財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第11章−8 さあ、奴らの罪を数えろ!(再編集版)

2021-04-30 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「叔母メデューサは、醜くなった姿を見られるくらいなら、死んだ方がマシだと自分自身で石になるための鏡を肌身離さず持っていたくらいなのだ。さあ、奴らの罪を数えろ、スカル仮面! 自らの野心のために何の力もない老婆三人を脅迫して、罪のないメデューサを自らの勝手な理屈で殺したペスセウス。もてあそんだ恋人を救おうともせず、見殺しにしたネプチュヌス。自分たちの気まぐれで罪を与えたのみならず、共犯に手を染めた他の神々。死者を悼むどころか、自らの武器として恥ずかしくもなくメデューサの顔を矛にはめ込み悦に入っていた軍神アテネ。自らの猜疑心の虜となってメデューサを殺しておいて、勝手におそろしい化け物として語り継いだものたち。さあ、誰が一番罪深いか、数えてみろ!
 だが、呪いは叔母メデューサの死によっても終わらなかったのだ。ゴルゴン一族は、皆美しい姿で生まれ落ちてくる。我が父と母も、誕生時には美しかった頃のメデューサそっくりの我を見て、ほっと胸をなで下ろした。本当の呪いは我が愛を知るころになって、再び戻ってきた。妖艶な美しさを持っていたため我は、神々、墮天使、さらに人間まで愛を捧げるものにはことかかなかった。だが、呪われた身の上を知ると、すべての男が離れて行った。愛を一度は得ながら、捨てられる。それだけでも、堪え難き苦痛なのに・・・・・・怒りに我を忘れた瞬間、青銅の顔にイノシシの牙を見せ、髪のすべてが蛇になり、口からは長い舌が垂れ下がる姿に変身してしまう。その姿を見たものは、血も凍る恐怖によって石に変わってしまう。愛しているがゆえの怒りに囚われた時、相手を物言わぬ石に変えてしまうつらさがお前にわかるのか? それからだ。もう誰も愛さぬと決めたのは。それでも、魔神スネール様はそんな我にやさしくしてくれた」
「話は、それだけか?」
「はあっ?」
「話は、それだけかと訊いているのだ。お前など、俺から見ればまだまだよ。少なくとも愛の喜びを知っているのではないか? 別離の悲しみに苦しんだことがあるのではないか? 愛するものを失った苦しみを経験したことがあるのではないか? 自慢ではないが、この俺は愛がなんなのか一切わからない。生まれてから、誰を愛したこともなければ、愛されたこともなかったからな。一度は死ぬというセリフが気に入らないだと? よくも言えたものだ。愛を知らずに、闘いだけの一生を生きることのどこが気に入らない? スカルラーベ様が、本当にお前が不死身かどうか試してやろう。滅多に見せない秘技でな」

     


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