こうして人間界に来てから二十年目のわたしのクリスマスが終わった。
冥界時代には、誰も愛さず誰からも愛されなかったわたしが、愛に人生をかけるとは夢にも思わなかった。もっとも生きながら死んでいるヴァンパイアの生き様を、仮に「人生」と呼べるのならばだが。おろかだ。まるで、わたしがおろかだと嫌っていた人間だ。これまでは、キル、カル、ルルだけが側にいてくればよいと思っていたが・・・・・・
四つの部屋の闘いの後のことも、話しておこう。
兄上たちと妹は、フェスティバルの後、冥界に帰って行った。
アストロラーベ兄さんは、人間界での体験がよほど楽しかったようだ。お前がうらやましいなどと、おかしなことを言っていた。
美丈夫に生まれ変わったスカルラーベ兄さんは、蛇姫ライムとの結婚を決めた。さぞかし強くて、美しい子供たちが生まれるだろう。ただしライムが離れてしまうと踊り子シェラザードを殺してしまうため、彼女の寿命がつきてから冥界で結婚することになった。一人で待つのはさびしくないかと尋ねられて、いったい俺が何千年の間、孤独だったと思ってるんだ、と答えていた。
妹のミスティラは、人間界で過ごしてから少し自信がついたようだ。くだらない男たちであっても、ちやほやされたのが効いたのだろうか?
唄姫リギスは、踊り子ザムザとして人生を過ごすことになった。ミュージカルの舞台が気に入ったようだ。元々能天気だったのが忘却の川レテの水を注入されてから、さらに能天気になったらしくザムザの寿命が尽きてからのことはその時考えると言っている。
氷天使メギリヌも、踊り子ユリアとして人生を過ごすことになった。ユリアの寿命が尽きた後は、闘いを通じて尊敬するようになったシンガパウム殿の下で海神界のために働きたいと思っているようだ。
悪魔姫ドルガに取り憑かれていた夏海は、踊り子として活躍しながらトミーと仲良く暮らしているようだ。
ナオミとは会場で別れたきりで、その後のことは知らない。まあ、元気でやっているだろう。
わたしのことも聞きたい?
自身をあれこれ語る趣味はないが、ここまでつきあってくれた礼に少し語っておこう。「ゲーム」のコマとして最低の人間たちとつきあうことは、願い下げと決めた。冥主の怒りを買おうが、刺客を送り込まれようがかまいはしない。ダニエルは、人間の姿のときはなんとかなっているが、もはや堕天使に変身してミックスト・ブレッシングを使わせるわけにはいかない。側にいて、様子を見てやらなくては・・・・・・
だが、勝利の安堵感で心眼に曇りが生じていたのか、わたしは見落としをしていた。アポロノミカンの予言は、やはり当たっていたのだ。
新たなる終わりが始まりを告げて
すべての神々のゲームのルールが変わる
一年後、「新たなる終わりが始まりを告げて」すべて変わってしまったルールの下で、わたしたちは再び「神々のゲーム」を闘うことになるのだった。気が向けば、いつかその物語について語ることもあるかも知れない。
我が名はマクミラ。
意味ある人生を生きるために、自らの意思で生きると決心した元冥界の神官!
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