とす。さあ、これを喰らうがよい!」
魔神兵が発射された。鋭い爪に捕まれた眠眠は、そのまま深層心理の闇に向かって落ちていくはずだった。だが、魔神兵の爪に捕まれて血を流していたのはサマンザ自身であった。
「な、なぜ我が!?」
いつの間にか老人姿に戻った青龍が、不敵に笑う。「孫のためなら何でもする。悪鬼にも悪龍にもよろこんでなろうではないか。最初にのぞき込んだ時に、鏡の中に落ちこんだのに気がつかなかったようじゃな」
「何?」大量の血がサマンザの口からこぼれた。
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