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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第8章−7 子宮へと届く扉

2018-11-26 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 これぞオーシャムの秘技ツイン・グリーンドア。
 一度扉を開ければ勝利しない限り、二度と出ることは叶わぬ禁断の技。
 彼女が「夢魔世界の掟破り」と糾弾された最大の理由がこれであった。
「いらっしゃいませ、お爺ちゃん、お嬢様、お姫様」オーシャムがメイド喫茶風に出迎える。
「今回は歓迎してくるのか? 女海賊の風体に似合わずサービスがよいの」
「もちろん大歓迎ですわ。『天罰を与えるもの』オーシャムと申します。これはコスプレでございます。ご友人を取り戻したければ、お爺ちゃん、お嬢ちゃん、お姫様の中から代表者を選んでくださいませ。もしも出てこられれば、負けを認めてなんなりとご希望通りにいたしますわ」
「よいであろう。夢魔の支配する夢で、そちらの土俵に乗ってみるのも一興」
「おじいちゃん、本当に大丈夫?」
「大丈夫も何も、ここまで来ておいてワンダーランドに行かぬなどあり得ない。お前が扉に入るがよい。儂とこのお姫様は高みの見物と行こう」
 眠眠は、ゆっくりと扉を開けて暗闇の中に入っていった。

     

 人は海の「生命の源」と呼ぶ。だが、子宮こそが真の「生命の源」。
 そこは生命が宿り、500万年前とも400万年前とも言われる人類の誕生の歴史を繰り返す魔法の場所。
 一歩踏み出した瞬間、眠眠は羊水に浸かっていた。それは、けっして不愉快ではなく、身を深く沈め眠りにつきたいと思わせるような感覚だった。
 一歩進む度に、陶酔感が脳天まで昇ってきた。
 恐怖心がなくなり、好奇心が満ちていく。
 水は冷たいようであたたかく、澄んでいるようで琥珀色にも見えた。
「この感覚におぼれてはダメよ。帰れなくなる」
 後ろからの声に気づくと、写真でしか見たことがない母薛妃の姿があった。
「おかあさん・・・・・・」
「眠眠、大きくなったわね」
「もう会えないと思っていた」
「いままでも会えたし、これからも会おうと思えばいつでも会うことはできる。あなたは夢魔の眷属だから」
「おじいちゃん、眠眠にはくわしく教えてくれない」
「黒龍様の妻、樹里のことは誰もよく知らない。ただ教えてあげられるのは、私がここでは敵だということ。オーシャムからは、やさしい母親を演じて夢に閉じ込めるよう命を受けた。でも、あなたは私を倒して出ていかなきゃ」
「やだ、やっとお母さんに会えたのに」
「時間がないの。羊水の湖にいればいるだけ、あなたは赤ん坊に戻っていく」しかたがないという風に続けた。「もうひとつ、あなたが闘いたくなるように教えてあげる。お父さんが亡くなったのは私のせい」
「何を言っているの!?」


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